作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

クーベリック/ケルン放送響の時計、102番(ハイドン)

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東京は先週末に一気に染井吉野が開花しました。天気にも恵まれたので昼休みには多くの人が近くの公園などで暖かな陽射しのもと桜の花を見上げて楽しんでいました。夜の花見のためにブルーシートを敷いて新入社員が場所取りをしながらノートパソコンで仕事をしているのが微笑ましいですね。これから桜吹雪を楽しむと、程なく木々が芽吹き、一気に新緑の季節になります。街路樹の欅など、何も葉のない枝からあっという間に新緑の葉が吹き出してくるのは毎年ながら自然の力を感じます。

桜は楽しんでいるのですが、新年度に入って仕事もバタバタしており、なかなか音楽をゆっくり楽しめません(涙)。ということでちょっと間が空いてのレビューです。今日は新着アルバム。

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TOWWER RECORDS / HMV ONLINE
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ラファエル・クーベリック(Rafael Kibelík)指揮のケルン放送交響楽団(Kölner Rundfunk-Sinfonie-Orchester 現WDR Sinfonieorchester Köln)の演奏で、ハイドンの交響曲101番「時計」、102番などを収めた3枚組のアルバム。ハイドンの収録は時計が1963年5月31日、102番が1961年4月10日のライヴで、ケルン放送センターの第1ホールでのライヴ。咳払いなどが入っていないので放送用の収録ということでしょうか。レーベルはORFEO D'OR。

クーベリックのハイドンは気になる存在ゆえ、わりと取り上げています。これまでのレビューは以下のとおり。

2013/12/27 : ハイドン–交響曲 : クーベリック/バイエルン放送響の時計1970年10月ライヴ(ハイドン)
2012/07/24 : ハイドン–交響曲 : クーベリック/バイエルン放送響の99番1982年9月7日ライヴ
2012/01/27 : ハイドン–声楽曲 : クーベリック/バイエルン放送響の「戦時のミサ」
2010/10/11 : ハイドン–協奏曲 : フルニエ/クーベリックのチェロ協奏曲2番
2010/05/24 : ハイドン–オラトリオ : クーベリックの天地創造

今日取り上げるアルバムは最近リリースされたもので、ハイドンの曲が入っているのに最近気づいて慌てて注文したものです。クーベリックのハイドンの交響曲の録音はライヴを中心に99番、時計、102番が残されており、この3曲がお気に入りだったものと推察されます。その録音のなかでも最初期の録音です。

アルバム自体は1960年から63年にかけてケルン放送交響楽団との録音を集めたもので、残念ながら録音はすべてモノラルですが、ジャケットの写真のとおり、晩年の温厚な姿とは異なる、ギラつく視線とアーティスティックな雰囲気がにじみ出る若きクーベリックの覇気あふれる時代の録音です。上のバイエルン放送響との99番の記事に記したとおり、クーベリックは1961年からバイエルン放送響の首席指揮者に就任しており、まさに脂の乗りきった時代。晩年は中庸の美学で聴かせたクーベリックの覇気が聴かれるのでしょうか。

Hob.I:101 / Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
緊張感を帯びた入り。テンポはゆったりながら、ビンと張り詰めた序奏。録音はモノラルでわずかながら金属っぽい響きを感じますが鮮明さもほどほどあり悪くありません。低音がちょっとボンつき気味でピークが抑えられていますが、音量を上げていくとかなりのリアリティ。後年のクーベリックが聴かせる絶妙のバランス感覚はすでに健在。ザクザクと音楽を刻みますが、迫力だけではなく折り目正しさもあり、ハイドンが仕組んだ1楽章の構成感を見事に描いていきます。
見事なのは2楽章。時計のリズムを正確に刻みながら、イキイキとメロディーが浮かび上がり、各パートが代わる代わるヴァイオリンの奏でるメロディーにからみ、聴き進むうちに至福の心境に。中盤の盛り上がりも実に心地よい吹き上がり。オケの精度も高く、キリリと引き締まった表情で音楽が流れます。終盤は枯淡の境地。静寂の中にリズムが打たれ、彫りの深い表情で凛と迫ります。時計の2楽章でこれほど迫ってくるとは。
メヌエットはまさにクーベリックの美点が活きる楽章。バランスを保ちながらも、ザクザクと迫ってくる音塊。LPのモノラル盤の迫力のような引き締まった響きに鳥肌が立ちそう。中間部のフルートソロが実に心に沁みます。
そしてフィナーレ。落ち着いた入りから徐々にスロットルが開き、オケが分厚く鳴り響きます。最後にゆったりとした印象を残しながらのスロットルコントロール。徐々にクライマックスに昇りつめていきますが、音量を落とす部分は騒めくような気配を残して対比をつけます。最後は落ち着いてフィニッシュ。これはこれまでのクーベリックのベストのハイドンかもしれません。

Hob.I:102 / Symphony No.102 [B flat] (1794)
続く102番。先ほどよりも録音は2年ほど古いですが、コンディションはこちらの方が上で、鮮明度は上がります。低音のボンつきはおさまり、金属っぽい残響もなくなります。モノラルながらタイトないい録音。102番独特の穏やかなメロディーですが、前曲同様ザクザクと切り込み、迫力は十分。一貫してタイトな表情。オケは前曲よりもすこし荒く、力感重視な演奏。前曲での演奏がスロットルコントロールの面白さで聴かせたのに対し、この曲1楽章では力で押す感じでしょうか。
好きな2楽章ですが、この曲独特の穏やかな起伏を柔らかく描くのではなく、タイトに描いていきます。やはりこの時代の空気なのでしょうか、ザクザクとしたオケの表情が時折顔を覗かせます。
その表情はつづくメヌエットへの伏線だったのでしょう、メヌエットはキレのいいオケが楔を打ち込むように実に気持ち良く鳴ります。ゆったりとアダージョを聴かせるところではなく、ザクザクと鳴りまくるメヌエットに焦点をあてた設計。そのキレと迫力が効いているので中間部の木管陣によるメロディーが実に柔らかく響きます。
フィナーレはクーベリックの真骨頂、バランスと迫力が拮抗した素晴らしい演奏。オケのキレも最高潮。冴え冴えとしたヴァイオリンに分厚く迫る低音弦。そして特に音量をすっと下げるスロットルワークの巧みさが神々しいほど。最後はオケが研ぎ澄まされたように純度が上がり、フィニッシュ。出だしの1楽章が若干力み気味な印象を残したものの、聴き進むうちにオケが覚醒、最後は冴えまくって終わりました。

ラファエル・クーベリック指揮のケルン放送響による1960年代初頭のハイドンの名曲2曲の演奏。やはりクーベリックが飛ぶ鳥を落とす勢いで名声を得ていったころの覇気があふれる素晴らしい演奏でした。録音はモノラルですが、かえってモノラルならではの迫力が楽しめるという見方もできるでしょう。時計は緩急自在の演奏、102番は冴えまくるオケに圧倒される演奏でした。これまで聴いたクーベリックのハイドンでは両曲ともベストでしょう。評価は両曲とも[+++++]とします。

山梨では桃の花が盛りとの情報! 明日は山梨に桃の花を愛でにいってみましょうか、、、

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2 Comments

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だまてら

No title

ごぶさたしております。
勤務先の引越しは無事完了しましたが、その後もひと月以上は残務整理に追われ
てハイドンとこちらの音盤倉庫にも欠礼が続いてしまいました。
4月に入って残務の方はようやく落ち着いてきました(期変わりで、また別の案件が
出て来ていますが・・・)ので、とりあえずご報告を兼ねてコメントいたします。
その間の目ぼしい購入は、ゴ―バーマンの選集と今更の朝比奈(92番&99番)
くらいで、前者は最初の3枚を車中で聴いたのみ、後者は演奏もさることながら、
末尾の独語インタビューに感銘を受けました。

  • 2015/04/05 (Sun) 16:12
  • REPLY

Daisy

Re: No title

だまてらさん、こちらこそご無沙汰しております。
お仕事いろいろ忙しそうですね。こちらも変わらずバタバタしながら、隙をみてレビューするというペースは変わっておりません。やはり、ゆっくり音楽でも聴く時間がないといけませんね。生活には潤いが必要です(笑)

  • 2015/04/05 (Sun) 19:42
  • REPLY