作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ヨーゼフ・クリップス/ウィーンフィルの驚愕、99番(ハイドン)

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温故知新。

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TOWER RECORDS / amazon / HMV ONLINEicon

ヨーゼフ・クリップス(Josef Krips)指揮のウィーンフィルの演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」、交響曲99番、ロンドン交響楽団の演奏で交響曲92番「オックスフォード」、104番「ロンドン」などを収めたアルバム。今日はこの中からウィーンフィルとの驚愕と99番を取り上げます。この2曲の収録は1957年9月、ウィーンのソフィエン・ザールでのセッション録音。レーベルは豪DECCAのELOQUENCE。

実はこのアルバム、ごく最近手に入れたもの。巷では有名なアルバムのようですが、手元にないと気づいていなかったもの。アルバム自体には他にロンドン交響楽団とのオックスフォード、ロンドンも収録されていますが、録音が荒く聴き劣りするため、ウィーンフィルとの2曲のみ取り上げる次第です。

ヨーゼフ・クリップスは知らない人はいないでしょう。1904年ウィーンに生まれたオーストリアの指揮者。Wikipediaなどによれば、フェリックス・ワインガルトナーの助手、合唱指揮者として、ウィーン・フォルクスオーパーで働くようになります。その後ドルトムント市立劇場、カールスルーエ歌劇場などを経て、1933年、ウィーン国立歌劇場の常任指揮者に就任し、1938年のドイツによるオーストリア併合によりオーストリアを去ることになりますが、戦後は再びウィーンでDECCAに数々の名録音を残しました。1950年から1954年、ロンドン交響楽団の首席指揮者を務め、その後渡米しバッファロー・フィルハーモニー管弦楽団、サンフランシスコ交響楽団の音楽監督を務めます。1963年にコヴェント・ガーデン王立歌劇場、1966年にメトロポリタン歌劇場にそれぞれデビュー。1968年初来日。1970年、ベルリン・ドイツ・オペラの指揮者に就任、同年から1973年までの間ウィーン交響楽団の首席指揮者を務めるなど華々しいキャリアを歩みます。1974年、スイスのジュネーブで亡くなっています。

手元にあるクリップスのアルバムはハイドンではロイヤルフィルとのロンドンが2種、今日取り上げるウィーンフィルとの驚愕も廉価盤が手元にあります。他にはコンセルトヘボウとのモーツァルトの交響曲21番から41番のボックスと、お菓子の缶のような造りのロンドン交響楽団とのベートーヴェンの交響曲全集。何も引き締まった彫刻的な演奏が印象的でした。これらの演奏を思い出しながらハイドンの交響曲を聴きますが、いやいや、これは素晴らしい!

Hob.I:94 Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
若干古さを感じさせるものの、響きは全盛期のウィーンフィルの魅力満点。彫りの深い弦楽器の響き。分厚い低音弦。速めのテンポでグイグイ攻めてきます。DECCAらしい実体感ある録音。驚愕の1楽章が筋骨隆々に引き締まって素晴らしい緊張感。メガネのおじさんの棒から魔法のように繰り出される素晴らしい音楽。これぞ正統派のハイドンです。完璧なプロポーションの古流の生花を見るよう。
2楽章のビックリもこけ脅しなしの純音楽的に緊密な構成。リズムとダイナミクスの饗宴。そしてどことなくウィーンの香りが漂う高雅な演奏。変奏が進むにつれてタイトに引き締まったオーケストラの魅力が炸裂。金管、木管陣は意外にあっさりしていますが、弦楽器の分厚い響きが逆に際立って、これも見識と納得。演歌を持ち歌の本人が歌った時だけに感じるハマり感と同様、このハイドン、クリップスの振るウィーンフィルがオリジナルと思わせるなみなみならぬ説得力があります。
メヌエットも同様。なんでしょう、この有無をも言わせぬ完璧な演奏は。曲があるべき響きに完全にハマってます。自然なのに深い。深いのに自然。音楽にまったく古さを感じません。
フィナーレはことさらキレを強調せず、リズムをしっかり刻んでバランスの良い感興。ハイドンが古典派の作曲家であることを誰よりも理解するウィーンフィルならではの、あえて八分の力でのフィナーレというところでしょう。あまりに見事な演奏にしばしうっとり。

Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)
驚いたのははじめて聴くこちらの99番。いやいやこれほど彫りの深い演奏とは思いませんでした。おおらかな曲調のこの曲が、彫刻的におおらか! 前曲と同じ時期の録音ですが、こちらのほうが一歩踏み込んでます。ウィーンフィル特有の深い響きの色は変わらず、バランスの良さも前曲同様ですが、陰影のグラデーションのやわらかながらクッキリとしたコントラストが見事。速めのテンポでの見通しの良さもあり、99番の魅力があらためてよくわかります。やさしくコミカルな曲調の本質を捉えた名演奏でしょう。
美しいメロディーの宝庫の2楽章。木管楽器の独特の鄙びたような音色がいい雰囲気。弦楽器の繰り出す幾重もの大波にゆられる快感。時折ホールに響き渡るチェロのメロディーはウィーンフィルならでは。これはオリジナルのLPで聴いてみたいですね。
雰囲気をさっと変えるようなメヌエット。あえて軽く、さらりとこなします。そしてフィナーレは驚愕の1楽章同様、引き締まったオーケストラの魅力を再び見せつけます。迫力もそこそこありますが、センスで聴かせる大人の技。それでも徐々にクライマックスにもっていく推移の巧さはかなりのもの。終盤に力を緩めるところも実に見事。これぞウィーンフィルのハイドンという見本のような見事なコントロールでした。

ヨーゼフ・クリップスの振るウィーンフィルによる驚愕と99番。今更ながら、あまりに見事な演奏に打たれました。ウィーンフィルによるハイドンの録音は実は多くなく、有名どころではカラヤンによる、ロンドンと太鼓連打などがありますが、クリップスによるこの録音は最もウィーンフィルらしい、古き良き時代を感じる演奏と言えるでしょう。ただし、意外にも古い感じはせず、この演奏が普遍的な魅力をもっていることがわかります。録音もDECCAらしい重厚なもの。古楽器の演奏や新たな解釈による演奏も手にはいる今においても、魅力を失わない素晴らしいアルバムですね。評価はもちろん2曲とも[+++++]とします。

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