作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ローズマリー・ファーニス/ロンドン室内管の「王妃」(ハイドン)

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久々の交響曲のアルバム。

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TOWER RECORDS / amazon

ローズマリー・ファーニス(Rosemary Fursiss)指揮のロンドン室内管弦楽団(London Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲85番「王妃」他、指揮者を変えてモーツァルトのピアノ協奏曲12番(K.414)、ベートーヴェンの交響曲8番の演奏を収めたアルバム。ハイドンの収録は2007年2月28日、ロンドンのセント・ジョンズ、スミス・スクエア(St. John's, Smith Square)でのライヴ。レーベルは英signum CLASSICS。

白地に赤い四角と丸をあしらった品のいいデザインのジャケット。LCO Liveと記されたロンドン室内管のライヴをまとめたシリーズの1枚。なんとなく興味を惹かれて手に入れました。

ロンドン室内管は1912年設立のイギリスでも最も歴史ある室内管弦楽団。今日取り上げるハイドンの指揮を担当するローズマリー・ファーニスは、このアルバムに記載されている略歴ではロンドン室内管のコンサートマスター(ミストレス?)となっており、ヴァイオリニストとして活躍している人とのこと。ユーディ・メニューヒン・スクールの設立時の生徒でその後フィラデルフィアのカーティス音楽院で学び、シャーンドル・ヴェーグ、ピンカス・ズーカーマンらに師事。ロンドン室内管のウェブサイトを見ると、その現在の芸術監督、首席指揮者はこのアルバムでベートーヴェンの8番を振るクリストファー・ウォーレン=グリーン。当のローズマリーは、ローズマリー・ウォーレン=グリーンと名前が変わっていて、ロンドン室内管の教育担当となっていますので、録音後、クリストファーと夫婦となったのでしょう。

小編成オケでのハイドンの王妃の最近のライヴということで、見通しのよい軽快な響きが楽しめる演奏でした。

Hob.I:85 Symphony No.85 "La Reine" 「王妃」 [B flat] (1785?)
教会での録音らしく響きが溶け合ってオケが柔らかく響きますが、適度に鮮明。しかも響きに力強さがあります。ライヴといっても会場ノイズはほとんど目立ちません。冒頭から非常にバランスよく、しかもキビキビとした推進力が心地良い演奏。メニューヒン・スクール出身のファーニスのコントロールは弦楽器のボウイングが見事に揃っていてメロディーがくっきりと浮かび上がります。ヴィブラートは抑え気味で透明感ある響きはトレンドを踏まえたものでしょう。全編に漂う爽やかな印象。しかもキリリとアクセントがつけられ実にキレの良い演奏。木管陣も美しい音色で躍動感に花を添えます。1楽章からライヴとは思えないほどの集中力と緊張感が見事。爽やかな彫りの深さが印象的。
つづく2楽章でもキレの良いアクセントが表現の基調となっての展開。弦楽器の表現力で聴かせる演奏。ローズマリー・ファーニスの統率力あっての表現でしょう。2楽章ではフルートの軽やかなソロが見事。やはりフルートの表現力があると音楽が躍動します。オケは腕きき揃いですね。
メヌエットでも一貫して軽やか。低音弦の反応がいいからこそ軽やかな響きが生み出されることがわかります。さりげないフレーズひとつひとつの表情が非常に豊か。それらが響きあってオーケストラの響きが豊かに感じるわけです。非常にクオリティの高い演奏。
フィナーレでも豊かな表情と多彩な響きに耳を奪われます。自在にテンポを動かし、オケは巧みにスロトットルをコントロール。軽やかに吹き上がり、鮮やかに響きます。最後に拍手に包まれることでライヴだと気づかされるほど演奏中のノイズは抑えられた見事な録音です。

このあとメルヴィン・タンの弾き振りによるモーツァルトのピアノ協奏曲12番、クリストファー・ウォーレン=グリーン指揮によるベートーヴェンの8番と続きますが、オケの響きの多彩さはハイドンが一番。やはりローズマリー・ファーニスのきめ細やかなコントロールの賜物でしょう。

久々に取り上げた交響曲ですが、オーケストラの豊かな響きを隅々までコントロールして得られる快感を堪能できました。一聴して爽快な演奏なんですが、よく聴くと本当に隅々まで表情豊かな名演です。腕利き奏者をきっちりコントロールした正統派の名演奏とはことのことです。王妃にまた一枚愛聴盤が増えました。評価は[+++++]とします。

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4 Comments

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Skunjp

作曲順に聴いてます

こんにちは、Daisyさん。
ローズマリー・ファーニスですか。知らなかったですね。

Daisyさんのブログには聴いたことのない演奏家の情報が沢山紹介されていて大変ありがたいです。このブログで初めて知り、ファンになった演奏家が十本の指に足の指を足しても足りません。(笑)

これまで交響曲はトラウマのためあまり聴かなかったのですが、でも最近は少しずつ聴くようになりました。作曲順にウェブスターの解説を読みつつ、スコアを見ながら毎朝、出勤前に聴いています。

初期の曲といってもハイドンはとても素晴らしいですね。堅固な構築感と魅力的な旋律に満ち、しかも音楽が高貴です。この朝のシンフォニータイム、同じ曲を演奏を変えて何回も聴くのでなかなか先に進みません。

今朝は19番を聴きました。演奏はこのブログではあまり評価の高くないホグウッド(汗)。私はとても良いと思いますよ。

さすがに大指揮者で、ムダなくすっきりとまとまり、何より音楽にしなやかな力があります。モーツァルト全集に比べると鮮烈さは薄れましたが、その分、簡潔度としなやかさが増した感じがします。中断したのが残念です。せめてパリセットまでは行って欲しかった。

  • 2015/10/09 (Fri) 15:23
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Daisy

Re: 作曲順に聴いてます

Skunjpさん、いつもいつもコメントありがとうございます。

未知の演奏者のアルバムを聴くときのワクワク感を楽しみにいろいろなアルバムを聴いています。私が聴けるアルバムの数に限りもありますし、私が演奏者の創意をすべて汲み取れるわけでもなく、邂逅的側面も少なくありません。それでもころハイドンに限っては、いろいろ聴いているからこそ多少は情報価値があるということでしょう。

ちなみに、ホグウットについてはご指摘のように、交響曲の私の評価があまり高くないというのはその通り。ホグウッドの交響曲全集はリリースされるごとに手に入れ、当時かなり聴き込んだつもりですが、やはりその前のモーツァルトの交響曲全集の特に中期以前の曲で聴かれた千変万化する生気に満ちた演奏とくらべて、一段劣るという視点での評価です。ハイドンでは生気が少し抜け、典雅さがポイントになっています。ホグウッドのハイドンではレビューで取り上げた、オルガン協奏曲や軍隊など素晴らしい演奏もいろいろあります。ホグウッドについては高評価する方も多いので、私個人の意見ということで収めていただければ幸いです。

ちょっと聴きなおしてみようかな〜(笑)

  • 2015/10/11 (Sun) 08:35
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Skunjp

旅のお供

演奏に対する評価は、人によって感性が違い、嗜好も興味も違いますので、本当に人それぞれなのですね。

これはまた演奏家についてもあてはまり、演奏家の感性と嗜好、興味が人それぞれだから、出てくる演奏の傾向もヴァラエティに富み、私達はそれを楽しむことができるのでしょう。

そしてまた、聴き手である私達も、様々に傾向の違うレビューを読み、それに触発されて、自分とは違うベクトルの音楽を知り、自分の耳をさらに広い世界に向けて成長させていくことができるのですね。

私もDaisyさん推奨のCDをたくさん聴き、たいていは素晴らしい演奏なので大いに感動します。たまに、ちょっと良くわからない時もありますが、何度が聴きこむうちに次第に演奏の良さに開眼させられる場合が多いです。(そのひとつがヨアヒム弦楽四重奏団でした)

人間の場合でもそうですが、第一印象はあまりあてにならず、それを発展・深化させて対象の深い理解につなげ、長い付き合いに変えていくのも人生の醍醐味なのでしょうね。

今日は用事があってちょっとドライブをしました。旅のお供は家内と、もちろんDaisyさんご推薦のCDたちです。家内は助手席で寝ていることも多いのですが、そうなるとハイドンが聴けるので、それもまた良かったりして…(笑)

  • 2015/10/11 (Sun) 21:53
  • REPLY

Daisy

Re: 旅のお供

Skunjpさん、コメントありがとうございます。

私も最初にさらりと聴いた時と何度か聴いていくうちに印象が変わる演奏があります。やはり最初は先入観やいままで聴いてきた演奏との差などに大きな影響を受けているのかもしれませんね。

実は私にとってそうした演奏の一つがホグウッドのモーツァルトでした。一番最初に買ったのは交響曲集の後半のLPだったんですが、当時モーツァルトといえば、ワルターとかベームとかの演奏が刷り込みだったところにホグウッドの溜めのない古楽器の直裁すぎる響きはアレルギーにも似た反応をもよおしましたが、聴いていくうちに千変万化する響きの面白さに逆に引き込まれていきました。ホグウッドの良さを理解するのにはかなり時間を要したのが正直なところです。その後聴いたアーノンクールには不思議とアレルギー反応はなく(一般にはこちらの方が刺激が強いですが、、、)素直に面白いと思ったものです。最近ではトーマス・ファイでちょっと似た反応がありましたが、聴き方によってはどんちゃんさわぎにも聴こえなくもない演奏の面白さに気づくと、やはり自然と引き込まれていくんですね。

振り返ってみると、表現が強くなる方向への対応力は徐々に身につけていっていたということでしょう。逆にジワリとしみる演奏、淡々としながらもキラリと光る演奏などもあり、その良さに気づくのもいろいろ聴き込んで初めて気づいたことも多いです。

その辺の感覚は誠に個人的な感覚であり、みなさんそれぞれに全く内容はちがっても同じような経験をお持ちなのでしょうね。

そんなこともあって、レビューを書く時はなるべく虚心坦懐に書くようにしていますし、他のブログやネットの情報などは記事を書く演奏については事前に読まないことにしています。なんとなく他の人のコメントの影響を受けてしまいそうで、自分の感じたままをから曲がってしまいそうになる可能性があるような気がしますので。

自分でも忘れかけていたヨアヒム四重奏団の記事、読み返してみました! レビューは自分の気持ちも時には巻き戻せますね(笑)

返信おそくなってすみませんでした。

  • 2015/10/18 (Sun) 08:52
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