作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ウィーンピアノ三重奏団のピアノ三重奏曲集旧盤(ハイドン)

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いつもながら、間があいちゃってますが、地道にマイナー盤道を歩んでおります。今日は先日最新盤が素晴らしかったウィーンピアノ三重奏団の旧盤を取り上げます。

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ウィーンピアノ三重奏団(Vienna Piano Trio)の演奏で、ハイドンのピアノ三重奏曲4曲(Hob.XV:25、XV:29、XV:18、XV:24)を収めたアルバム。収録は1997年4月11日から14日、イギリスのイングランドのウェールズとの境に近いモンマス(Monmous)近郊にあるNimbus Foundationのコンサートホールでのセッション録音。レーベルはNimbus Records。

冒頭に触れたとおり、ウィーンピアノ三重奏団のアルバムは先日、2008年に録音されたアルバムを取り上げています。

2014/11/24 : ハイドン–室内楽曲 : 絶品! ウィーンピアノ三重奏団のピアノ三重奏曲集(ハイドン)

その2008年録音のアルバムから遡ること11年前の、同じくハイドンのピアノトリオの録音が今日取り上げるアルバムです。奏者はチェロが入れ替わっていますが、ヴァイオリンとピアノは変わりありません。

ヴァイオリン:ヴォルフガンク・レディック(Wolfgang Redik)
チェロ:マルクス・トレフニー(Marcus Trefny)
ピアノ:シュテファン・メンデル(Stefan Mendl)

実はこのアルバムも湖国JHさんに貸していただいているもの。素晴らしい名演奏を残したウィーンピアノ三重奏団のオリジンを知るべくレビューに入ります。

Hob.XV:25 / Piano Trio (Nr.39/op.73-2) [G] (1795)
有名なジプシーロンド。聴き始めるまえに新盤も改めて聴き直してみましたが、新盤のほうが速いテンポでキレの良い演奏になります。それに対して今日取り上げる旧盤は、予想に反してテンポは少し遅めでじつにゆったりとした演奏。シュテファン・メンデルのピアノは磨かれて輝きに満ちていますが、旧盤の方がむしろしっとりとした落ち着きが感じられます。事前の予想では旧盤の方が溌剌としていて、さらに切れ込むようにタイトなのではと思っていましたが、完全に逆を突かれた格好です。まあ、新盤より溌剌とした演奏は難しいほどに、新盤の出来が良かったというのが正直なところ。聴きなれたメロディーをゆったりとした気風でまとめた旧盤の演奏は、新盤を上回るほどの完成度。ピアノをはじめとした奏者の達観を示すような入り。新盤ほどの踏み込みを控える代わりに実に落ち着いた音楽運びが印象的。
続くポコ・アダージョもしっとりとした音楽が流れます。非常にデリケートなピアノのタッチに合わせるようにヴァイオリンとヴィオラは寄り添います。録音のせいか各楽器の線は若干細めに感じますが、音楽の濃密さは新盤と変わらぬl濃さ。Nimbusらしい空気感を感じる録音。
そして有名なジプシーロンド。鮮烈さは新盤にはかないませんが、粒立ちの良さは流石。この楽章がこの曲のハイライトだというのが明確にわかるように強調します。これまでの演奏の集中から3段ギアチェンジして素晴らしい集中力。この楽章へビシッとフォーカスを合わせた設計でした。見事。

Hob.XV:29 / Piano Trio (Nr.45/op.75-3) [E flat] (1796)
この曲も新盤と共通。新盤も良かったんですが、この曲を聴いて、新盤にタイトさで劣るという視点ではなく、若々しい弾力というか奏者の反応の良さではこちらもなかなか良いことがわかってきます。比べてどうのこうのという視点ではなく、音楽のつくりと時代の違いを味わえと言われているような気分になります。途中から短調に転調するところの表情のつくりかたはやはり演出上手。やはりこのトリオはピアノがリード役。ピアノが描く音楽の深みをヴァイオリンとヴィオラで陰影をつけているような印象です。
独特の静寂感をもつ2楽章。静かにきらめく星のような美しい旋律を訥々と表現していきます。研ぎ澄まされた美しさだけではなく徐々にダイナミックな迫力も感じさせるように自然に推移していきます。静寂の美学から一転、鮮やかにフィナーレに移り、大胆さを印象付けます。このトリオの音楽のダイナミクスはこのころからのものとわかりました。

Hob.XV:18 / Piano Trio (Nr.32/op.70-1) [A] (before 1794)
後半2曲は新盤とは重ならない曲。新盤ほどの究極的洗練には至らぬまでも、ダイナミクスと穏やかなしっとり感を基本とした素晴らしい演奏。大胆にリズムを刻む1楽章に対し、再び静かにきらめく2楽章のアンダンテ。そして流麗な3楽章。ピアノが主導するダイナミクスが鮮明な表情を醸し出します。

Hob.XV:24 / Piano Trio (Nr.38/op.73-1) [D] (1795)
前曲の流麗さを引き継ぐような選曲。もはや名人芸に打たれる快感のようなものを感じながら軽やかな進行を楽しみます。メロディーに潜む気配のようなものまで実にうまく描いていくので、音楽がイキイキと弾みます。短調に沈むアンダンテを挟んで妙に幸福感を感じる3楽章。激しく展開する中間部を挟んで再び穏やかにまとめます。アルバムの最後にこの楽章をもってくる見識。ハイドンのピアノトリオを知り尽くしての判断でしょう。

ウィーンピアノ三重奏団によるハイドンのピアノ三重奏曲集。11年の歳月を経て、再び世に問うたアルバムも素晴らしかったのですが、こちらもそれに劣らず、早くも円熟の境地に到達していました。演奏の技術の問題を感じさせるようなところは一切なく、音楽も成熟している素晴らしい演奏。ハイドンのピアノトリオの至福の境地を楽しめる名演奏と言っていいでしょう。先に取り上げたヴァイオリンとヴィオラのためのソナタ集もそうですが、弦楽四重奏曲で有名なハイドンのより少ない声部の音楽は、声部が少ないだけより純粋な音楽が楽しめる名曲ぞろい。室内楽の魅力がよりピュアに味わえます。評価はもちろん[+++++]とします。

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