【新着】フィリップ・ヘレヴェッヘ/シャンゼリゼ管の天地創造(ハイドン)

最近リリースされた大物、ヘレヴェッヘの天地創造。

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TOWER RECORDS / amazon / HMV ONLINEicon

フィリップ・ヘレヴェッヘ(Philippe Herreweghe)指揮のシャンゼリゼ管弦楽団(Orchestre des Champs-Elysées)、コレギウム・ヴォカーレ・ヘント(Collegium Vocale Gent)の演奏で、ハイドンのオラトリオ「天地創造」を収めたアルバム。収録は2014年3月24日から26日、ベルギーのブリュッセルにあるフラジェー(Flagey)第4スタジオでのセッション録音。レーベルはヘレヴェッヘの録音を専門にリリースするφ PHI。

ヘレヴェッヘのハイドンは今日取り上げるアルバムと同じ合唱団、オケとの組み合わせで収録した「四季」を昨年5月に取り上げています。

2014/05/12 : ハイドン–オラトリオ : 【新着】フィリップ・ヘレヴェッヘ/シャンゼリゼ管の四季(ハイドン)

その時にも近いうちに天地創造もリリースされるであろうことはなんとなく予想していましたが、これほど早いリリースになるとは思ってもみませんでした。四季が未曾有の名演だったということもあり、この天地創造も期待のアルバムです。

ヘレヴェッヘの略歴などは四季のレビューの方をご参照ください。このアルバムに参加している歌手は以下のとおり。

ガブリエル/エヴァ(ソプラノ):クリスティーナ・ランズハマー(Christina Landshamer)
ウリエル(テノール):マクシミリアン・シュッミット(Maximilian Schmitt)
ラファエル/アダム(バス):ルドルフ・ローゼン(Rudolf Rosen)

歌手の方は四季とバスが違うだけで、ヘレヴェッヘのお気に入りの人でしょう。

Hob.XXI:2 "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
第一部
ヘレヴェッヘらしい、ニュートラルな響きの序奏。シャンゼリゼ管は古楽器オケではありますが、低音楽器も厚みがあり、迫力も十分。同じ古楽器オケで愛聴しているクリスティ盤と比べると、クリスティの方が響きを整理して旋律がくっきりと浮かび上がる感じ。一方こちらのヘレヴェッヘ盤はまさに混沌から秩序が生まれ出てくるようすそのままのよう。響きの柔らかさ、フレージングのしなやかさはこちらの方が上。よりニュートラルといったらいいでしょうか。中庸なテンポで自然に進行、まさに中庸の美学のような演奏。ソロはバスのルドルフ・ローゼンは迫力よりも風格で聴かせる歌。四季のフローリアン・ベッシュが圧倒的な声量の存在感で聴かせたのとは異なるスタイル。テノールのマクシミリアン・シュミットは実に柔らかな声。キレのいい歌唱で、曲が引き締まります。これもヘレヴェッヘの好みでしょう。ガブリエルのクリスティーナ・ランズハマーはコケティシュといっていいほど線が細い声ですが高音の響きが美しく可憐。録音はソロがオケに溶け込みながらすっと浮かぶいいバランス。第一部の終盤のクライマックスへの道程は静寂と間を存分に活かして、やはりニュートラルなもの。力みは皆無。オケが軽々と吹け上がり、音楽のエッセンスが盛り上がることが本質だと言わんばかり。弦楽器がキレよくコーラスを伴って幾重もの波となって押しかけるよう。

第二部
ヘレヴェッヘの演奏スタイルに最もマッチしそうなのが第二部。フレーズを丁寧に描きながらテンポよく曲が進みます。第一部よりもテンポを上げ、曲の見通しをよくしようということでしょうか。ソプラノのクリスティーナ・ランズハマーは第一部よりも滑らかになり、しっとりとした美声の魅力が引き立ちます。第二部の途中でCD2に変わる一般的な区切り方。後半はラファエル、ウリエルのレチタティーヴォと美しいメロディーのアリアがつづきますが、ここにきてラファエルのルドルフ・ローゼンの語り口が実に巧い。この演奏でも歌の巧さが聴きどころ。第二部終盤の合唱、三重唱、合唱と進むところでの盛り上がりでもローゼンが絶妙な語り口を聴かせます。さっぱりとしながらもグイグイオケが攻めてくる感じはヘレヴェッヘの真骨頂というところでしょう。最後のハレルヤコーラスはコレギウム・ヴォカーレ・ヘントの透き通るようなコーラスが絶品。

第三部
ここまで、中庸の美学を保ちながら自然な演奏を繰り広げてきましたが、最後の第三部では染み入るようなしなやかな入りで緊張感が途切れません。実に美しい音楽。ウリエルのマクシミリアン・シュッミットの柔らかい歌唱が花を添えます。アダムとエヴァのデュエットはしなやかなな流れの中にパッと明かりが差したような華やかさ。長大な曲にもかかわらず、ディティールまで磨き抜かれたレベルの高い演奏。デュエットの最後の盛り上がりも一貫してしなやか。レチタティーヴォを挟んで、2番目のデュエットでもしっとりとした音楽が流れ、うっとりするばかり。金管の響きも絶妙にコントロールされていて、ところどころでアクセントをつけます。最後の合唱で再びコレギウム・ヴォカーレ・ヘントが透明な響きによる音の洪水のような素晴らしいコーラスを聴かせます。最後までしなやかさを失わない素晴らしい演奏でした。

フィリップ・ヘレヴェッヘによるハイドンのオラトリオ第二弾の天地創造ですが、聴けば聴くほど完成度の高さに唸らされる素晴らしい演奏。長大な曲があっという間に感じられるほどの夢のような時間でした。天地創造は演奏によっては力みを感じさせてしまうものですが、この演奏に力みは皆無。そして何より歌手とコーラスが素晴らしい出来です。聴き始めはバスが弱いかと思ったんですが、ルドルフ・ローゼン、実に印象的な語り口にグイグイ引き込まれます。美しいメロディーのアリアもいいのですが、表現力豊かなフォルテピアノによってレチタティーヴォも聴き応え十分。そしてヘレヴェッヘに隅から隅までコントロールされたシャンゼリゼ管も見事。天地創造の決定盤的存在と言ってもいいでしょう。評価はもちろん[+++++]とします。

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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 天地創造 古楽器

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光と喜びの伝道師

Daisyさん、こんばんは。
ヘレヴェッヘの天地創造ですか。きっと素晴らしいでしょうね。

ヘレヴェッヘはバッハのカンタータでおなじみでした。
カンタータは、かつての私にとって米の飯のようなものでした。というか私の前半生はバッハと共にありました。
音楽は中世・ルネッサンスから現代まで幅広く聴いていましたが、あくまでバッハが中心でした。

バッハの音楽は、人によるどのような慰めの言葉も通じない辛く過酷な境遇にある人の心にさえも届きます。
その音楽は「究極の慰め」と「究極の痛み」が混在し、両者がきしみをたてています。
だから悩みと悲しみの中にある人の琴線にふれ、涙をぬぐわせて平安な地平へと導く力があるのでしょう。

ところが人生の半ばで圧倒的に救われる体験をした今となっては、あまりバッハを聴けません。
今、私の心には喜びしかないのでバッハを聴くとかえって辛くなるのです。

そこでハイドンの音楽です(笑)。
ハイドンは光と喜びの伝道師だと思います。
ハイドンを聴けば、もう喜ぶしかない、心が笑うしかない、しんからそう思います。
先日、歌ものを聴きたくなってシューベルトの「白鳥の歌」をきいていましたら、どんどん心が暗くなって…。あわててハイドンに戻りました。

ところで、ハイドンの宗教曲は……残念ながらもうひとつ良くわかりません。
あまりにもバッハの痛切な世界にハマリすぎていたのでしょうか。音楽的な凄さはわかるのですが。
まあ、天地創造の理解はこれからですね。…いろいろ教えてくださいませ。

ところで、先ほどダエダルス四重奏団のop20を聴きました。これは圧倒的な名演ですね。
アゴーギクを微妙に細かく動かすと同時に強弱もめまぐるしく変わります。しかし全然うるさくはなく非常に自然でしなやか。
これは墨絵の世界?いえいえ、すごくダイナミックな一面もあります。そして、まるでひとつの生き物のように有機的に一体化したアンサンブルはハーゲンを超えているのではないでしょうか。
一曲終わったら思わずスピーカーに向かって拍手していました。

名演奏というのは曲に対する私達の狭い先入観を壊しますね。そして曲の芸術的な規模と深さを拡張し、昨日までと違う世界を私達の目の前に提示します。
op20って本当に凄い…! 目からウロコでした。

Re: 光と喜びの伝道師

Skunjpさん、返事が追いつかないほどのコメント、いつもありがとうございます。

さて、宗教曲をどう聴くかは難しい問題でしょう。私もキリスト教の宗教的心情を深く理解しているわけではありませんし、歌詞の言葉をドイツ語にしろ、ラテン語にしろ音楽と同時に理解できるわけではありませんので、やはり宗教的心情を想像しながら、あくまでも音楽的に聴いていることになります。
バッハは好きですが、偉大すぎて近寄りがたい険しさを感じますが、ハイドンにはその敷居の高さを感じないんですね。
ヘレヴェッヘのバッハも手元にはかなりの枚数のカンタータの録音がありますが、音楽的な清透さには感服するものの、なんとなく他流試合的な印象も残ってます。数を集めたのは当時近所にあった山野楽器府中店のワゴンセールで安く手に入ったという特殊事情もあります。今更私が言うのもなんですが、私にはハイドンが合いますね(笑)

さて、ダイダロス(ダエダルスと読むのが正しいのでしょうか??)ですが、「私達の狭い先入観を壊す」とはその通り! 時折こうした演奏に出会うたびに同じことを感じます。老化防止には刺激が必要ですね!

No title

すみません。Daisyさんの記事があまりに素晴らしくて、ついついコメントしてしまいます。(笑)返答はご無理のない範囲で…。

ところで…
> ヘレヴェッヘのバッハも手元にはかなりの枚数のカンタータの録音がありますが、音楽的な清透さには感服するものの、なんとなく他流試合的な印象も残ってます。

さすがですねー。鋭いですねー。実は私もヘレヴェッヘのバッハに大いに惹かれつつもプロテスタント音楽の表現としては若干の違和感を持っていました。それを今、言葉にすれば、「カトリック的な官能性」(マリア的なるものへの帰依)とでもなるのかな?と思います。(ですからハイドンはピッタリ…)

「ダイダロス」の件ですが、naxosでは「ダエダルス」と表記されていました。これが正しいかどうかはわかりませんが…

Re: No title

Skunjpさん、コメントありがとうございます!

だんだん深みにハマってきました(笑) 宗教音楽というジャンルがあるくらいクラシックは宗教と密接でありますが、私にはキリスト教とひとくくりに理解していたものの、プロテスタント的、あるいはカトリック的と言われれば、確かに似て非なる宗教観があるのでしょうね。バッハの音楽のなかにはプロテスタント的、あるいは官能的ではない宗教観が色濃く感じられるのかもしれません。私が他流試合的に感じたのは、実はバッハに対するヘレヴェッヘのアプローチにあるのではなく、バッハの音楽、特にカンタータのような音楽自体に潜む気配のようなものに対してでした。ヘレヴェッヘのアプローチは私のこの感覚をむしろ中和するような方向かもしれませんね。
以前ブログにも書きましたが、たとえばリヒターのマタイなど、世の中で神格化された演奏ではありますが、その凄さはわかるものの、音楽を楽しむという聴き方にはなりません。バッハの中ではロ短調ミサ、それもコルボのようなラテン的側面に光を当てた演奏が好みです。
以前見た海外のテレビ番組で尊敬する人をバッハと答えていた人がいましたが、バッハの音楽は宗教的でもあり、数学的でもあり、迷路的でもあり、教条的でもある深淵なものであり、その深さは人が人生をかけて探求する価値のあるものだと思います。

ハイドンには人の温もりというか、ほっとすべきところのようなところがありますね。私にとっては深みではなく癒しが必要なので、ハイドンが性に合っているのでしょう。

そういった意味でハイドンの宗教曲やオラトリオには、宗教観というより心の晴朗さのバロメーターのような役割があるのかと思います。天地創造には人の創意の素晴しさ、四季には自然観のようなものが宿っています。これはこれで素晴らしいものなんですね。

週末は楽しみにしております!

深みにハマったオマケにもうひとつ(笑)

今朝はフスのリラ協奏曲を聴きながらモノレールに乗ってのんびり出社しました。この開放感と楽しさは何なのでしょう!


ハイドンはプロテスタントやカトリックなどという教派から超越していたのではないでしょうか。彼のうちには、ただ神様への「絶対的な信頼」があったのだと思います。

人間的に言えば決して品行方正ばかりではなかったハイドン。でも赦してくださるお方に素朴に信頼していました。

その絶対的な信頼によりハイドンは人生に安心立命の境地を見い出しました。だからハイドンはこよなく人を愛し、自然を愛し、人生を愛した…。そのようなハイドンの大らかな朗らかさが私達をひきつけるのでしょう。

人々が神様に単純につながっていた時代の最後の作曲家、それがハイドンだと思います。これ以後、人々は次第に神様から離れていきます。モーツァルトも半分くらいそうだし、ベートーヴェンに至っては半分自分が神になっている(でも音楽は嫌いではないです)。

時代の流れと共に多くの教会がそれとは知らずイエス様を締め出し、人間的なシステムがとってかわるようになりました。(まあビジネス化ですね)。

ですから本物の癒しを求める私達に答えてくれるものといえば…その一つがハイドンではなかろうか?と私は勝手に考えています。


ps.では気軽にいらしてください。お待ちしています!
私達は素人集団で音楽的な洗練は求めていません。ですが私達が「ハレルヤ!」(主をほめよ)と歌うとき、これは心からそう思って歌っています。

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものはリスト冒頭に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

登録曲数:1,365
登録演奏数:11,529
(2019年3月31日)
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