作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アンドレイ・ボレイコ/ベルン響の67番ライヴ(ハイドン)

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久々に交響曲のアルバムを取り上げます。ただしマイナー盤(笑)

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アンドレイ・ボレイコ(Andrey Boreyko)指揮のベルン交響楽団(Berner Symphonieorchester)の演奏で、ハイドンの交響曲67番、アンタル・ドラティ作曲の交響曲第2番「平和の訴え(Querela Pacis)」の2曲を収めたアルバム。収録は2010年5月20日、ベルンの文化カジノ(Kultur-Casino)の大ホールでのコンサートのライヴ収録。レーベルはIPPNW-CONCERTSとのロゴがあるとおり、IPPNW(核戦争拡散防止国際医師会議)による慈善演奏会の模様をおさめたものです。

このアルバム、演奏は非常に良いのですが取り上げずにいたのはライナーノーツがドイツ語のみで、とっつきにくかったからに他なりませんが、良いものは良いということで取り上げた次第。ただ、比較的最近の演奏にもかかわらず、ネット系ショップでは現在取り扱いがないので、入手は少々難しそうです。

IPPNW-CONCERTSのアルバムは以前に2組取り上げています。

2012/06/28 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : フィルハーモニア・クァルテット・ベルリンの十字架上のキリストの最後の七つの言葉
2011/09/27 : ハイドン–オラトリオ : モーシェ・アツモン/ワールド・シンフォニー・オーケストラの天地創造アッシジライヴ-2
2011/09/26 : ハイドン–オラトリオ : モーシェ・アツモン/ワールド・シンフォニー・オーケストラの天地創造アッシジライヴ

モーシェ・アツモンの記事を読んでいただければわかるとおり、IPPNWのコンサートは過去に多数行われてきていて、その活動には多くの演奏者が協力しているようですが、中でもアンタル・ドラティは亡くなる前の最後のコンサートを振っていて、IPPNWにも多大な貢献があったようです。今日取り上げるアルバムのコンサートはドラティが書いた曲、しかも「平和の訴え」という曲がメインの曲として演奏され、その前座にドラティが愛したハイドンの交響曲が配されるというドラティをリスペクトするようなプログラム。このコンサートのコンセプトから、ちょっとこみ上げるものがあります。

指揮者のアンドレイ・ボレイコは初めて聴く人ですので、いつものように調べてみます。1957年、レニングラード(現サンクトペテルブルク)生まれの指揮者。当地のリムスキー=コルサコフ音楽院で学び、1989年にはアムステルダムで開催されたキリル・コンドラシン指揮者コンクールで優勝しています。その後1998年から2003年までドイツのイエナフィルの音楽監督、2004年から2007年までハンブルク交響楽団の首席指揮者、2004年から2010年まで、このアルバムのオケであるベルン交響楽団の首席指揮者、その後はデュッセルドルフ交響楽団の音楽監督を務めています。その他カナダやアメリカのオケにも頻繁に客演しているそう。ロシアの指揮者のハイドンではフェドセーエフのハイドンの名演が印象に残っています。

2011/08/07 : ハイドン–交響曲 : ウラジミール・フェドセーエフ/ウィーン響の校長先生、太鼓連打ライヴ!

前置きが長くなりましたが、レビューに入りましょう。

Hob.I:67 Symphony No.67 [F] (before 1779)
適度な残響を伴った録音。少し遠めからオケが音量を抑えて響きますが、すぐにグイグイと抜群の推進力で前に出てきます。ドラティの演奏を意識しているのか、図太い筆で勢いよく楷書を書いていくような風情を感じます。音量を落とした部分と、強奏の部分の対比がしっかりついて非常に明快。力感漲る演奏なんですが、十分に余裕がありハイドンのツボを押さえています。ロシアの指揮者の抑えた表現はハイドンの面白さを引き立てます。
続いてじんわり心に沁みるアダージョ。ここでもオケの演奏には適度に力感がみなぎり、曲が持つコントラストを浮かび上がらせます。節回しが実に巧み。シンプルなメロディーが程よい起伏と時折底力をチラ見せするようなウィットに富んだ進行で非常に味わい深く聞こえます。最後のコル・レーニョ・デラルコによる悪戯も実に聴かせ上手。剛腕投手が8分の力でスイスイ投げて、小技も上手いという感じ。
オーケストラコントロールの上手さを期待するメヌエットでは、リズムのキレも色彩感も期待どおり。中間部は弱音器つきのヴァイオリンの面白さをうまく表現しています。
そしてフィナーレではオケが抜群のキレ。ハイドン独特のメロディーの絡まりとコントラストを巧みなスロットルコントロールで進めます。この楽章でも中間部で急展開してヴァイオリンとチェロのソロが入り、沁みるメロディーを奏でます。この部分が実に上手い。そして管楽器のアンサンブルに弦楽器の波が繰り返し押し寄せ、至福の境地。このような展開をどうして思いつくのでしょうか。最後に冒頭のメロディーにもどり曲を締めます。やはりハイドンは天才です。このコンサートに数あるハイドンの交響曲からこの曲を選んだボレイコは相当なハイドン通でしょう。

つづくドラティの交響曲は弦楽器の険しいメロディーから入る曲。こちらもボレイコの並々ならぬ気合が乗った名演奏です。

アンドレイ・ボレイコというロシアの指揮者の振ったハイドンとドラティの交響曲を収めたアルバム。ボレイコの経歴にドラティに師事したという記述はないものの、演奏からはドラティに対するリスペクトのようなものがひしひしと伝わってきます。彫りの深い力強いハイドンの演奏はドラティの演奏の影響を受けていないはずはありません。そしてハイドンのウィットを活かした見事なオーケストラコントロールはドラティ以上の手腕かもしれません。ライヴとは思えないほど完成度が高く、そしてライヴ独特の高揚感もあり、先日取り上げたマキーガン盤とならんで67番というハイドンのマイナー交響曲の代表的演奏と言ってもいいでしょう。評価は[+++++]とします。

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