ランパル、シュルツ、オダンの「ロンドン・トリオ」(ハイドン)

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ジャン=ピエール・ランパル(Jean-Pierre Rampal)、ウォルフガング・シュルツ(Wolfgang Schulz)のフルート、ジルベール・オダン(Gilbert Audin)のファゴットでハイドンの「ロンドン・トリオ」No.1〜No.4他を収めたアルバム。収録は1991年5月12日から14日にかけて、パリのサン・ラザール駅のちょっと東にあるプロテスタント教会(Église Allemande Protestante, Paris)でのセッション録音。レーベルはSONY CLASSICAL。
ロンドン・トリオは以前、クイケンらによる名盤をレビューしております。また、No.2のみですが、他に2枚のアルバムをレビューしています。曲の説明などは下記をご覧ください。
2011/11/25 : ハイドン–その他 : ハイドンとアビンドン卿
2011/11/23 : ハイドン–室内楽曲 : クイケン・アンサンブルによる「ロンドン・トリオ」
2011/04/02 : ハイドン–声楽曲 : 【新着】ホグウッドの伴奏による歌曲集、室内楽
ランパルはご存知フルートの巨匠。ハイドンの録音は多くはありませんが、このアルバムと同じロンドン・トリオをアイザック・スターン、ロストロポーヴィチとの組み合わせで録音したアルバムや、リラ・オルガにザータ協奏曲をフルートで吹いたアルバムなどがあります。これまでレビューには取り上げていませんでしたので略歴をさらっておきましょう。
1922年マルセイユ生まれで音楽院の教授だった父からフルートの手ほどきを受けました。最初は医学を志すものの、第二次大戦の影響からパリ音楽院に入り、わずか5ヶ月でプルミエ・プリ(卒業資格)を得ます。1947年にジュネーブ国際コンクールで優勝しソロで活動を始め、1956年からパリ・オペラ座管弦楽団の首席奏者となり1962年まで務めました。退団後はソロ活動で世界的に活躍、2000年に78歳で亡くなっています。
そしてウォルフガング・シュルツはウィーンフィルの首席フルート奏者を長年務めた人。シュルツのアルバムは一度取り上げています。
2011/09/02 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】ウォルフガング・シュルツによるリラ・オルガニザータ協奏曲
そして、ファゴットのジルベール・オダンは1956年生まれ。フランス南部のニーム音楽院、そしてパリ音楽院で学び、その後パリオペラ座管弦楽団の首席ファゴット奏者、パリ音楽院の教授となっています。
ロンドン・トリオの原曲はフルート2本とチェロですが、このアルバムではチェロのパートをファゴットが担当しているということでしょう。私自身はこの曲は名手バルトルト・クイケンの演奏するアルバムがお気に入りなんですが、このランパル盤はロンドン・トリオを実に豊穣に響かせます。吸い込まれるような静謐はクイケンに対し、黄金の輝きのようなラグジュアリーな感じといえばいいでしょうか。
Hob.IV:1 Trio für 2 Floten (oder Flöte, Violine) und Violincello "London Trio" Nr.1「ロンドン・トリオ」 [C] (1794)
冒頭から実に豊かで輝かしいフルートの掛け合い。チェロの代わりのファゴットがかえってテンポ感が明確で悪くありません。めくるめくようなフルートの音階に目がくらみます。よく聴くとランパルとシュルツの音色というかフルートの音色がよく揃っていて、音階の掛け合いが実に自然。よくぞこれほどのメロディーを書いたと思わせる巧みなメロディーのからまり。モーツァルトの天に昇るようなメロディーとは異なりますが、ハイドンの筆は冴え渡り、フルートの音色の真髄をつく音楽を紡ぎ出していきます。冒頭からフルートとファゴットの妙技に圧倒され気味。
つづくアンダンテでは2本のフルートがピタリと重なり、ゆったりとメロディーを描いていきます。フルートの響きの豊かさはちょっと官能的ですらあります。ちょっと控えめにファゴットがサポートしますが、オダンのファゴットは先ほどから安定感抜群。
フィナーレは早いパッセージをいとも軽々とこなしていきます。タンギングのキレがよくフルートの聴かせどころ。鮮やかな手腕に唸ります。流石にフルートの大御所2人。
Hob.IV:2 Trio für 2 Floten (oder Flöte, Violine) und Violincello "London Trio" Nr.2 「ロンドン・トリオ」 [G] (1794)
2番は歌曲の「貴婦人の姿見」の美しいメロディーを使った1楽章構成の曲。ゆったりと奏でられる柔らかな響き。教会に響きわたる残響が心地よい。フルートが声にも負けない多彩なニュアンスを描くことができる楽器であることを物語るような情感溢れる演奏。もともと美しいメロディーが名手2人の手にかかってこその美しい表情。オダンのファゴットも実に味わい深い。
Hob.IV:3 Trio für 2 Floten (oder Flöte, Violine) und Violincello "London Trio" Nr.3 「ロンドン・トリオ」 [G] (1794)
3番はぐっと曲が引き締まり緊密な構成。ランパルとシュルツの音の重なり具合が絶妙。完全にシンクロしてふたたびめくるめくような音階の掛け合いに陶酔。速めのテンポでアンサンブルが爽快に進みます。ファゴットが柔らかく刻むリズムに乗って、フルートが自在に駆け回ります。タンギングのキレがいいのでリズムが冴えまくり、有無をも言わさぬ緊密さ。高音の抜けるような冴え。ふと短調に振れるところの翳り具合。
この曲でもアンダンテでの2本のフルートの重なりと、ふわりと浮かぶような軽いフレーズの美しさが印象的。そしてフィナーレでふたたび軽快に響くフルート。あまりの響きの豊かさに圧倒されます。
Hob.IV:4 Trio für 2 Floten (oder Flöte, Violine) und Violincello "London Trio" Nr.4 「ロンドン・トリオ」 [G] (1794)
4番も1楽章構成。すでにランパルとシュルツの妙技の連続に感覚が麻痺している感じ。この感じ、純粋に奏者の虚心坦懐な姿勢から滲み出る音楽だからこそだと思います。実に自然な流れで、変な作為は皆無。終盤、少しテンポを落とす部分のセンスの良さに唸ります。これまた名演でした。
このあと弦楽四重奏曲Op.76のNo.5をフルートデュエットに編曲した曲など2曲が続きますが、2人の妙技は変わらないため、レビューは割愛させていただきます。
いやいや、久しぶりに聴きなおしたこのアルバム、2人のフルーティストの存在感は図抜けたものがありますね。ランパルの豊穣な響きは想像通りですが、シュルツはさすがウィーンフィルの首席奏者だった人だけに、ランパルの美点を踏まえて完璧に合わせてきています。そしてこの名演の影の立役者はファゴットのジルベール・オダン。この人のリズミカルかつ軽やかなタッチのサポート無くしてこの名演は成り立たなかったでしょう。聴き終わると不思議に幸せな気持ちになる演奏でした。古楽器による静謐な響きのクイケン盤に対し、現代フルートの豊かな音色でのゴージャスなアンサンブルがこのアルバムのポイント。ゴージャスといっても悪趣味さは皆無。純粋に豊かな響きの魅力が圧倒的だということです。未聴の方は是非。評価は未レビューの曲も含めて全曲[+++++]とします。
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