ファビオ・チオフィーニ/アッカデミア・ヘルマンスのスタバト・マーテル(ハイドン)
実に久々の声楽曲。

TOWER RECORDS
ファビオ・チオフィーニ(Fabio Ciofini)指揮のアッカデミア・ヘルマンス(Accademia Hermans)、コーロ・カンティクム・ノウム(Coro Canticumu Novum)の合唱でハイドンの「スタバト・マーテル」、リベラ・メ・ドミネ(Hob.XXIIb:1)の2曲を収めたアルバム。収録は2013年7月2日から4日、イタリア、ペルージャの西のソロメオ(Solomeo)という街の聖バルトロメオ教会(Chiesa San Bartolomeo)でのセッション録音。レーベルはイタリアミラノのLA BOTTEGA DISCANTICA。
しばらく声楽曲、特にミサ系から遠ざかっていました。年末が近づいてきたので、年の瀬にふさわしいなにかいい曲をと思って取り上げたのがこちら。ハイドンのスタバト・マーテルですが、この曲の作曲に至るには特別な経緯がありました。ハイドン自身が大病から治癒したことに感謝して書いた、感謝と癒しに満ちた音楽。そのあたりについては以前の記事をご参照ください。
2010/12/19 : ハイドン–声楽曲 : 【年末企画】ミシェル・コルボのスタバト・マーテル
前記事は2010年の年末企画として取り上げたもの。もう4年も経ったことになります。
演奏者に触れておきましょう。ファビオ・チオフィーニは、イタリアのオルガン奏者、指揮者。イタリア、ペルージャ音楽院でオルガン、ピアノ、フォルテピアノを学んだのち、アルムテルダムのスヴェーリンク音楽院に渡ってオルガンの勉強を続け、大学院では古楽を学びます。1995年にはペルージャの南にあるテルニ近郊のコッレシポリ(Collescipoli)にある1678年製の歴史的バロックオルガン、W. Hermansの奏者に任命されます。以来オルガン奏者としてヨーロッパで活躍し、またアッカデミア・ヘルマンスを創設し指揮活動も開始します。彼のサイトがありますので詳しくはそちらをご覧ください。これまでにかなりのアルバムをリリースしており、このスタバト・マーテルが最新盤です。
Fabio Ciofini
ソロは以下のとおり。
ソプラノ:マルタ・マシュー(Marta Mathéu)
メゾ・ソプラノ:グロリア・バンディテッリ(Gloria Banditelli)
テノール:ミルコ・グァダニーニ(Mirko Guadagnini)
バス:セルジオ・フォレスティ(Sergio Foresti)
Hob.XXbis / "Stabat Mater" 「スタバト・マーテル」 [g] (1767)
かなり豊かな残響を伴う録音。心地よく教会堂全体に響きわたる古楽器オケ。程よく遠方にオケが定位し、歌手はクッキリとその前に浮かび上がります。オケの後方に大河のように流れるコーラス。残響が豊かといっても最新の録音だけにそれなりに鮮明で、まるで部屋が教会堂になったようなリアリティもあります。チオフィーニはオケを自然な流れに逆らわせず、一貫してゆったりとした音楽を作っていきます。この音楽が感謝の音楽だということを踏まえてか、踏み込んだ表現は見せず、自然さを失わない範囲で音楽の緩急をつけていきます。まるで教会の残響をチオフィーニ自身が楽しんでいるような響きを活かした演奏。歌手は有名どころではありませんが、皆粒のそろった張りのある明るい声質で、非常に安定した歌唱。しなやかなオケからクッキリ浮かび上がり、古楽器オケとあわせるにしては普通にヴィブラートをかけて、朗々と歌います。ソプラノのマルタ・マシューは透き通るような高音の響きが爽やか。テノールのミルコ・グァダニーニはキリリと引き締まった若々しい伸びのある声質。メゾソプラノのグロリア・バンディテッリはふくよかに響く色気のある余韻の美しい声。そしてバスのセルジオ・フォレスティはエッジが立った切れ味の鋭い声。おそらくチオフィーニが相当緻密にコントロールしているのでしょう、オケもコーラスもソロも抜群のリズム感で水も漏らさぬ緊密なアンサンブル。そして作られる音楽は自然そのものと完璧な演奏。全13曲のスタバト・マーテル、曲が進むにつれてグイグイ彼らの音楽に惹きつけられていきます。誠実さ、敬虔さの吐露のような音楽。豊かな響きの中でしなやかな古楽器の響きと大河のようなコーラスの織りなす綾に包まれるよう。最後の曲のフーガの波にもまれながら陶酔。
Hob.XXIIb:1 / Responsorium "Libera me" 「リベラ・メ」 [d] (c.1790)
スタバト・マーテルがシュトルム・ウント・ドラング期の曲だったのに対し、このリベラ・メはだいぶ後の1990年ごろの曲。大宮真琴さんの「新版ハイドン」によれば1966年、ロビンス・ランドンがアイゼンシュタットのプファール教会で発見したもので、ニコラウス・エステルハージ侯の夫人、マリ・エリザべトの葬儀(1990年2月25日)のために書かれたものと考えられているとのこと。リベラ・メとは「我を救いたまえ」の意で、葬儀や埋葬に際して歌われる曲。このアルバムの他にはブルーノ・ヴァイル盤しか手元になく貴重な録音です。ヴァイル盤もこの機会に聴き直してみましたが、豊かな響きとしなやかな表情でチオフィーニ盤の方がオススメです。
久々の教会音楽。年末はなんとなくこういう音楽が恋しくなる心境です。このファビオ・チオフィーニ盤、宗教音楽の真髄を突く素晴らしい演奏です。広々とした教会の空間いっぱいに癒しに満ちた音楽が響き渡り、一貫してゆったりとした心持ちでハイドンの曲を描いていきます。小手先の表現は一切なく、大きな流れと自然な起伏を大切にし、じわりと心に響く音楽になっています。意外に歌手も粒ぞろい。そしてオケもコーラスも淀みない自然さを表現できるテクニックを持ち合わせています。久々に心洗われる音楽でした。評価はもちろん両曲とも[+++++]とします。
いやいや、ふと大事なことに気付きました。それは次の記事で。

ファビオ・チオフィーニ(Fabio Ciofini)指揮のアッカデミア・ヘルマンス(Accademia Hermans)、コーロ・カンティクム・ノウム(Coro Canticumu Novum)の合唱でハイドンの「スタバト・マーテル」、リベラ・メ・ドミネ(Hob.XXIIb:1)の2曲を収めたアルバム。収録は2013年7月2日から4日、イタリア、ペルージャの西のソロメオ(Solomeo)という街の聖バルトロメオ教会(Chiesa San Bartolomeo)でのセッション録音。レーベルはイタリアミラノのLA BOTTEGA DISCANTICA。
しばらく声楽曲、特にミサ系から遠ざかっていました。年末が近づいてきたので、年の瀬にふさわしいなにかいい曲をと思って取り上げたのがこちら。ハイドンのスタバト・マーテルですが、この曲の作曲に至るには特別な経緯がありました。ハイドン自身が大病から治癒したことに感謝して書いた、感謝と癒しに満ちた音楽。そのあたりについては以前の記事をご参照ください。
2010/12/19 : ハイドン–声楽曲 : 【年末企画】ミシェル・コルボのスタバト・マーテル
前記事は2010年の年末企画として取り上げたもの。もう4年も経ったことになります。
演奏者に触れておきましょう。ファビオ・チオフィーニは、イタリアのオルガン奏者、指揮者。イタリア、ペルージャ音楽院でオルガン、ピアノ、フォルテピアノを学んだのち、アルムテルダムのスヴェーリンク音楽院に渡ってオルガンの勉強を続け、大学院では古楽を学びます。1995年にはペルージャの南にあるテルニ近郊のコッレシポリ(Collescipoli)にある1678年製の歴史的バロックオルガン、W. Hermansの奏者に任命されます。以来オルガン奏者としてヨーロッパで活躍し、またアッカデミア・ヘルマンスを創設し指揮活動も開始します。彼のサイトがありますので詳しくはそちらをご覧ください。これまでにかなりのアルバムをリリースしており、このスタバト・マーテルが最新盤です。
Fabio Ciofini
ソロは以下のとおり。
ソプラノ:マルタ・マシュー(Marta Mathéu)
メゾ・ソプラノ:グロリア・バンディテッリ(Gloria Banditelli)
テノール:ミルコ・グァダニーニ(Mirko Guadagnini)
バス:セルジオ・フォレスティ(Sergio Foresti)
Hob.XXbis / "Stabat Mater" 「スタバト・マーテル」 [g] (1767)
かなり豊かな残響を伴う録音。心地よく教会堂全体に響きわたる古楽器オケ。程よく遠方にオケが定位し、歌手はクッキリとその前に浮かび上がります。オケの後方に大河のように流れるコーラス。残響が豊かといっても最新の録音だけにそれなりに鮮明で、まるで部屋が教会堂になったようなリアリティもあります。チオフィーニはオケを自然な流れに逆らわせず、一貫してゆったりとした音楽を作っていきます。この音楽が感謝の音楽だということを踏まえてか、踏み込んだ表現は見せず、自然さを失わない範囲で音楽の緩急をつけていきます。まるで教会の残響をチオフィーニ自身が楽しんでいるような響きを活かした演奏。歌手は有名どころではありませんが、皆粒のそろった張りのある明るい声質で、非常に安定した歌唱。しなやかなオケからクッキリ浮かび上がり、古楽器オケとあわせるにしては普通にヴィブラートをかけて、朗々と歌います。ソプラノのマルタ・マシューは透き通るような高音の響きが爽やか。テノールのミルコ・グァダニーニはキリリと引き締まった若々しい伸びのある声質。メゾソプラノのグロリア・バンディテッリはふくよかに響く色気のある余韻の美しい声。そしてバスのセルジオ・フォレスティはエッジが立った切れ味の鋭い声。おそらくチオフィーニが相当緻密にコントロールしているのでしょう、オケもコーラスもソロも抜群のリズム感で水も漏らさぬ緊密なアンサンブル。そして作られる音楽は自然そのものと完璧な演奏。全13曲のスタバト・マーテル、曲が進むにつれてグイグイ彼らの音楽に惹きつけられていきます。誠実さ、敬虔さの吐露のような音楽。豊かな響きの中でしなやかな古楽器の響きと大河のようなコーラスの織りなす綾に包まれるよう。最後の曲のフーガの波にもまれながら陶酔。
Hob.XXIIb:1 / Responsorium "Libera me" 「リベラ・メ」 [d] (c.1790)
スタバト・マーテルがシュトルム・ウント・ドラング期の曲だったのに対し、このリベラ・メはだいぶ後の1990年ごろの曲。大宮真琴さんの「新版ハイドン」によれば1966年、ロビンス・ランドンがアイゼンシュタットのプファール教会で発見したもので、ニコラウス・エステルハージ侯の夫人、マリ・エリザべトの葬儀(1990年2月25日)のために書かれたものと考えられているとのこと。リベラ・メとは「我を救いたまえ」の意で、葬儀や埋葬に際して歌われる曲。このアルバムの他にはブルーノ・ヴァイル盤しか手元になく貴重な録音です。ヴァイル盤もこの機会に聴き直してみましたが、豊かな響きとしなやかな表情でチオフィーニ盤の方がオススメです。
久々の教会音楽。年末はなんとなくこういう音楽が恋しくなる心境です。このファビオ・チオフィーニ盤、宗教音楽の真髄を突く素晴らしい演奏です。広々とした教会の空間いっぱいに癒しに満ちた音楽が響き渡り、一貫してゆったりとした心持ちでハイドンの曲を描いていきます。小手先の表現は一切なく、大きな流れと自然な起伏を大切にし、じわりと心に響く音楽になっています。意外に歌手も粒ぞろい。そしてオケもコーラスも淀みない自然さを表現できるテクニックを持ち合わせています。久々に心洗われる音楽でした。評価はもちろん両曲とも[+++++]とします。
いやいや、ふと大事なことに気付きました。それは次の記事で。
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