作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ラ・ディヴィナ・アルモニアの協奏曲集(ハイドン)

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12月最初のアルバムは古楽器もの。聴くと幸せになる演奏です。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ロレンツォ・ギエルミ(Lorenzo Ghielmi)指揮のラ・ディヴィナ・アルモニア(La Divina Armonia)の演奏で、ハイドンのオルガン協奏曲(Hob.XVIII:2)、ヴァイオリン協奏曲(VIIa:4)、ヴァイオリン、オルガンと弦楽合奏のための協奏曲(VIII:6)、オルガン協奏曲(VIII:10)の4曲を収めたアルバム。ヴァイオリン協奏曲のヴァイオリンはステーファノ・バルネスキ(Stefano Barnesch)。収録はイタリア北部のロンバルディア州ソンドリオ県ヴァッレ・ディ・コロリーナにある聖囚人聖堂でのセッション録音。レーベルはベルギーのpassacaille。

このアルバムはTOWER RECORDS新宿店で先日手に入れたもの。ネットでは国内盤と輸入盤がありますが、国内盤は輸入盤にマーキュリーが和訳解説をつけてパッケージしたものですので、実質は同じもので、日本語解説の有無のみの違いです。ちなみに私はマーキュリーのものは国内仕様を買うことにしています。少々値段は上がりますが、こうして丁寧に国内向けに地道な仕事をしてくれる会社を応援したいからという趣旨です。ちなみに国内盤に起こしたものはなんとなくアルバムから香る雰囲気まで抜けてしまうような気がしてイマイチ好きになれませんので、こうして輸入盤に国内向けの解説をつけてくれるだけでも十分であり、十分というより、これがベストだと思います。

普段は輸入盤でも英語の解説やネットの情報をコツコツ調べて記事にしていますので、日本語の解説、しかも輸入盤の解説そのものの訳をつけてくれるありがたさは身にしみております(笑)

さて、せっかくなので解説からかいつまんで、奏者の情報を紹介しておきましょう。オケのラ・ディヴィナ・アルモニアはこのアルバムでオルガンと指揮を担当しているロレンツォ・ギエルミによって2005年に設立された古楽器オーケストラ。イタリアを中心に古楽器の腕利き奏者が集まったオケで、2008年以降、ヨーロッパで活躍しているそうです。なんと、昨年、2013年末には来日公演もあったそう。全く知りませんでした。
ロレンツォ・ギエルミはイタリアの古楽鍵盤奏者でオルガン奏者。1991年以来ミラノのサン・シンプリチアーノデイ聖堂のオルガンの奏者を務め、ここで1992年から94年にかけてバッハの作品の連続演奏会を開催して話題となりました。またドイツのブルーンスに関する研究書、フレスコバルディの楽譜の校訂、16~17世紀のオルガン音楽に関する記事の執筆など研究者としても活躍しています。それゆえミラノ市立音楽院での教職、バーゼルのスコラ・カントルムでオルガンの今日教授などの立場にあったそうです。日本には目白の東京カテドラルのオルガンの設置の監修を担当しています。
奏者としては先日ハイドンの第4の交響曲全集の作成に踏み切ったイル・ジャルディーノ・アルモニコの最初期のメンバーとして活躍していました。そんな中、2005年のラ・ディヴィナ・アルモニアを設立し、以後はその音楽監督として活躍しています。
ヴァイオリンのステーファノ・バネルスキはイル・ジャルディーノ・アルモニコのヴァイオリン奏者として活躍した人で、2011年からはイル・ジャルディーノ・アルモニコの音楽監督でもあるそうです。

イタリアの気鋭の古楽器奏者の集まったオケでのハイドンの協奏曲集。いかなる出来でしょうか。

Hob.XVIII:2 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [D] (before 1767)
リズミカルに響く古楽器オケの序奏。最近では珍しい一貫したリズムに乗ったノリのよいオケ。ロレンツォ・ギエルミのオルガンも小気味良いリズムに乗ってキレの良い演奏。オルガン協奏曲ではコープマンの古くはPHILIPSの録音が懐かしいところですが、最新の古楽器の録音にしては珍しいオーソドックスな演奏。リズムに素直な演奏が微笑ましくもありますが、表現は徐々に幅が広くなり、色彩感に富んだ千変万化する響き。フレーズの描きかたも丁寧で実に味わい深い音楽です。オルガン協奏曲に共通するちょっとおもちゃっぽい響きの面白さが一貫したリズムでかえって強調されるよう。1楽章も終盤になるとかなりメリハリの効いたヴァイオリンが存在感を主張。オルガンとオケのリズミカルなメロディーのやりとりが続くことでトランス状態寸前に。
2楽章のアダージョ・モルト。1楽章でトランス状態になりかけたんですが、これぞ至福の境地。オルガンの不可思議なメロディーの面白さにすぐに引き込まれます。オルガンはキレの良さばかりではなく聴かせる演奏。途中で転調するところとぐっと音程を下げるところの表現が絶妙。オルガンの低音が出切らないところにゾクゾクします。このメロディーをどうやって描いたかを考えるとハイドンのとてつもない才能に今更驚きまます。オケはすでに癒しに満ちたサポート役に徹して、渾然一体となった素晴らしい音楽に酔いしれます。
フィナーレはこれ以上軽さをうまく表現できないような、そよ風のような入りですが、すぐにリズミカルに響き古楽器の魅力に包まれます。クッキリとアクセント効かせての演奏に慣れているせいか、ラ・ディヴィナ・アルモニアのエッジを落とした柔らかな響きがやけに新鮮に感じます。しなやかな伴奏とはこのこと。フィナーレはやはりオルガンとオケのトランス状態然とした演奏を楽しみます。オルガンという楽器の魅力を万全に表現したハイドンの筆致に感嘆。変奏がドンドン進んで最後は表現が大きくなって遊園地のコーヒーカップをぐるぐる回して目が回ってしまったような陶酔感に包まれます。めくるめく音楽の快感!

Hob.VIIa:4 / Violin Concerto [G] (c.1765/70)
1曲目からノックアウトですが、頭をリセットしてヴァイオリン協奏曲に入ります。まるでハイドン遊園地で無心に遊びまわるような気分。音楽が躍動し、すべての音楽が耳に心地よく入ってきます。アーティスティックという印象ではなく、躍動する音楽が心にドンドン沁みてくる感じ。ヴァイオリンのステーファノ・バルネスキの弓裁きは自己主張ではなく、やはり遊びまわるような無邪気な音楽の面白さをストレートに表したもの。テクニックは確かで、あまりに自然なリズム感に技巧をまったく感じさせない、真のテクニシャンのよう。微笑みながら演奏を楽しんでいるような実に愉快なヴァイオリンソロ。これもギエルミの指示によるものでしょうか。実に楽しい協奏曲。カデンツァは音楽の神様にいたずら心を捧げるような自在な音楽。これほど聴いて幸せになるヴァイオリン協奏曲ははじめてです。凛々しいハイドンではなくいたずら心を素直に表すようなハイドン。
2楽章のアダージョは圧巻の出来。しなやかな音楽が天上の音楽のように響きます。ヴァイオリンの実にせつない弓裁きに聴き入りますが、オケも合わせてこちらの期待を超える浸透力で音楽をグイグイ進めていき、ただただ聴き惚れるのみ。
フィナーレは弓裁きの妙技を味わうような楽章。コープマンのリズムを超える自在な陶酔感。ヴァイオリンのテクニックも冴え渡りますが、テクニックを誇示するというよりは、あまりに見事なフレージングにテクニックを超越した音楽に到達。やはり遊びまわるような自在さにノックアウト。

Hob.XVIII:6 / Concerto per violino, cembalo e orchestra [F] (1766)
そして、名曲ヴィアオリンとオルガンのための協奏曲。演奏のスタイルは変わらず、完成度も完璧。なにより音楽の素朴な躍動に打たれっぱなし。遊びまわるようなヴァイオリンにトランス状態のようなオルガンに感極まりそうなのでレビューは中断(笑) あとは自身で聴いて楽しんで下さい! いやスバラシイ!

Hob.XVIII:10 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [C] (before 1771,1760?)
最後は録音が少ないXVIII:10。曲想が複雑になりますが、ギエルミのオルガンもオケも程よくキレて素晴らしい演奏。この曲でも一貫して音楽を楽しむスタンスは抜群です。

ロレンツォ・ギエルミ操るラ・ディヴィナ・アルモニアの演奏ですが、古楽器かどうかなどまったく問題にならない、素晴らしい音楽への没入感。ハイドンの協奏曲でこれほど楽しい演奏ははじめてです。虚心坦懐に演奏を楽しんでいるのがよくわかります。まさに聴いていて幸せになる演奏です。ギエルミは先日ハイドンの交響曲全集の第1巻をリリースしたイル・ジャルディーノ・アルモニコの初期メンバーでもあり、そのイル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏にも共通するノリの良さを持っています。現代楽器演奏のアンチテーゼとしての古楽器演奏の時代は終わり、ファイに代表される自在な表現と、この演奏に見られる表現を超えた虚心坦懐な音楽を奏でる演奏の時代に突入したのでしょう。あまりの素晴らしさにびっくりしたというのが正直なところです。もちろん評価は全曲[+++++]。皆さん、この演奏を聴いて幸せを感じて下さい!

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