作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ファブリツィオ・キオヴェッタのピアノソナタ集(ハイドン)

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番外記事にかまけていたので、ブログを正常化しなくてはなりません。今日はピアノソナタのアルバム。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ファブリツィオ・キオヴェッタ(Fabrizio Chiovetta)のピアノによるハイドンのピアノソナタ集。アンダンテと変奏曲(Hob.XVIII:6)、ソナタ3曲(XVI:46、XVI:20、XVI:34)、アリエッタと12の変奏曲(XVIII:3)の5曲を収めたアルバム。収録は2013年2月9日から10日、イタリア北部ベネチアの北のオーストリア国境に近いドッビャーコ(Dobbiaco)のマーラー・ホール(Sala Mahler)でのセッション録音。レーベルは最近リリースが活発なスイスclaves。

奏者のファブリツィオ・キオヴェッタは初めて聴く人。名前からイタリア人かと思いきや、生まれはスイスのジュネーブ。イタリアとスイス国籍をもつそう。ピアノをドミニク・ヴェーバー、パウル・バドゥラ=スコダ、ジョン・ペリーなど名奏者、名教師に学びました。ピアノばかりではなく室内楽やリートの伴奏などにも熱心に取り組んでいるそうです。

Hob.XVII:6 / Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
冒頭に傑作ををもってきました。ピアノはスタインウェイ。最新のアルバムだけあって録音は極上。静寂の中にピアノの美しい音色がぼっと浮かび上がります。落ち着いた演奏ではありますが、テンポは速めで、さらりとした感触でクイクイすすめる演奏。磨き抜かれた音色でダイナミクスは抑え気味。この曲はじっくりと骨格を表すような演奏も多い中、それとは対極にある爽やかなそよ風のような演奏。次々と展開する変奏のメロディーラインのデリケートな変化の面白さに集中しろと言わんばかり。草書の筆の運びの微妙な変化を堪能。テンポではない部分から立ち上る詩情がこの人の面白さのようです。

Hob.XVI:46 / Piano Sonata No.31 [A flat] (1767/70)
続いてシュトルム・ウント・ドラング期のソナタ。こちらもさらりと流れるような速めのテンポが心地よいですね。速いパッセージの指のキレの鮮やかなこと。ただし、微妙に揺れるような感じがあって味わい深い印象もあります。鍵盤の上を気持ちよさそうに往復するようすが目に浮かびます。正確なタッチというより即興演奏のようなしなやかな自在さが特徴。速めのテンポならではの楽興。実に力がぬけていて表現の軽さも魅力。
アダージョに入ってもそよ風のようなタッチは変わらず。この構えない演奏はなんでしょうか。右手から繰り出されるメロディーラインの美しさは絶品。自然な表情の美しさ。演奏が進むにつれてキオヴェッタの世界に引き込まれます。キラ星のごとき磨かれた音が降り注ぎ、音楽の純度は高まるばかり。完璧な調律が生み出す濁りのないハーモニーの美しさ。ピアノという楽器の最も美しい音色を選んで弾いているよう。いやいやこれは絶品ですね。
フィナーレもタッチの柔らかさにうっとり。キオヴェッタの音楽がなんとなくわかってきました。しなやかさを保ちながらクライマックスに到達します。

Hob.XVI:20 / Piano Sonata No.33 [c] (1771)
この人の音色で聴きたいと思わせる曲がちゃんと配置されています。1楽章は意外に個性的。音を切り気味な表現を織り交ぜ、2楽章の聴かせどころをひきたてようというのでしょうか。聴き進むうちにやはりキオヴェッタの世界に入り込みます。今日音を抑え気味にしてピアノの響きの純度が一番高い音量の範囲でコントロールしているよう。
期待のアンダンテ・コン・モート。素朴な印象の入り。やはりピアノの響きの純度は見事。水晶のような輝き。実にデリケートなタッチ。一音一音が活き活きと響き、自然な起伏と、異次元の輝きを帯び、この曲独特のキラメキが美しい。
フィナーレはいままでよりも少しタッチのキレが鈍く感じますが、これは意図的なものでしょう。途中からギアチェンジしてクリアな音色に変化します。ピアノの音色をタッチの変化で聴かせるなかなかの技。

Hob.XVI:34 / Piano Sonata No.53 [e] (c.1782)
ブレンデルのソナタ集が刷り込みになっている曲。この曲は速い。速いテンポでも違和感のない説得力があります。メロディーラインの面白さはこのテンポならでは。後半はテンポを結構揺らして変化をつけます。
アダージョも速めでさらりとした美しさにまとめます。じっくり描くことが多い曲ですが、こうして爽やかに弾かれるとこれもわるくありません。ピアノの響きの余韻が空間に消え入るようすが実に美しい演奏。美しいアダージョから3楽章への自然な入りはぞくっとします。リズミカルに弾むメロディーが心地良い演奏でした。

Hob.XVII:3 / Arietta con 12 variazioni [E flat] (early 1770's)
最後は変奏曲。変奏の描き分けの面白さで聴かせる曲です。さすがに最後に持ってきているあたり、いきなり変奏ごとの表情の変化の鮮やかさが際立ちます。特に高音のメロディーラインがくっきりと浮かび上がるあたりは素晴しいバランス感覚。ピアノの響きの純度の高さは相変わらず。よほどピアノを美しく響かせる勘所を押さえているものと見受けます。

様々な奏者が挑んでいるハイドンのピアノソナタ、デルジャヴィナがショパンのような響き、アムランが現代音楽のような峻厳な印象を残すなど、様々なハイドンの演奏が評判となっていますが、ファブリツィオ・キオヴェッタによる、ピアノの美しい響きの結晶のようなハイドンも心に残るものでした。速めのテンポによるあっさりとした表情が響きの純度をより高めているよう。このアルバムの中では最後のアリエッタと12の変奏曲が一番タッチがキレています。文句なしに全曲[+++++]としたいと思います。

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