フランツ・フォアラーバーのピアノ協奏曲XVIII:3ライヴ(ハイドン)

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フランツ・フォアラーバー(Franz Vorraber)のピアノと指揮、彼の友人を集めた弦楽オーケストラの演奏による、ハイドンのピアノ協奏曲(Hob.XVIII:3)、メンデルスゾーンのピアノと弦楽のための協奏曲の2曲を収めたアルバム。収録は2011年6月4日、ドイツ南部、シュツットガルト北西のマウルブロンにある世界遺産のマウルブロン修道院でのライブ。レーベルは独K&K VERLAGSANSTALT。
このアルバム、実に不思議なジャケット。アルバムの表面には"Grand Piano Masters - Mendelssohn & Haydn Concertos"としか書かれておらず、奏者名はなし。裏面には"Franz Vorraber Plays"と書かれ、これがピアニストの名だろうと想像力で補いますが、協奏曲ですから指揮者やオケはどうなっているのだろうと、ビニールを剥がすまでわかりません。超廉価版ならまだしも、中身はかなりまともな演奏にもかかわらず、かなり変わった作りのアルバムです。
さて、肝心のピアニスト、フランツ・フォアラーバーについて調べておきましょう。彼のサイトがありました。
Franz Vorraber - Pianist, Klassik, Robert Schumann Interprit
オーストリアのグラーツ生まれのピアニスト。ヨーロッパではシューマンのスペシャリストとして知られた人のようです。オルガン奏者を父にもち、幼少時から教会でオルガンを演奏し、ヴァイオリンも学んだそうです。専門的な教育はグラーツ音楽院、フランクフルト音楽院で受け、ケンプやハンス=ヨアヒム・エルハルトらに師事。卒業後ベーゼンドルファー賞、ウィーン省賞(he prize of the Austrian National Ministry of Vienna )に輝きました。デビューリサイタルは19歳の時に、なんと東京で開催したとのこと。以後ヨーロッパを中心に世界的に活躍しているということです。
Hob.XVIII:3 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [F] (1765)
臨時編成のオケとは思えない絶妙な呼吸の伴奏から入ります。テンポは速め、リズムは小気味よく刻み実に生気に富んだオーケストラコントロール。弾き振りの域を超えています。石造りの修道院らしく残響を伴う録音ですが、ピアノもオケも鮮明さはそれなりにあります。なにより素晴らしいのがフォアラーバーのピアノの輝くようにほとばしる才気。オケのキレも素晴らしいのですが、それを上回るキレ。まるで音が立っているよう。このハイドンの初期のピアノ協奏曲からあらん限りの才気を描き出すよう。フォアラーバー、只者ではりません。実にキレの良いアクセントをそこここに織り交ぜ、右手が紡ぎ出す音階の輝かしいことといったらありません。アルゲリッチを超えるようなカミソリのようなキレとダイヤのような輝き。テクニックの鮮やかさは素晴らしいのですが、それをひけらかすような音楽性のアンバランスはなく、あくまでも古典期のハイドンの曲を鮮烈に蘇らせるという範囲を保っているので、安心して聴いていられます。1楽章のカデンツァはキレの良いピアノタッチと会場に広がる余韻の消え入る様子を巧みに組み合わせた見事なもの。響きの良い会場であることを考えたものでしょうか。1楽章から衝撃的な素晴らしさにノックアウト気味。
美しいメロディーが心地良い2楽章のラルゴ・カンタービレ。淡々と入りますが、オケとピアノキレは変わらず、徐々にピアノの美しいメロディーが沁みてきます。満天の星空のような素晴らしい景色。オケのピチカートも弾み、ピアノがそれに応えながらの演奏。時折聞こえる咳払いにライヴであることに気付かされます。ラルゴにしては足早ですが、響きの澄み切った美しさに酔わされます。絶品。
期待通りフィナーレは素晴らしい推進力。ピアノのリズムのキレは恐ろしいほど。オケもヴァイオリンの旋律をかなりエキセントリックに響かせて、キレにはキレで応じます。終盤の音階が繰り返し遅いかかる部分では音数の多さに混濁寸前のカオス。迸るエネルギーに圧倒されます。ピアノは楽器のもつダイナミックレンジをフルに響かせます。この曲では拍手はカットされています。
つづくメンデルスゾーンのピアノと弦楽のための協奏曲はハイドン以上に表現が突き抜け、最後には観客から盛大な拍手を浴びて終わります。まさに奇跡の瞬間のような素晴らしいコンサートの記録でした。
まったく存在すら知らなかったフランツ・フォアラーバーという人。この演奏によってハイドンの演奏に一石を投じたことになります。まったく期待せずCDをかけてみると、キレキレの音楽が噴出。はっきりいってピアノはアルゲリッチよりキレてます。オケのコントロールも見事の一言。世の中には素晴らしい才能を持った人がいるものです。略歴で触れたように日本でデビューリサイタルを開いたということで、ご存知の方もいるかもしれませんね。要注目のピアニストです。評価はもちろん[+++++]です。いやいや、素晴らしい。皆さん是非このエネルギーに打たれてください!
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