作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

マッジーニ四重奏団のOp.77、Op.103(ハイドン)

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マイナー盤を巡る旅は続きます。こちらも湖国JHさんから送り込まれたアルバム。

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マッジーニ四重奏団(The Maggini Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.77のNo.1、No.2、Op.103の3曲を収めたアルバム。収録はPマークが1996年とだけ記載されています。レーベルははじめて見る英CLAUDIO RECORDS。

なにやら妖気漂うジャケットが気になります。ライナーノーツによれば、これはロンドンのテイト・ギャラリー蔵のサー・ジョシュア・レイノルズの1787年作の天使の頭部という絵とのこと。

マッジーニ四重奏団は、1988年に結成されたイギリスのクァルテット。クァルテットの名前は16世紀のイタリアのヴァイオリン製作者、ジョヴァンニ・パオロ・マッジーニに由来するそうです。イギリス音楽を得意としているようで、NAXOSからかなりの枚数のアルバムがリリースされています。ハイドンのアルバムは1996年の録音ということで、比較的早い時期の録音ということになります。調べてみると、このアルバムの他にハイドンのOP.33から3曲を録音しているようで、そのアルバムが彼らのディスコグラフィで一番古い録音のようです。これらのハイドンのアルバムの収録後、イギリス音楽の録音を重ねたという流れのようで、このアルバムの演奏は彼らの原点たる演奏といってもいいかもしれません。

このアルバム演奏当時のメンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:ローレンス・ジャクソン(Laurence Jackson)
第2ヴァイオリン:デイヴィッド・エンジェル(David Angel)
ヴィオラ:マーティン・ウートラム(Martin Outram)
チェロ:ミハウ・カズノフスキ(Michal Kaznowski)

ウェブサイトがみつかりましたので紹介しておきましょう。第1ヴァイオリンはすでに変わっていますね。

Maggini Quartet

さて、ちょっと不思議なジャケットが気になるマッジーニ四重奏団のハイドンの弦楽四重奏曲集。しかも最晩年に作曲された3曲ということで、出来はいかなるものでしょうか。

Hob.III:81 / String Quartet Op.77 No.1 [G] (1799)
快活な出だし。アンサンブルは適度に粗いものの音楽に一体感があり、悪くありません。録音はヴァイオリンの響きをうまく捉えて、多少デッド気味ながら木質系の弦の音色が美しいもの。ローレンス・ジャクソンのヴァイオリンはちょっと震えるような音色で、流麗とはいきませんが、不思議と印象に残る味のあるヴァイオリン。4人が対等に鬩ぎ合うアンサンブル。4人ともキレがいいので、アンサンブルは非常に緊密。音色の上ではチェロもかなりいい味出してます。味のある音色の演奏ですが、聴き所はタイトに攻め込むところ。まさに手に汗握るもの。意外にダイナミックレンジの広い演奏。
アダージョでは4人の呼吸をピタリと合わせながら、かなりメリハリをつけます。深淵とか、枯淡という言葉は似合わず、斧で手荒く彫り込んだ木彫のような風情。険しいわけでもなく、木肌のぬくもりも感じられる独特の表情。独特ながら音楽は確信に満ちて淀みなく、潔く流れていきます。クァルテットの演奏スタイルが鮮明なのは流石なところ。
メヌエットはキリリと鋭くグイグイ力強い音楽がが心地よい演奏。フレーズ毎のコントラストもかなり鮮明。演奏によってはくどく感じるリスクもありますが、潔さが勝っていい感じ。フィナーレも同様、タイトに攻め込みつづけてハイドンのフィナーレの複雑に絡み合うメロディーを解剖図を見るようなクッキリさで描いていきます。時折音程がふらつくところもありますが、それもいい意味で臨場感として聴かせてしまいます。1曲目から踏み込んだテンションの高い演奏。

Hob.III:82 / String Quartet Op.77 No.2 [F] (1799)
録音セッションが違うのか、音色に若干燻らしたような風味が加わります。すこし中域の柔らか味が加わり自然な響きになります。前曲のクッキリ明快な演奏スタイルに近いのですが、すこし余裕を感じるのが不思議なところ。やはり4人のアンサンブルはピタリと息が合って、音色に粗さはあるものの精度は見事です。聴き進めると前曲以上に曲の構成感にこだわり、テンポの変化とコントラストをはっきりとつけてきます。1楽章の最後はかなりテンポを落としてメリハリをつけます。
つづくメヌエットではチェロの素朴な音色がいい効果をあげています。鋭いヴァイオリンに対してチェロが柔らかくサポートしてタイトになりすぎないようにしています。
アンダンテに入ると雰囲気をガラリと変え、木質系の弦楽器の素朴な音色を楽しめと言っているような朴訥な演奏。変奏が加わり響きにタイトさが垣間見えるようになる部分もありますが、基本的にチェロの柔らかな音色に支配された幸せな音楽が流れ、ようやく終盤にクッキリとした響きが帰ってきます。
フィナーレはさざめくような気配をうまく表現しながら、クッキリとメロディーラインを描き、晴れ晴れとした表情が心地よい音楽をつくっていきます。ヴァイオリンはこの曲で一番の流麗さ。もともとテンションの高い表現でしたが、堂々とした風格が加わり曲が締まります。音色や演奏スタイルの変化を楽しめる玄人好みの演奏といっていいでしょう。

Hob.III:83 / String Quartet Op.103 [d] (before 1803)
ハイドン最後のクァルテットは気負いなくさらりサラサラした入り。リズムも練ることはなく、あっさりとした表情。必然的に4人の織りなす響きの綾に耳が集中します。適度に粗い音色がアンサンブルの面白さを際立たせているよう。中盤から持ち味であるクリアなテンションで音楽を膨らませてゆき、欲はないのに振幅の大きい音楽を作っていきます。適度に悟ったような晩年のハイドンの心境を感じさせながらも、音量を極端に抑えたところをもうけてクッキリコントラストをつけて曲の深みを表現しています。
最後のメヌエットは絶筆の楽章ですが、ハイドンに残された創意のエネルギーが消えゆくような絶妙な心情を感じさせる演奏。覇気に満ちた響きと、回想するような過去への憧憬、そして印象的な間をちりばめます。オルガンを思わせる重厚な響き、クリアなヴァイオリンの響き、絶妙なスロットルコントロールなどを織り交ぜ、複雑ながら深く心に残る音楽に仕立ててきました。表現意欲の塊のような演奏ですが、不思議にくどくなく、素直に聴くことができました。

イギリスの作曲家の演奏では知られたクァルテットだと想像されますが、ハイドンの弦楽四重奏曲の演奏は知る人ぞ知る、つまり知らない人は知らない存在であるマッジーニ四重奏団の奏でるハイドンの最後の3つのクァルテット。聴き込んでみると、実に深い音楽が流れます。洗練された演奏でも、流麗でも、精緻でもありませんが、かっちりと存在感のある響きを基調とした、表現意欲に富んだ演奏でした。これはいろいろな演奏を聴きこんだ、クァルテット好きの玄人向けの演奏でしょう。私は非常に気に入りました。彼らの音楽に対する真剣な姿勢が心を打つ演奏です。評価はやはり[+++++]を進呈すべきでしょう。

手元にないOp.33のアルバム、発注しました。到着が楽しみです。

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