作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

イルムガルト・ゼーフリートのカンツォネッタなど(ハイドン)

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ゼーフリートの追っかけ的記事をもう一本。

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TOWER RECORDS / amazon / HMV ONLINEicon

イルムガルト・ゼーフリート(Irmgard Seefried)のアリアや歌曲の1944年から1967年までの録音を集めた4枚組のアルバム。この中にハイドンのアリア「情け深い人は」Hob.XXIVb-13(F.ビアンキの「インドのアレクサンドロス大王」への挿入曲、英語によるカンツォネッタ集から3曲が収められています。アリアはレオポルド・ルートヴィヒ(Leopold Ludwig)指揮のウィーン交響楽団の演奏で1944年10月、ウィーンのムジークフェライン・ザールでの録音。カンツォネッタ3曲はエリック・ウェルバ(Erik Welba)のピアノ伴奏で、1956年1月、ザルツブルクのモーツァルテウムでのオーストリア放送の録音。レーベルはORFEO D'OR。

このアルバムは、先日取り上げたゼーフリートの歌う天地創造のアルバムの記事を書いている時にゼーフリートのディスコグラフィを調べていて発見したもの。もちもとヨーゼフ・クリップスつながりでゼーフリートにつながり、そしてこのアルバムにつながったという流れです。天地創造のアルバムも発見と同時に注文。そしてこのアルバムも同じく発見と同時に注文ということで、短期間に未聴のハイドンの名演奏が3組つながった次第。いやいや世の中便利になりました。このへんのつながりについては前記事を御覧ください。

2015/10/31 : ハイドン–オラトリオ : ゼーフリート/クリップス/ウィーンフィルの天地創造から(ハイドン)

さて、このORFEOのゼーフリートの録音集ですが、ハイドンばかりでなくモーツァルト、ベートーヴェンからプッチーニ、ワーグナー、リヒャルト・シュトラウス、ムソルグスキーなどの曲が含まれています。特にモーツァルトのアリアは、カラヤン、フルトヴェングラー、ワルター、ベーム、ライトナー、アンセルメなどの名指揮者の振るウィーンフィルなどの有名オケの伴奏と超豪華な布陣。CD2の冒頭に置かれた1947年録音のカラヤン/ウィーンフィルとの「フィガロの結婚」のケルビーノのアリアはこれまでこのアリアでも最も芳しい歌唱でノックアウト! 憧れのゼーフリートの絶頂期の素晴らしい歌声にとろけそうです。1952年のフェルディナント・ライトナーとの「羊飼いの王様」のアリアはライトナーの沁みる伴奏にゼーフリート絶唱! そして1953年のワルター/ニューヨークフィルとの「エクスラーテ・ユビラーテ」など、ハイドンのレビューの前にメルトダウン。いやいやこのアルバム、ゼーフリートファンには宝物のようなアルバムです。ちなみにハイドンのうちカンツォネッタ3曲はこのアルバムが初出とのこと。

Hob.XXIVb:13 Aria di Errisena "Chi vive amante" for Bianchi's "Alessandro nell'lndie", Act 1 Scene 5 「情け深い人は」ビアンキの歌劇「インドのアレクサンドロス大王」への挿入曲 [B] (1787)
4枚組のCD1の冒頭に置かれた曲。どこかで聴いた曲だと思ったら、ヌリア・リアル盤、ベルガンサ盤に収録されていて、どちらもレビューしてました。この曲はハイドンの書いたアリアの中でも指折りの美しいメロディーの曲。冒頭から癒しが満ち溢れます。

2010/11/06 : ハイドン–オペラ : ヌリア・リアルのオペラ挿入アリア集
2010/11/03 : ハイドン–オペラ : ベルガンサのオペラアリア集

レオポルド・ルートヴィヒの振るウィーン響が実にしなやかな伴奏。ゆったりとした序奏に乗ってゼーフリートもゆったりと入ります。もちろんモノラルながら1944年とは思えないしっかりとした響き。ノイズも気になりません。流石ORFEOの技。神々しくもある非常に美しいメロディーをゼーフリートの芳しいソプラノが朗々と歌い上げていきます。ゼーフリート31歳の声の輝きが眩しいですね。至福の時間。5分くらいのこの短い曲1曲でもこのアルバムを手にいれる価値があります。オケも実に慈しみ深い響きで名サポート。アルバムの冒頭でいきなり昇天。

Hob.XXVIa:34 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 [A sharp] (1795)
カンツォネッタから有名な曲。カンツォネッタ3曲はCD3の冒頭に置かれています。非常に美しいメロディーの曲。ゼーフリートはハイドンの歌曲のなかでもメロディーの美しい曲を厳選して録音していることになります。ピアノのエリック・ウェルバは1913年生まれのドイツのピアニスト。ゼーフリートをはじめとしてペーター・シュライアーやニコライ・ゲッタの伴奏を長らく務めた人。流石に伴奏のプロ、ゆったりと濃密な音楽で、歌手が歌いやすいように気配を整えます。序奏からゆったりとドラマティック。すでに序奏で詩情がにじみ出てきます。ゼーフリートの歌は残念ながら他の録音ほど輝きを感じず、ゆったりと朗々とした歌唱ながらも、もう一歩の起伏が欲しいところ。

Hob.XXVIa:35 6 Original Canzonettas 2 No.5 "Piercing eyes" 「見抜く目」 [G] (1795)
2分弱の短い曲。ウェルバのしっとりとしたピアノは変わらず、ゼーフリートは高音を転がしながらこの曲を歌うことを楽しむよう。

Hob.XXVIa:41 "The Spirit's Song" 「精霊の歌」 [f] (c.1795)
ハイドンの歌曲の中ではもっとも暗澹とした曲。やはりゼーフリートの選曲眼の鋭さを感じます。この曲でもウェルバの饒舌なピアノが心に刺さります。ゼーフリートは安心してゆったりとピアノに乗って歌います。ゼーフリートの美声は楽しめるものの、歌自体に潜む魂のようなものにあと一歩届いていないかもしれません。この3曲でゼーフリートの声が少々平板に聴こえてしまうのはもしかしたら歌曲にしては少々デッドな録音のせいかもしれません。

ゼーフリートのハイドンの録音を探して辿り着いたこのアルバム。アルバムの冒頭に置かれたビアンキのオペラへの挿入曲はゼーフリートの素晴らしさを存分に味わえる録音。そして歌曲の方はこれまでリリースされていなかった理由があるような気がします。綺羅星のように輝くゼーフリートのアリアの数々を知る人にとって、ちょっと化粧乗りの悪いゼーフリートは見たくないかもしれません。もちろん歌唱は素晴らしいものなのですが、ゼーフリートの絶頂期の、あの芳しく可憐で胸躍るアリアの魅力からはちょっと差がついているということです。いずれにせよ、ハイドン以外も含めてゼーフリートファンの方は絶対手にいれるべき素晴らしい価値のあるアルバムと言っていいでしょう。ハイドンの評価はアリアは[+++++]、歌曲3曲は[++++]としておきます。

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