絶品、ニコラス・マギーガンの交響曲集第2弾(ハイドン)
先日注文して届いたばかりのアルバム。

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ニコラス・マギーガン(Nicholas McGegan)指揮のフィルハーモニア・バロック管弦楽団(Philharmonia Baroque Orchestra)の演奏によるハイドンの交響曲57番、67番、68番の3曲を収めたアルバム。収録は68番が2014年2月8日から9日、他2曲が2014年10月11日から12日にかけて、何れもサンフランシスコの対岸、バークレーにある第一組合教会(First Congregational Church)でのライヴ。レーベルはフィルハーモニア・バロック・プロダクションというオケの自主制作レーベル。
このアルバム、気にはなっていたものの注文せずにいたもの。ニコラス・マギーガンのハイドンの交響曲の第2弾なんですが、第1弾としてリリースされたアルバムが今ひとつピンとこなかったからに他なりません。
2011/09/03 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ニコラス・マギーガンのロンドン、88番、時計
連休中にamazonを物色していてこのアルバムをよく見てみると、曲目が57番、67番、68番とよほどのハイドンマニアしか手を出さないマイナー曲ばかり。最初のアルバムが有名曲ばかりだったのとは打って変わってこの選曲でアルバムを作ったのが気になって、注文に至った次第。将棋のさし手で言えば、1手目は定石どおり、そして2手目に意外な手を打ってきたという感じでしょうか。
マギーガンやオケについては前記事をご参照ください。
さて、このアルバム、早速CDプレイヤーにかけてみると、前作とは異次元の緊張感。いやいやこれはなかなかの演奏ではありませんか。
Hob.I:57 Symphony No.57 [D] (1774)
地味ながらハイドンの交響曲の面白味が詰まった名曲。気配を探るような序奏から躍動感あふれる主題に入るあたりの演出は実に見事。古楽器ながら非常にプレーンなコントロールがマギーガンの特徴ですが、前作のロンドンではちょっと踏み込み不足な印象を残してしました。この曲ではそのプレーンさが逆に功を奏して、曲の面白さがくっきりと浮かび上がり、わくわくするような躍動感に至ります。ハイドンの交響曲が好きな人の心に刺さる晴朗さ。音符から音楽が踊りだしてくるよう。たまりません! マギーガンの誠実なコントロールでハイドンの音楽に生気を与えます。そして繰り返される転調の妙、オケの奏者全員が一体になって音楽を作り、素晴らしい推進力を生み出しています。1楽章から絶品です。
続くアダージョはゆったりと間を生かした演奏。静けさに安らぎが宿るような癒しに満ちた表情が素晴らしいですね。ライブながら会場ノイズは皆無で、教会での録音らしく深い響きが心地よい録音。シュトルム・ウント・ドラング期の作品を思い出させるようなハイドン独特の仄暗い雰囲気がたまりません。小手先ではなく音楽の芯をとらえた解釈なのでしょう、じわりと心にしみる音楽。
メヌエットも力まず、ゆったりとした拍子の変化、オケの響きの余韻を楽しむような演奏。時折鋭い音色を織り交ぜてアクセントをつけます。よく聴くと弦楽器の音色がよく揃って、厚みもあり、弦楽セクションの優秀さがうかがわれます。
フィナーレは蚊が飛ぶような音色のヴァイオリンから入るユニークなもの。これまで同様余裕のある演奏で強奏でも力むことがなく、鮮やかなオケの吹き上がりを楽しむことができます。軽やかにコミカルな表情をまとめる見事な手腕。1曲目からノックアウトです。
Hob.I:67 Symphony No.67 [F] (before 1779)
1曲目同様、余裕たっぷりに曲想をじっくりトレースする入り。この時期の成熟したハイドンの筆致の素晴らしさを確信的に描いていきます。力みは全くなくオケが軽々と自然に響き、古楽器によるピュアな響きと相俟って素晴らしい感興をつくります。ときおりホルンがキリッとした音色でアクセントを加えます。
素晴らしいのが2楽章のアダージョ。とぼとぼとした素朴な音楽からにじみ出るえも言われぬ実に豊かな音楽。この朴訥さをマギーガンが実に穏やかにまとめていきます。これ以上の自然な表現はできないほど。必要十分な抑揚が音楽をいかに豊かにすることか。沁みます。
そして力の抜けたメヌエット。フィナーレもよく力が抜けて美しい響きを堪能できます。木管陣の音色の美しさが華を添えます。中間部でさらに脱力。ライヴでこれだけ落ち着いた演奏とは驚きます。悟りを開いたがごとき達観でしょう。まるで102番のアダージョのように癒しが溢れる音楽。この曲の終楽章がこれほど素晴らしいとは今まで気づいていませんでした。最後は躍動感を取り戻して終了。いやいや見事。
Hob.I:68 Symphony No.68 [B flat] (before 1779)
収録日は異なりますが、演奏、録音の質は変わらず素晴らしさを保っています。この時期のハイドンの曲の素朴な良さを力を抜いて表現しているところは変わらず、オペラの間奏曲のような不思議な曲想をうまくまとめています。リズムと調が次々と変化していく場面の描写はまさにオペラを見ているよう。いつもながらハイドンの巧みな描写能力に唸るばかりです。
この曲では2楽章がメヌエット。変わったメロディーが印象的なメヌエットですが、そのメロディーがさらに変化して奇異な印象すら与える独特の曲想。その表情を淡々と澄み切った音色で描いていくことで音楽の面白さが引き立ちます。
そしてさらに独特な3楽章のアダージョ・カンタービレ。繰り返されるリズムに乗ってユニークなメロディーが繰り替えし変化しながら行き来する、誰にも想像しようがないほどのユニークなもの。哲学者を思い起こさせます。ハイドンの機知の面目躍如。マギーガンは13分近い長大な楽章を実に丁寧に描き、やはり音楽がにじみ出てハイドンの創意に直に触れるような体験を与えてくれます。
フィナーレに至ってハイドンの総意が爆発。何でしょう、このシンプルなのに深い音楽は。何者にも縛られず自らの創意のままのメロディーを音符に落としたのでしょうが、メロディー自体の変化に加え、楽器間の受け渡しや、変奏の面白さまで、隅から隅までユニーク。その面白さの真髄を味あわせてくれる見事な演奏でした。この面白さ、聴いていただかなくてはわかりませんね。この曲、名曲です。
ニコラス・マギーガン指揮するサンフランシスコの古楽器オケ、フィルハーモニア・バロック管弦楽団によるハイドンの交響曲集第2弾。ハイドンの面白さの最もコアなところを知っているのでしょう、実に地味な選曲ながら、このアルバムにはハイドンの交響曲の魅力がすべて詰まっているような見事な仕上がりです。ライヴ収録とのことですが、セッション録音と言われてもわからぬほどの仕上がりで、その上音楽はライヴのようにイキイキと弾みます。ライヴらしい盛り上がりではなく、実に冷静な指揮によって心にぐっと響くような魅力に溢れています。第1弾が今ひとつだったのにたいし、このアルバムは絶品。ハイドンの交響曲の最上の魅力を知りたい人、必聴です! もちろん評価は全曲[+++++]とします。

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ニコラス・マギーガン(Nicholas McGegan)指揮のフィルハーモニア・バロック管弦楽団(Philharmonia Baroque Orchestra)の演奏によるハイドンの交響曲57番、67番、68番の3曲を収めたアルバム。収録は68番が2014年2月8日から9日、他2曲が2014年10月11日から12日にかけて、何れもサンフランシスコの対岸、バークレーにある第一組合教会(First Congregational Church)でのライヴ。レーベルはフィルハーモニア・バロック・プロダクションというオケの自主制作レーベル。
このアルバム、気にはなっていたものの注文せずにいたもの。ニコラス・マギーガンのハイドンの交響曲の第2弾なんですが、第1弾としてリリースされたアルバムが今ひとつピンとこなかったからに他なりません。
2011/09/03 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ニコラス・マギーガンのロンドン、88番、時計
連休中にamazonを物色していてこのアルバムをよく見てみると、曲目が57番、67番、68番とよほどのハイドンマニアしか手を出さないマイナー曲ばかり。最初のアルバムが有名曲ばかりだったのとは打って変わってこの選曲でアルバムを作ったのが気になって、注文に至った次第。将棋のさし手で言えば、1手目は定石どおり、そして2手目に意外な手を打ってきたという感じでしょうか。
マギーガンやオケについては前記事をご参照ください。
さて、このアルバム、早速CDプレイヤーにかけてみると、前作とは異次元の緊張感。いやいやこれはなかなかの演奏ではありませんか。
Hob.I:57 Symphony No.57 [D] (1774)
地味ながらハイドンの交響曲の面白味が詰まった名曲。気配を探るような序奏から躍動感あふれる主題に入るあたりの演出は実に見事。古楽器ながら非常にプレーンなコントロールがマギーガンの特徴ですが、前作のロンドンではちょっと踏み込み不足な印象を残してしました。この曲ではそのプレーンさが逆に功を奏して、曲の面白さがくっきりと浮かび上がり、わくわくするような躍動感に至ります。ハイドンの交響曲が好きな人の心に刺さる晴朗さ。音符から音楽が踊りだしてくるよう。たまりません! マギーガンの誠実なコントロールでハイドンの音楽に生気を与えます。そして繰り返される転調の妙、オケの奏者全員が一体になって音楽を作り、素晴らしい推進力を生み出しています。1楽章から絶品です。
続くアダージョはゆったりと間を生かした演奏。静けさに安らぎが宿るような癒しに満ちた表情が素晴らしいですね。ライブながら会場ノイズは皆無で、教会での録音らしく深い響きが心地よい録音。シュトルム・ウント・ドラング期の作品を思い出させるようなハイドン独特の仄暗い雰囲気がたまりません。小手先ではなく音楽の芯をとらえた解釈なのでしょう、じわりと心にしみる音楽。
メヌエットも力まず、ゆったりとした拍子の変化、オケの響きの余韻を楽しむような演奏。時折鋭い音色を織り交ぜてアクセントをつけます。よく聴くと弦楽器の音色がよく揃って、厚みもあり、弦楽セクションの優秀さがうかがわれます。
フィナーレは蚊が飛ぶような音色のヴァイオリンから入るユニークなもの。これまで同様余裕のある演奏で強奏でも力むことがなく、鮮やかなオケの吹き上がりを楽しむことができます。軽やかにコミカルな表情をまとめる見事な手腕。1曲目からノックアウトです。
Hob.I:67 Symphony No.67 [F] (before 1779)
1曲目同様、余裕たっぷりに曲想をじっくりトレースする入り。この時期の成熟したハイドンの筆致の素晴らしさを確信的に描いていきます。力みは全くなくオケが軽々と自然に響き、古楽器によるピュアな響きと相俟って素晴らしい感興をつくります。ときおりホルンがキリッとした音色でアクセントを加えます。
素晴らしいのが2楽章のアダージョ。とぼとぼとした素朴な音楽からにじみ出るえも言われぬ実に豊かな音楽。この朴訥さをマギーガンが実に穏やかにまとめていきます。これ以上の自然な表現はできないほど。必要十分な抑揚が音楽をいかに豊かにすることか。沁みます。
そして力の抜けたメヌエット。フィナーレもよく力が抜けて美しい響きを堪能できます。木管陣の音色の美しさが華を添えます。中間部でさらに脱力。ライヴでこれだけ落ち着いた演奏とは驚きます。悟りを開いたがごとき達観でしょう。まるで102番のアダージョのように癒しが溢れる音楽。この曲の終楽章がこれほど素晴らしいとは今まで気づいていませんでした。最後は躍動感を取り戻して終了。いやいや見事。
Hob.I:68 Symphony No.68 [B flat] (before 1779)
収録日は異なりますが、演奏、録音の質は変わらず素晴らしさを保っています。この時期のハイドンの曲の素朴な良さを力を抜いて表現しているところは変わらず、オペラの間奏曲のような不思議な曲想をうまくまとめています。リズムと調が次々と変化していく場面の描写はまさにオペラを見ているよう。いつもながらハイドンの巧みな描写能力に唸るばかりです。
この曲では2楽章がメヌエット。変わったメロディーが印象的なメヌエットですが、そのメロディーがさらに変化して奇異な印象すら与える独特の曲想。その表情を淡々と澄み切った音色で描いていくことで音楽の面白さが引き立ちます。
そしてさらに独特な3楽章のアダージョ・カンタービレ。繰り返されるリズムに乗ってユニークなメロディーが繰り替えし変化しながら行き来する、誰にも想像しようがないほどのユニークなもの。哲学者を思い起こさせます。ハイドンの機知の面目躍如。マギーガンは13分近い長大な楽章を実に丁寧に描き、やはり音楽がにじみ出てハイドンの創意に直に触れるような体験を与えてくれます。
フィナーレに至ってハイドンの総意が爆発。何でしょう、このシンプルなのに深い音楽は。何者にも縛られず自らの創意のままのメロディーを音符に落としたのでしょうが、メロディー自体の変化に加え、楽器間の受け渡しや、変奏の面白さまで、隅から隅までユニーク。その面白さの真髄を味あわせてくれる見事な演奏でした。この面白さ、聴いていただかなくてはわかりませんね。この曲、名曲です。
ニコラス・マギーガン指揮するサンフランシスコの古楽器オケ、フィルハーモニア・バロック管弦楽団によるハイドンの交響曲集第2弾。ハイドンの面白さの最もコアなところを知っているのでしょう、実に地味な選曲ながら、このアルバムにはハイドンの交響曲の魅力がすべて詰まっているような見事な仕上がりです。ライヴ収録とのことですが、セッション録音と言われてもわからぬほどの仕上がりで、その上音楽はライヴのようにイキイキと弾みます。ライヴらしい盛り上がりではなく、実に冷静な指揮によって心にぐっと響くような魅力に溢れています。第1弾が今ひとつだったのにたいし、このアルバムは絶品。ハイドンの交響曲の最上の魅力を知りたい人、必聴です! もちろん評価は全曲[+++++]とします。
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