作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アラン・モリア/トゥールーズ室内管の管楽協奏曲集(ハイドン)

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皆様、明けましておめでとうございます。

いつも通りの正月、御節にお酒にとのんびり過ごしております。東京は幸いいい天気に恵まれておりますが、日本海側などは豪雪に見舞われているとのこと。雪かきに忙しい正月の方もあるかもしれませんね。

さてさて、正月にのんびりとばかりはしていられませんので、そろそろレビューに入りたいと思います。今年最初の取り上げるのはこちら。

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アラン・モリア(Alain Moglia)指揮のトゥールーズ室内管弦楽団(Orchestre de Chambre National de Toulouse)の演奏でハイドンのトランペット協奏曲、ホルン協奏曲1番(Hob.VIId:3)、伝ハイドン作のホルン協奏曲(Hob.VIId:4)、ミヒャエル・ハイドン作のホルンとトロンボーンのための協奏曲の4曲を収めたアルバム。トランペットソロはティエリー・カンス(Thierry Caens)、ホルンソロはアンドレ・カザレ(André Cazalet)、トロンボーンソロはミシェル・ベッケ(Michel Becquet)。収録は1994年9月19日から21日、フランス南部のトゥールーズのカルメル会礼拝堂(Chapelle des Carmélites)でのセッション録音。レーベルは仏disques PIERRE VERANY。

正月早々どマイナーなアルバムですが、これがまた素晴らしい演奏。これだからやめられません。もちろん、このアルバムはホルンものをこよなく愛する湖国JHさんから貸していただいているもの。昨年から貸していただいておりまして年を越してしまいました。まことに申し訳ありません。

さて、奏者についてさらっておきましょう。このアルバム、解説はハイドンと曲についてのごく簡単なもののみで、奏者の情報などは名前のみでしたので、ネットでちょっと調べてみました。
指揮のアラン・モリアは1943年生まれで、パリ国立高等音楽院を卒業し、すぐにコロンヌ管弦楽団のコンサートマスターに就任します。その後もパリオペラ座管弦楽団、フランス室内管弦楽団などの奏者として活躍しますが、中でも気になるのが、ブーレーズ率いるアンサンブル・アンテルコンテンポランのメンバーだったこと。アンサンブル・アンテルコンテンポランは2013年のラ・フォル・ジュルネに来日した際にそのコンサートを生で聴きましたがカミソリのような切れ味の精緻な演奏に鳥肌がたったものです。

2013/05/05 : コンサートレポート : 【番外】ラ・フォル・ジュルネで衝撃のブーレーズライヴ

現代音楽の中でも特に演奏の難しいブーレーズの作品を完璧に演奏するアンサンブル・アンテルコンテンポランのメンバーであったということでもモグリアの手腕は素晴らしいものだったと想像できます。1977年から1991年まではバレンボイムに招かれパリ国立管弦楽団のコンサートマスターを務め、その後1992年から2002年まで、今日取り上げるアルバムのオケであるトゥールーズ室内管の音楽監督を務めました。教育者としてはパリ国立高等音楽院の弦楽器科主任教授を務め多くの弦楽器奏者を育てたそうです。こうした経歴のモグリアのコントロールするオケということで、弦の扱いの上手さが期待できるわけです。

トランペットのティエリー・カンスは1958年、フランスのディジョン生まれのトランペット奏者。彼のサイトがありましたので紹介しておきましょう。

Accueil | Thierry Caens

なんと、そこに日本語の経歴がありますのでリンクしておきましょう。

ティエリー・カンス トランペット奏者

モーリス・アンドレに師事したフランスのトランペット奏者ということですが、経歴で気になったのは映画「シラノ・ド・ベルジュラック」の音楽を担当したとのこと。昔BSの深夜枠でやっていてあまりに面白かったので通しで見ちゃった記憶があります。なんとなくご縁がある奏者ということでしょう。また、このアルバムでソロを担当しているホルンのアンドレ・カザレとトロンボーンのミッシェル・ベッケと3人でトリオを組んで演奏活動をしていたということで、このアルバム自体、気心の知れたメンバーでの演奏ということでしょう。
ホルンのアンドレ・カザレは1955年生まれのフランスのホルン奏者。カザレもアンサンブル・アンテルコンテンポランのメンバーだったということで、テクニックは折り紙つきでしょう。その後パリ管の首席ホルン奏者となっています。1985年からはパリ音楽院でホルンの教授とのこと。
ということで、このアルバムのソロはフランスの管楽器の一線級の奏者ということがわかりました。

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
とろけるようなオケ。非常に滑らかなティエリー・カンスのトランペット。録音も自然で言うことなしです。オーソドックスなタイプの演奏ですが、オケもトランペットもフランス人奏者だからか、どこか華のある演奏です。無骨さはなく響きが隅々までコントロールされた演奏。特に高音の抜けるような華やかさはフランスのオケの管楽器に共通したものでしょう。オケの方もアラン・モリアによる流石のコントロール。自然ながらかなりアクセントをつけてメリハリのある伴奏。1楽章のカデンツァではまさにカンスの華麗なトランペットが炸裂。アドルフ・ハーセスほどの突き抜けた高音や、モーリス・アンドレほどの輝かしさほどではありませんが、非常に流麗、磨き抜かれたコントロールで華やかさを醸し出しています。
2楽章のアンダンテは伸び伸びとしたカンスのトランペットに聴き惚れます。ゆったりとした伴奏に乗って孤高のトランペットという感じ。そしてフィナーレはオケの伴奏が躍動感と精緻さが同居した素晴らしいもの。流石に隅々までコントロールが行き届いています。ブーレーズに比べれば音数は一桁以上違いそうですからコントロールは容易なのでしょう、盤石の安定感。なにげにクレッシェンドの冴えなども聴かせてオケのキレの良さを印象づけます。これはなかなかの名演。

Hob.VIId:3 / Concerto per il corno [D] (1762)
序奏から爽快感炸裂。モーツァルト以上に音階が転がり、実に軽快。ホルンのアンドレ・カザレも軽々とメロディーを吹いていきます。ホルンという楽器がまるで簡単にメロディーを描けると誤解しかねないほどの軽快さ。ドイツ系のホルン奏者とは音楽の造りが異なります。こちらも非常に華やか。先ほどのトランペット協奏曲では軽快ながら程よくダイナミックだったんですが、この曲ではあえてダイナミクスを抑えて、速めのテンポで軽快感を強調しているよう。オケとホルンの軽やかさの相乗効果で程よい陶酔感。時折鳴らされる低音も軽々とした印象が悪くありません。
聴きどころの2楽章は、軽やかさを残しながらも、オケがぐっと抑えてホルンを引き立てます。ホルンは磨き抜かれた金属のはなつ光沢感を帯びた、極めて滑らかな音色。まったく不安定なところは見せず、伸び伸びと美しいメロディーを奏でていきます。オケはあえて表情を抑えているので、ホルンの艶やかな音色が引き立ちます。まさに至福の境地。アンドレ・カザレ、絶品です。カデンツァのホルンの伸びやかなことといったら例えようもありません。
フィナーレでようやくカザレのテクニックの冴えを確認。これまでも安定した演奏だったんですが、フィナーレの速いパッセージを事もなげに吹き抜いていくホルンにあらためて驚きます。やはりフランスの金管陣の優秀さは並ではありませんね。隅々までコントロールが行き渡ったホルンは見事。モグリアの伴奏も完全一体でサポート。

Hob.VIId:4 / Concerto per il corno [D] (1781) by Michael Haydn?
ミヒャエル・ハイドンの作とも言われるホルン協奏曲2番。曲想は前曲と比較すると単純になりますが、ホルンソロがあまりに見事なので、グイグイ引き寄せられてしまいます。リズミカルな伴奏に乗ったこのホルンは見事。オケの方もなにげに生気に富んだ見事な演奏ですが、それに合わせてホルンはものすごい立体感。ホルンという楽器がこれほどメリハリをつけられる楽器だったと再認識。カデンツァはあまりに見事な吹きぶりが圧巻。これは聴いていただかなければわかりませんね。
聴き進むと前曲のハイドンのホルン協奏曲よりホルンがキレているのがわかります。ちょっとホルンの神様が降りてきています。自在にホルンを操り、シンプルなメロディーを類い稀な音楽に昇華させています。
フィナーレではホルンの名演に応えて、オケも異様な立体感。先日聴いたアレグリーニのホルン三重奏曲のホルンも良かったんですが、このカザレの演奏もそれに劣らず素晴らしいもの。ちょっと鳥肌ものの超絶技巧。まったくほころびを見せず、活き活きとメロディーを置いていきます。最後のカデンツァも圧巻。いやいやスバラシイ!

このあとのミヒャエル・ハイドン作のホルンとトロンボーンのための協奏曲ですが、ヤスパー・デ・ワール盤でも触れたとおり、なかなか面白い曲。ホルンとトロンボーンのえも言われぬ掛け合いが実に興味深い曲。

2014/05/02 : ハイドン–協奏曲 : ヤスパー・デ・ワール/コンセルトヘボウ室内管のホルン協奏曲(ハイドン)

ここではトロンボーン奏者のミシェル・ベッケの見事なトロンボーンが味わえます。2楽章構成ですが、2楽章は躍動感あふれる旋律の中でホルンとトロンボーンの音色の微妙な違いに耳が釘付けになります。こちらもおすすめ。

このアルバム、調べたところなかなか入手は容易ではなさそう。私もこの素晴らしさを聴いて、ぜひ手元に置いておきたいものですが、中古を丹念に探すほかなさそうです。オケでもフランスの金管は優秀と言われていますが、このアルバムを聴くとまさにそのとおり。このような名演盤は是非入手可能な状態にしておいてほしいものです。音楽好きな方には絶対のオススメ盤です。もちろん評価は全曲[+++++]といたします。

なかなかレビュー頻度を上げられておりませんが、今年もお付き合いのほどをよろしくお願いいたします。いつもながらですが、ツッコミ、叱咤、激励などいつでも受付中でございます。本年のよろしくお願いいたします。

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2 Comments

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sifare

寒中お見舞い申し上げます

良いお正月をお迎えになられたとのこと嬉しく思います。

昨年は私方不幸が相次ぎ、命の在り方を更に深く考えさせられる年になりました。毎日の生活はでも進んでいきますので心穏やかに日々を過ごせたらと思っております。

Daisyさんのブログでハイドンの演奏に触れることがそんな日常のほっとした一こまです。今年もダム探検記、いやいや(^-^)雄大なハイドンのレビューを楽しみにしています。

寒い毎日ですのでご自愛くださいね~

Daisy

Re: 寒中お見舞い申し上げます

sifareさん、今年もよろしくお願いします。

いろいろ大変な年末を過ごされたようですね。お察しいたします。
そうした中でも少しでも気がまぎれる時間は貴重ですね。音楽が癒しになればと思います。

>今年もダム探検記、いやいや(^-^)雄大なハイドンのレビューを楽しみにしています

ご期待に添えるよう、ダム探しときます(笑)

こちらもsifareさんの楽しいツッコミが励みです。今年もよろしくお願いいたします。

  • 2015/01/09 (Fri) 07:31
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