作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ロビン・ティチアーティ/スコットランド室内管のホルン信号、70番、時計(ハイドン)

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今日は最近リリースされたばかりのアルバム。

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TOWER RECORDS / amazon / HMV ONLINEicon

ロビン・ティチアーティ(Robin Ticciati)指揮のスコットランド室内管弦楽団(Scottish Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲31番「ホルン信号」、70番、101番「時計」の3曲を収めたアルバム。収録は2015年1月31日、2月1日~2日、7日~8日、エジンバラのアッシャーホールでのセッション録音。レーベルはオーディオメーカーでもあるLINN。

スコットランド室内管といえば、チャールズ・マッケラスとのモーツァルトの交響曲全集で聴かれる、クッキリと筋の通った透明感あふれる響きが印象に残っています。このオケの現在の首席指揮者がロビン・ティチアーティ。2009年からこの地位にあります。いつものようにティチアーティについてちょっと調べてみます。

ロビン・ティチアーティは1983年ロンドン生まれ。名前からわかる通りイタリア系です。子供の時からヴァイオリン、ピアノ、パーカッションを学び、英国ナショナル・ユース・オーケストラのメンバーとなります。15歳でセント・ポールズ・スクールに通いながら指揮をはじめ、ケンブリッジ大学クレア・カレッジで音楽を専攻することになりますが、正式な指揮教育は受けていないとのこと。その後サイモン・ラトル、コリン・デイヴィスに師事して指揮の腕を磨き、2005年、オーロラ室内管弦楽団を創設し、最初のコンサートを開きます。同年ムーティの招きでミラノ・スカラ座に最年少でデビュー。2008年にスコットランド室内管をはじめて振りますが、翌年には首席指揮者となり現在に至り、またグラインドボーン音楽祭の音楽監督、バンベルク響の首席客演指揮者も務めるなど近年は飛ぶ鳥を落とす勢い。私もはじめて聴く人ですが、すでにLINNからはスコットランド室内管とのアルバムが何枚からリリースされているほか、オペラの映像、バンベルク響を振ったアルバムなどいろいろリリースされており今後が楽しみな人です。ムーティが見初めたということで、なんとなく音楽に独特の輝きをもった人という印象です。

オペラを得意とするティチアーティが切れ味鋭いスコットランド室内管と録音したハイドンということで、ハイドンの交響曲演奏史に一石を投ずることになるのでしょうか。

Hob.I:31 Symphony No.31 "Hornsignal" 「ホルン信号」 [D] (1765)
このアルバム、一聴して録音がいい。流石にLINNというところ。空間にオケがきっちり定位して響きも精緻。SACDマルチチャネルにも対応しているので環境がある方には録音面でも魅力のあるものでしょう。冒頭からテンポよく爽快な入り。オケがイキイキとして音楽が弾みます。フルートに印象的にレガートを効かせたりして遊び心もありそう。オケが実に楽しそうに演奏しており、オーケストラコントロールの腕は確かですね。1楽章から見事な演奏に惹きつけられます。
ホルン信号の目立ちはしませんが聴きどころのアダージョ。じんわりと心に響く音楽。ティチアーテはここでちょっと牙を剥いてきました。引き締まった表情でゆったりと音楽を進めますが、途中で入るアクセントが鋭い。途中ソロ楽器に修飾音をつけて遊び心を忘れないあたりは前楽章そのままですが、オケの切れ味をチラ見せすることで、ゆったりした部分を際だたせようということでしょう。そのゆったりした部分は弱音のデリケートなコントロールが効果的でホルンも上手い。
そして鮮やかさが際立つのがメヌエット。明るく屈託のない響きが実に爽やか。ヴィブラートを抑えた透明感が素晴らしい。
フィナーレの前半はソロ楽器の織りなす音の綾を楽しむよう表情の変化を抑えて、純粋に音符に音楽を語らせるようですが、変奏最後のコントラバスがちょっと自己主張(笑) 最後のプレストでオケが吹き上がり終了。1曲目からティチアーティの鮮やかな手腕が印象的。

Hob.I:70 Symphony No.70 [D] (before 1779)
珍しい曲を選んできました。リズムの面白さが際立つ曲。ハイドンの音楽に潜む諧謔性が炸裂。畳み掛けるようなクレッシェンド。ティチアーティはときおりレガートを織り交ぜリズムの切れ味を強調。特にティンパニが鮮やか。オケが軽々と吹き上がる快感。
アンダンテでは仄暗い旋律を穏やかに刻んで、またも音符自体に音楽を語らせるように表現を抑え気味に進めます。そしてメヌエットの自然で鮮やかなところは変わらず。メヌエットの終盤にじわじわとオケに力が漲ってくるようになりますが、このやりすぎないのにオケの鮮やかさが際立つというところがティチアーティの優れたところでしょう。
フィナーレはフーガ。ハイドンなのにバッハを思わせる緻密な展開と感じさせるのはティチアーティがきりりと表情をオケを引き締めているからに他なりません。緻密にコントロールされたオケからは神々しいオーラが発せられています。

Hob.I:101 Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
締めは時計。2楽章ばかりが有名ですが、時計も驚愕も緊密な1楽章が聴きどころ。タイトでクリア、引き締まった序奏から、落ついて主題に入ります。流れよりもゴツゴツしたリズムの面白さを強調して進みますが、それがだんだん流麗さを帯びてくる展開。この1楽章の古典的な演奏の高揚感をあえて避けるように、冷静さを保ちながらオケのスロットルをコントロール。やはりオケの俊敏さ、切れ味の良さが持ち味。1楽章の終結部の力の漲りようにはビックリ。
2楽章のアンダンテは予想どおり速めの展開。カチカチ刻む秒針に合わせて音楽も軽やか。なぜかオーボエの響きが実に美しい。展開部に入っての盛り上がりもキレキレ。ティンパニの鋭いバチさばきにうっとり。テーマ音楽としてのわかりやすさではなく、交響曲としてのアーティスティックな魅力をきちんと伝えるという姿勢が素晴らしいですね。
ティチアーティのメヌエットは俊敏なオケが鮮やかに響き、実に爽快。これが3楽章に挟まって交響曲の展開を多彩にしているという意味がよくわかります。クリアな録音で際立つ響きの鮮やかさ。全奏でも各パートの音色が鮮明にわかります。
そしてフィナーレは俊敏なオケの機能美のショーケースのような風情。全編にオケの力が漲り、展開部のフーガはあえて音量をかなり落として繊細さを印象付け、最後は室内オケとは思えないほどの力感を表してフィニッシュ。

新進気鋭のロビン・ティチアーティ率いるスコットランド室内管によるハイドンの交響曲集。若手の指揮者がハイドンを取り上げると有り余る創意を出しすぎて、くどくなったり強引さが目立ったりするのですが、ティチアーティはその辺がわかっているのか、実に落ち着いて、必要十分な創意で十分な効果を挙げています。室内管弦楽団の透明感あふれる響きを武器に、俊敏なところ、力漲るところを見せつつも遊び心も忘れず、ハイドンとはこうして演奏するものと言わんばかりのスマートさ。このセンスこそムーティの目に止まったところではないかと想像しています。選曲のセンスもよく、今後のハイドンの録音が期待されるところ。今回の3曲、すべて[+++++]とします。

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