作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

パスカル四重奏団の「五度」(ハイドン)

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本日はなんとなく古い演奏を聴きたくなって取り出したアルバム。

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パスカル四重奏団(Quatuor Pascal)の演奏による、バッハのフーガの技法よりコントラプンクトゥスNo.1、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76のNo.2「五度」、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第3番Op.18-3、同じくベートーヴェンの弦楽四重奏のための大フーガOp.133の4曲を収めたアルバム。ハイドンの収録は1948年。レーベルは原盤はEMIですが、今日取り上げるアルバムは新星堂が復刻している「フランスの弦楽四重奏団ー名演の遺産1928-1956」というシリーズの第17巻。

このアルバムはしばらく前にディスクユニオンで発見したもの。調べてみると2000年に新星堂がフランスの弦楽四重奏団というシリーズで全20枚にわたってリリースされたなかの1枚。このシリーズの存在は知ってはいましたが、手に入れるのははじめてのこと。ライナーノーツには弦楽四重奏に詳しい幸松肇さんによる「フランスに於ける弦楽四重奏小史」と題された記事が添えられており、近代弦楽四重奏の発展におけるフランス系の弦楽四重奏団の役割などが詳しく書かれた貴重なもの。

ライナーノーツによれば、パスカル四重奏団は、ヴィオラ奏者のレオン・パスカルがマルセイユで1941年に設立したクァルテット。当初パスカル四重奏団と名乗っていたものの、その後フランス国立放送管弦楽団に所属して、1944年からR.D.F弦楽四重奏団、1945年からはO.R.T.F.弦楽四重奏団という名称となったということですが一般には当初のパスカル四重奏団という名で知られていたとのこと。レオン・パスカルは1899年、モンペリエ生まれのヴィオラ奏者。1919年から自身を含む3兄弟によるパスカル四重奏団として活動し、その後マルセル・シャイー四重奏団、カルヴェ四重奏団などで活動。1941年、ヴァイオリンのジャック・デュモンに呼びかけパスカル四重奏団を結成し、1960年まで活動を続けました。メンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:ジャック・デュモン(Jacques Dumont)
第2ヴァイオリン:モーリス・クリュー(Maurice Crut)
ヴィオラ:レオン・パスカル(Léon Pascal)
チェロ:ロベール・サル(Robert Salles)

解説によれば、第1ヴァイオリンのジャック・デュモンの軽快極まるボウイングに対比される重量豊かなボウイングの妙味、即興的フレージングなど、悪魔的ともいえるほどの魅力が潜んでいることが特徴とのこと。いやいや悪魔的とまで書かれてはその演奏に興味をそそられるところです。

Hob.III:76 / String Quartet Op.76 No.2 "Quintenquartetett" 「五度」 [d] (1797)
バッハの小曲のまさに悪魔的な演奏に続いてハイドンの名曲「五度」。SP原盤ということで心地よい針音に乗ってアンサンブルが聴きなれた五度のメロディーを奏でていきます。アンサンブルの精度はそれなりですが、冒頭からかなりせめぎ合う緊密なやりとり。速めのリズムに乗って、第1ヴァイオリンのジャック・デュモンはかなり自在な弓使い。1948年の録音というのが信じがたい鮮明さでかなり踏み込んだ演奏。しなやかではありますが、各奏者がクッキリとメロディーにメリハリをつけながら、アンサンブルとしてもかなりの緊張感を孕みながら、音を重ねていきます。カペー四重奏団のような古き良きスタイルとは異なり、演奏スタイルは古さを感じさせません。速めのテンポでグイグイ攻めていくからでしょうか。
2楽章もテンポは速めでサクサクと進めますが、メロディは妙に色っぽく、速さからすると十二分に表情は豊か。こうした演奏スタイルは現代ではほとんど聴かれなくなってしまっています。この濃いニュアンスこそフランスのクァルテットの真骨頂でしょうか。
メヌエットは逆に直裁さを表現しようということか、ボウイングも素直で堂々としたもの。楽章間の対比がかなり明確に表現されています。そしてフィナーレは再び速いテンポながら濃いめの表情に戻ります。タッチの軽やかさで聴かせる部分のキレはなかなかのもの。そして濃いめの表情との対比は言うなれば悪魔的。モーツァルトのデモーニッシュさとは異なり、天才肌のジャック・デュモンの妙技の冴えを評しての言葉ということでしょう。

いまから60年以上前に録音されたハイドンの五度。鮮明な録音で聴く現代のクァルテットとは異なり、精緻さは求められない代わりに表現の濃さこそが聴きどころとされた時代の貴重な録音です。この演奏、数多の演奏のなかから60年以上の歳月を超えて聴き継がれる理由のある演奏でしょう。ポルタメントを効かせた古き良き時代のハイドンとは異なり、このクァルテッットにしか奏でられない艶やかかつキレの良い妙技を尽くした音楽を聴くことができます。偉大な個性を聴くと言う意味で聴きつづけられるべき演奏でしょう。評価は[++++]とします。やはりクァルテットを聴きこんだベテラン向けの演奏です。

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