作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ロジャー・ノリントン/チューリッヒ室内管のパリ交響曲集(ハイドン)

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気になっていたアルバムが到着。

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TOWER RECORDS / amazon / HMV ONLINEicon

サー・ロジャー・ノリントン(Sir Roger Norrington)指揮のチューリヒ室内管弦楽団(Zurich Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンのパリ交響曲集を収めた3枚組のアルバム。収録は2013年6月26日、7月9日から10日チューリッヒのZKO-hausでのセッション録音。ZKOはオケの略称で、ホールでもありリハーサルもできる多用途スタジオといったところでしょうか。レーベルはSONY CLASSICAL。

ノリントンは気になる指揮者。最近N響にも客演しているので、日本での知名度も上がってきているでしょう。映像で見るノリントンは作曲者が音符に吹き込んだメッセージとは全く関係なくノンヴィブラートのピュアな響きで音楽を自在に操るのを楽しむような実にユニークな指揮ぶり。このアプローチはハイドンにこそ好適だと思っているのですが、これまでリリースされている交響曲のアルバムは、そのノリントンの自在な魅力が捉えられているかというと、案外そうでもありません。古くはEMIによるザロモンセット後半の6曲、そしてHässler CLASSICによるザロモンセットのライブなどがありますが、いずれもちょっと条件が良くなく、ノリントン節を堪能するというところまでいってません。むしろ良かったのは天地創造と四季。

2014/10/22 : ハイドン–管弦楽曲 : ノリントン/カメラータ・ザルツブルクの十字架上のキリストの最後の七つの言葉(ハイドン)
2010/06/26 : ハイドン–オラトリオ : ノリントンの四季、到着
2010/06/20 : ハイドン–オラトリオ : ノリントンの天地創造
2010/03/18 : ハイドン–交響曲 : ノリントンの新旧交響曲集

そして直近に聴いた「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」も良かったですね。ということで今日取り上げるアルバムは最近のノリントンの良さをうまく表せているかどうかがポイントですね。

このアルバム、HMV ONLINEなどではその録音の良さなどに評判が集中してきましたが、これはいい。これまでのノリントンによる交響曲のどの録音よりもノリントンの良さがうまく録られています。じっくり落ち着いた入り。そしてオケが実に良く鳴って、弱音から強音への吹き上がりも見事。そしてノリントンらしい突然レガートになったり、意表をつくアクセントを仕込んだりという変化。最近はファイなどによる斬新な演奏の影響もあり、自在な表現へのアレルギーもあまり感じなくなりつつあります。そして前評判どおり録音は鮮明。ノリントンによる変幻自在な響きを良く捉えてスタジオらしい空間にタイトに満ちる小編成オケの魅力を存分に感じさせるもの。今日到着したばかりですが、すぐに3枚とも聴き終えました。演奏は作曲順で87番から。各曲のポイントをさらっておきましょう。

Hob.I:87 Symphony No.87 [A] (1785)
1曲目からキレ味鋭いオケの魅力に圧倒されます。推進力あふれる曲ですが、意外に冷静にオケをコントロールしていきます。この曲の素晴らしい集中力を聴き名演を確信。2楽章の実に落ち着いた演出、そしてメヌエットもじっくりとした語り口。この落ち着きはかなり確信犯的なもの。そしてこの曲一番の聴きどころであるフィナーレの躍動感、胸のすくようなクレッシェンド。そして時折りレガートをしっかりと効かせる表現上のアクセントが効果的。

Hob.I:85 Symphony No.85 "La Reine" 「王妃」 [B flat] (1785?)
本来しっとりとした入りですが、流石ノリントン、十分に現代的な響きにまとめてきます。聴き進むうちにノリントンの創意に釘付けになります。ちょっと踏み込んだ表現ばかりだと聴き疲れしてしまいますが、このアルバムそうした状況にはならず、曲本来の響きに対するちょっとした表現の工夫というレベルでバランス感覚を保っているのが素晴らしいところ。2楽章はかなり足早やにまとめますが、そのまとめ方が絶妙。このあたりがノリントンの素晴らしいところ。そしてゆったりとしたメヌエットでリズムの面白さを存分に際立たせ、フィナーレでは再び足早に進める魅力を再現。

Hob.I:83 Symphony No.83 "La Poule" 「雌鶏」 [C] (1785)
クセのある曲ですが、もうノリントン節にやられていますので、実に心地良く響きます。聴きなれたメロディーですが実に新鮮に響きます。そして通常癒しに満ちた音楽としてメロディーの自然な美しさで聴かせるアンダンテは、そうした表現を月並みだと言わんばかりの小気味好いさっぱりと表現。そして、メヌエットは逆に自然に響かせ、音楽の起伏を逆転させようとでもしているかのような工夫。フィナーレまで完璧にコントロールされたオケの秩序に惚れ惚れとします。

Hob.I:84 Symphony No.84 [E flat] (1786)
ピュアトーンの純粋な響きが脳にダイレクトに伝わります。ハイドンはこのように響くlことを想像していたのでしょうか? 響きの変化だけでも十分に刺激的。あえてオーソドックスな展開とすることで響きの純粋さが際立ちます。この曲の素晴らしさを再認識した次第。ちょっとデフォルメされたアクセントが心地よく耳に刺さります。2楽章のアンダンテは曲の霊が乗り移っているがごときコントロール。このアルバムの中でも深い洞察に痺れる箇所。そしてメヌエットではオケの残響を楽しむようにオケを鳴らしていきます。フィナーレまで落ち着いた表現を保ちます。この曲のベストと言いたいほどの素晴らしい出来。

Hob.I:86 Symphony No.86 [D] (1786)
一番楽しみにしていた曲ですが、期待以上に素晴らしい演奏。この曲のリズムともに響きの陶酔に至るようなところが、ノリントン流の味付けで絶品に仕上がっています。特にオケの精度と鳴りの良さは出色。オーソドックスな演奏も良いものがたくさんありますが、このノリントン流の変化球も悪くありません。オケを自在に操るノリントンのほくそ笑むようすが見えてくるよう。アバドの奇跡の切れ味鋭いオケの反応を上回るような俊敏なオケに聴き惚れます。あまりに鮮やかな吹き上がりにアドレナリン噴出。いやこれは素晴らしい。そして深く沈むラルゴ。明るさを取り戻すようなメヌエット。フィナーレはオケがキレキレ。いやいや見事の一言。

Hob.I:82 Symphony No.82 "L'Ours" 「熊」 [C] (1786)
最後の熊、1楽章は素晴らしい迫力で入ります。熊に襲い掛かられるような迫力。しかも力で押されるばかりではなく現代風にアーティスティック。続くアレグレットはさっぱりと足早なパターン。それでも曲の本質をえぐるような迫力を帯びているのが流石なところ。そしてメヌエットで再びじっくりとした演出。フィナーレは恐ろしい気配のようなものを感じさせつつ最後はオケの妙技を印象付けて終わります。私はこの演奏を熊のベスト盤に推します。

到着したばかりのアルバムですが、あまりに面白くて一気に3枚を通して聴きました。ノリントンの才気とチューリッヒ室内管の精緻な演奏が融合した素晴らしいハイドン。パリ交響曲集の演奏としてもおすすめできる素晴らしいアルバムです。ようやくノリントンのハイドンの面白さを存分に楽しめるアルバムに出会ったということでしょう。評価は全曲[+++++]を進呈です。

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2 Comments

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Haydn2009

No title

Daisyさん こんにちは。
Youtubeに、ノリントンによるパリセツトがアップされているので、それを何曲か視聴して
ますが、このCDの録音はその時のものですかね。Youtubeのパリセットは、ちょっと耳につくノイズが入ってしまっていますが、ノリントン節全開なのがよくわかります。ノリントンについては、他の交響曲も多数、そして天地創造、四季、トビアの帰還の映像もアップされていますね。

  • 2015/04/25 (Sat) 11:55
  • REPLY

Daisy

Re: No title

Haydn2009さん、こんにちは。
いつもコメントありがとうございます。ちなみに普段からあまりYouTubeをチェックしていないのですが、ノリントンのYouTubeをいくつか聴いてみました。下のリンクは86番の演奏。

https://www.youtube.com/watch?v=ht-jTqLfZWo

今回取り上げたアルバムとは異なりオケはCamerata Salzburgで、映像から想像するにだいぶ前のものかと思いますが、演奏はライヴの興奮の渦にたたきこまれるような素晴らしい高揚感噴出のものでビックリしました。こういう演奏のライブを是非リリースしてもらいたいものですね。

  • 2015/04/26 (Sun) 08:53
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