作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ドーリック弦楽四重奏団の太陽四重奏曲集(ハイドン)

0
0
仕事バタバタで、なかなか音楽を聴く隙がありません(苦笑)。それでもなんとかレビューをしなくてはとの想いでCDプレイヤーにアルバムをセットして聴いています。

DoricSQ20.jpg
TOWER RECORDS / amazon / HMV ONLINEicon

ドーリック弦楽四重奏団(Doric String Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.20「太陽四重奏曲集」から、No.1からNo.6の6曲を収めた2枚組のアルバム。収録は2013年10月7日から9日、12月2日から4日、イングランドのロンドン北西の海沿いの街、サフォークのポットン・ホール(Potton Hall)でのセッション録音。レーベルは英CHANDOS。

このアルバム、比較的最近リリースされたものながら当方の手元になかったものですが、それを見抜いた湖国JHさんが一連のアルバムとともに送り込んでこられたもの。ただし、当方もほぼ同時に注文を入れてあり、なぜかほぼ同じ時期に手元に着き、現状2組のアルバムが手元にあるという状態です。まあ、レビューに取り上げるべしとの啓示があったと理解して、取り上げる次第(笑)

ちなみにドーリック弦楽四重奏団のハイドンは別のライヴ盤を一度取り上げています。

2013/06/20 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ドーリック弦楽四重奏団のウィグモアホールライヴ

ウィグモアホールでのライヴは2009年の収録に対して、今日取り上げるアルバムは2013年と4年後の録音。その間、ヴィオラが女性に変わっています。

第1ヴァイオリン:アレックス・レディントン(Alex Redington)
第2ヴァイオリン:ジョナサン・ストーン(Jonathan Stone)
ヴィオラ:エレヌ・クレモン(Hélène Clément)
チェロ:ジョン・マイヤースコウ(John Myerscough)

ウィグモアホールのライヴの記事を読んでいただければわかるとおり、このクァルテット、かなりの実力の持ち主との印象ですが、こんどはセッション録音ということで、また違った側面が見えるでしょうか。

Hob.III:31 / String Quartet Op.20 No.1 [E flat] (1772)
ウィグモアホールのライヴが、ライヴらしい緊張感と素晴らしい覇気に溢れた演奏だったのに対し、こちらはセッション録音らしい落ち着いた演奏。もちろん同じクァルテットなので、演奏のスタンスは共通したものがありますが、ウィグモアホールライヴの張り詰めた緊張感があまりに素晴らしかったので、その分、特別感は下がって聴こえます。Op.20のNo.1は曲の流れの良さを軸にした演奏が多い中、この演奏は響きの変化と即興性に焦点を当てたようなアプローチ。全員の創意をそれぞれ感じながら、意欲的に曲をデフォルメさせていきます。迫力というより創意で攻めてますね。十分に意欲的なんですが、この曲の良さを素直に表現した演奏以上に説得力があるかと言われれば、これ以上の演奏もいろいろあるという感じです。
メヌエットはキレ重視。弓使いが軽く、リズムの面白さを際立たせます。そして3楽章は現代音楽のような精妙な響きをベースにハイドンの美しいメロディーが織り交ぜられたもの。意外とこのあたりから引き込まれてきます。そしてフィナーレも入りは軽いタッチのボウイングが特徴。途中からギアチェンジして迫力に転化。途中特徴的なデフォルメで個性を主張。なかなか斬新なアプローチの演奏でした。

Hob.III:32 / String Quartet Op.20 No.2 [C] (1772)
続くNo.2も同様のスタンスながら、No.1より明らかに楽器が良く鳴ってます。よりライヴに近い臨場感のある演奏。演奏時のノリの良さも重要ということでしょう。各奏者が折り重なるようにせめぎ合いながらメロディーをつないでいく部分のクッキリとしてキレの良さがこのクァルッテットの面白さを代表するようです。4本の楽器の音色はそれぞれ異なるのですが、演奏スタイルは一貫していて、音楽の造りは緊密。1楽章の最後の弱音の表現も秀逸。臨場感もあり、現代性もある新時代のハイドンという印象。続く2楽章の楔を打ち込むような入りからの展開は曲の起伏を浮かび上がらせるこのクァルテットならでは冴えた現代性を感じさせます。自在にテンポを動かしタイトに攻め込みます。音程がずれそうなほどの強音で圧倒。そして静寂。ハイドンから夕陽に映える山脈のような深い陰影を浮かび上がらせます。メヌエットも同様、キリリと引き締まったヴァイオリンの高音に隈取られたアンサンブルの面白さが際立ちます。さっと立ち上がり、さっと引く呼吸の妙。そしてフィナーレは軽妙洒脱なボウイングに脱帽。

Hob.III:33 / String Quartet Op.20 No.3 [g] (1772)
CD1の最後はNo.3。こちらも楽器が良く鳴って、演奏のなめらかさもかなりのもの。CDに収められた順に収録したかはわかりませんが、No.1から進むにつれてリラックスしてきているように感じます。間の取り方も余裕が加わり、音楽が落ち着いてきて、ドーリック四重奏団の創意あふれる演奏と自然さのバランスが一番良くなってきています。録音も響きが一番柔らかい印象です。演奏の特徴はNo.2同様。この曲でも洗練された現代風のハイドンの面白さを存分に聴かせます。

ドーリック弦楽四重奏団のハイドンの太陽四重奏曲集、前半の3曲を取り上げました。No.1のノリが少々弱いことから最初は少し違和感を感じましたが、聴き進むうちに演奏も落ち着き、このクァルテットの創意溢れる演奏の魅力に徐々に引き込まれていきました。Op.20には名演奏が多いですが、このクァルテットのアプローチはオーソドックスではなく、かなりデフォルメを織り交ぜ、表現者の面目躍如。クレーメルのような切れ味がありますが、音楽が冷徹なわけではなく、楽天的なところもあることがハイドンとの相性を良くしているようです。評価はNo.1は[++++]、他2曲は[+++++]とします。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.