イザベル・ファン・クレーンのヴァイオリン協奏曲(ハイドン)
懐かしい人を取り上げます。

イザベル・ファン・クレーン(Isabelle van Keulen)のヴァイオリン、アントニ・ロス=マルバ(Antoni Ros-Marba)指揮のオランダ室内管弦楽団(Nederlands Kamerorkest)の演奏で、ハイドンのヴァイオリン協奏曲(Hob.VIIa:1)、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲2番(KV.211)の2曲を収めたアルバム。収録は1984年9月、アムステルダムにてとの記載のみです。レーベルは黄金期の蘭PHILIPS。
やはりこのブラウンとゴールドのラインの入ったPHILIPSのアルバムは懐かしいですね。今では当時ライバルだったDECCAのマークをつけて再発売されているものが多いので、私の世代の方にはかなり違和感があるのではないでしょうか。
このアルバム、例によって湖国JHさんから貸していただいているもの。残り数枚ですが未レビューのアルバムが残っています。
奏者のイザベル・ファン・クレーンは、懐かしい人。昔はアイドル的存在で多くのアルバムをリリースしていましたが、最近はあまり姿を見る機会はありません。手元にもアルバムはなく、FM放送からエアチェックして聴いていたのが懐かしいですね。生まれは1966年、オランダ、アムステルダム近郊のマイドレヒト。ヴァイオリン、ヴィオラに指揮もこなすようです。アムステルダムのスウェーリンク音楽院で学んだのち、ザルツブルクに渡り、モーツァルテウムにてシャンドール・ヴェーグに師事したとのこと。その後1984年のBBC若手音楽家コンクールで優勝したことで彼女の名がヨーロッパ中に広まりました。今日取り上げるアルバムはまさにその1984年の録音。コンクールとの前後関係は分かりませんが、その人気にあやかって録音されたものでしょう。活動はヴァイオリンやヴィオラのソリスト、室内楽と多彩で、なかでも1997年から2006年にかけて、オランダのデルフト室内楽音楽祭を自ら興し芸術監督を務めるなど、単なるソリストにとどまりません。なお、同じオランダ出身のロナルド・ブラウティハムとは20年来コンビを組んで演奏しているとのこと。最近では2012年からルツェルン芸術大学でヴァイオリン、ヴィオラ、室内楽の教授職にあるということです。
ジャケットの写真を見ると、みるからに少女の姿。それもそのはずで、録音時には18歳ということです。最近の姿は彼女のサイトを御覧ください。美しい大人の女性に変貌しております。
Isabelle van Keulen
このアルバムにはもう一つ着目すべき点があります。それは指揮者のアントニ・ロス=マルバ。ロス=マルバのアルバムは以前に2度ほど取り上げていますが、なかでもグラン・カナリア・フィルとの演奏は見事の一言。
2013/03/31 : ハイドン–協奏曲 : グラン・カナリア・フィルのトランペット協奏曲、2つのホルンのための協奏曲
2011/01/22 : ハイドン–管弦楽曲 : ロス=マルバ/カタルーニャ室内管弦楽団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉
十字架上のキリストの最後の七つの言葉が1965年、今日取り上げるアルバムが1984年、そしてグラン・カナリア・フィルとの演奏はごく最近とかなり録音年代に開きがあります。上記の二つのアルバムの演奏が良かっただけに今回取り上げるアルバムの伴奏にも期待できそうですね。
Hob.VIIa:1 / Violin Concerto [C] (c.1765)
やはり期待通りおおらかにオケを鳴らすロス=マルバの特徴がよく出た録音。PHILIPSにしては音像が近い、まるでDECCAのような録音です。ファン・クレーンのヴァイオリンはロス=マルバの伴奏に安心して乗っかっていきます。さすがにヴァイオリンの高音の伸びは素晴らしいものがありますが、演奏スタイルはオーソドックス。前のめりにはならず、かなり落ち着いたテンポでじっくりメロディーを描いていくところはロス=マルバがペースを握っているからでしょう。そのような中で、ファン・クレーンのヴァイオリンの音色が磨かれ、研ぎ澄まされていくところが聴きどころでしょうか。テンションは上がらずリラックスしながらヴァイオリンの音色を磨いていくような演奏。カデンツァも落ち着いたテンポの中、高音の音色の美しさをじっくりと聴かせるもの。この年でこの落ち着いた音楽作りはなかなかのもの。力みは一切なく、堂々とした美音を轟かせます。
予想はしていましたが、2楽章のアダージョはファン・クレーンの落ち着いた美音の魅力がいい形ではまりました。あまり音量は落とさず、堂々と来るかと思いましたが、ロス=マルバ、ぐっと音量を落として、ファン・クレーンのヴァイオリンにスポットライトを当てる気配り。相変わらずテンポは動かさず、ゆったりとした音楽が流れます。じつに慈しみ深い音楽。これが18歳の女性の奏でる音楽でしょうか。落ち着き払って美しいメロディーを置いていく揺るぎない姿勢。好きなアダージョですが、ファン・クレーンの大人びた少女のような美しさもいいものです。
フィナーレは再び、ロス=マルバがペースを握り、おおらかながら隈取りのはっきりしたわかりやすい音楽。ファン・クレーンは相変わらず、マルバのゆったりとしたテンポに安心してよりかかり、ヴァイオリンの響きを磨くことに集中。キビキビとした演奏に慣れている耳には、すこし遅すぎと聞こえなくはありませんが、これがロス=マルバの演奏スタイルでしょう。
つづくモーツァルトも同様のスタイルでの演奏。ロス=マルバはテンポをあまり動かしませんが、オケのコントロールはちみつで各パートがよく揃いながらも躍動かんもそれなりにあります。
昔アイドル系、今は実力派美女ヴァイオリニスト、イザベル・ファン・クレーンのデビュー当時の貴重な録音。何度も言いますがハイドンのヴァイオリン協奏曲はモーツァルト以上の傑作であり、名盤ひしめく状態のなか、テビュー直後の録音とは思えない落ち着いた表情が印象的なハイドンでした。特に2楽章のアダージョの美しさはかなりのもの。まだまだオケや指揮者に張り合うというインパクトはありませんが、自身の個性を美音に込めたこの演奏は流石一流どころというところでしょう。他のアルバムの出来と比べるとやはり、最高評価とはできず[++++]というところでしょう。
最近も主にオランダのChallenge Classicsからいろいろアルバムがリリースされているようですので、ハイドンの協奏曲の録音も期待したいところですね。

イザベル・ファン・クレーン(Isabelle van Keulen)のヴァイオリン、アントニ・ロス=マルバ(Antoni Ros-Marba)指揮のオランダ室内管弦楽団(Nederlands Kamerorkest)の演奏で、ハイドンのヴァイオリン協奏曲(Hob.VIIa:1)、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲2番(KV.211)の2曲を収めたアルバム。収録は1984年9月、アムステルダムにてとの記載のみです。レーベルは黄金期の蘭PHILIPS。
やはりこのブラウンとゴールドのラインの入ったPHILIPSのアルバムは懐かしいですね。今では当時ライバルだったDECCAのマークをつけて再発売されているものが多いので、私の世代の方にはかなり違和感があるのではないでしょうか。
このアルバム、例によって湖国JHさんから貸していただいているもの。残り数枚ですが未レビューのアルバムが残っています。
奏者のイザベル・ファン・クレーンは、懐かしい人。昔はアイドル的存在で多くのアルバムをリリースしていましたが、最近はあまり姿を見る機会はありません。手元にもアルバムはなく、FM放送からエアチェックして聴いていたのが懐かしいですね。生まれは1966年、オランダ、アムステルダム近郊のマイドレヒト。ヴァイオリン、ヴィオラに指揮もこなすようです。アムステルダムのスウェーリンク音楽院で学んだのち、ザルツブルクに渡り、モーツァルテウムにてシャンドール・ヴェーグに師事したとのこと。その後1984年のBBC若手音楽家コンクールで優勝したことで彼女の名がヨーロッパ中に広まりました。今日取り上げるアルバムはまさにその1984年の録音。コンクールとの前後関係は分かりませんが、その人気にあやかって録音されたものでしょう。活動はヴァイオリンやヴィオラのソリスト、室内楽と多彩で、なかでも1997年から2006年にかけて、オランダのデルフト室内楽音楽祭を自ら興し芸術監督を務めるなど、単なるソリストにとどまりません。なお、同じオランダ出身のロナルド・ブラウティハムとは20年来コンビを組んで演奏しているとのこと。最近では2012年からルツェルン芸術大学でヴァイオリン、ヴィオラ、室内楽の教授職にあるということです。
ジャケットの写真を見ると、みるからに少女の姿。それもそのはずで、録音時には18歳ということです。最近の姿は彼女のサイトを御覧ください。美しい大人の女性に変貌しております。
Isabelle van Keulen
このアルバムにはもう一つ着目すべき点があります。それは指揮者のアントニ・ロス=マルバ。ロス=マルバのアルバムは以前に2度ほど取り上げていますが、なかでもグラン・カナリア・フィルとの演奏は見事の一言。
2013/03/31 : ハイドン–協奏曲 : グラン・カナリア・フィルのトランペット協奏曲、2つのホルンのための協奏曲
2011/01/22 : ハイドン–管弦楽曲 : ロス=マルバ/カタルーニャ室内管弦楽団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉
十字架上のキリストの最後の七つの言葉が1965年、今日取り上げるアルバムが1984年、そしてグラン・カナリア・フィルとの演奏はごく最近とかなり録音年代に開きがあります。上記の二つのアルバムの演奏が良かっただけに今回取り上げるアルバムの伴奏にも期待できそうですね。
Hob.VIIa:1 / Violin Concerto [C] (c.1765)
やはり期待通りおおらかにオケを鳴らすロス=マルバの特徴がよく出た録音。PHILIPSにしては音像が近い、まるでDECCAのような録音です。ファン・クレーンのヴァイオリンはロス=マルバの伴奏に安心して乗っかっていきます。さすがにヴァイオリンの高音の伸びは素晴らしいものがありますが、演奏スタイルはオーソドックス。前のめりにはならず、かなり落ち着いたテンポでじっくりメロディーを描いていくところはロス=マルバがペースを握っているからでしょう。そのような中で、ファン・クレーンのヴァイオリンの音色が磨かれ、研ぎ澄まされていくところが聴きどころでしょうか。テンションは上がらずリラックスしながらヴァイオリンの音色を磨いていくような演奏。カデンツァも落ち着いたテンポの中、高音の音色の美しさをじっくりと聴かせるもの。この年でこの落ち着いた音楽作りはなかなかのもの。力みは一切なく、堂々とした美音を轟かせます。
予想はしていましたが、2楽章のアダージョはファン・クレーンの落ち着いた美音の魅力がいい形ではまりました。あまり音量は落とさず、堂々と来るかと思いましたが、ロス=マルバ、ぐっと音量を落として、ファン・クレーンのヴァイオリンにスポットライトを当てる気配り。相変わらずテンポは動かさず、ゆったりとした音楽が流れます。じつに慈しみ深い音楽。これが18歳の女性の奏でる音楽でしょうか。落ち着き払って美しいメロディーを置いていく揺るぎない姿勢。好きなアダージョですが、ファン・クレーンの大人びた少女のような美しさもいいものです。
フィナーレは再び、ロス=マルバがペースを握り、おおらかながら隈取りのはっきりしたわかりやすい音楽。ファン・クレーンは相変わらず、マルバのゆったりとしたテンポに安心してよりかかり、ヴァイオリンの響きを磨くことに集中。キビキビとした演奏に慣れている耳には、すこし遅すぎと聞こえなくはありませんが、これがロス=マルバの演奏スタイルでしょう。
つづくモーツァルトも同様のスタイルでの演奏。ロス=マルバはテンポをあまり動かしませんが、オケのコントロールはちみつで各パートがよく揃いながらも躍動かんもそれなりにあります。
昔アイドル系、今は実力派美女ヴァイオリニスト、イザベル・ファン・クレーンのデビュー当時の貴重な録音。何度も言いますがハイドンのヴァイオリン協奏曲はモーツァルト以上の傑作であり、名盤ひしめく状態のなか、テビュー直後の録音とは思えない落ち着いた表情が印象的なハイドンでした。特に2楽章のアダージョの美しさはかなりのもの。まだまだオケや指揮者に張り合うというインパクトはありませんが、自身の個性を美音に込めたこの演奏は流石一流どころというところでしょう。他のアルバムの出来と比べるとやはり、最高評価とはできず[++++]というところでしょう。
最近も主にオランダのChallenge Classicsからいろいろアルバムがリリースされているようですので、ハイドンの協奏曲の録音も期待したいところですね。
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