作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ジュリエット・ユレル/エレーヌ・クヴェールによるフルートソナタ集(ハイドン)

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涼しくなってきたので、室内楽をのんびり楽しみます。

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ジュリエット・ユレル(Juliette Hurel)のフルート、エレーヌ・クヴェール(Hélène Coubert)のピアノによる、ハイドンのフルートソナタ3曲を収めたアルバム。フルートソナタはそれぞれ弦楽四重奏曲Op.76のNo.6、Op.77のNo.1、Op.74のNo.1を編曲したもの。収録は2005年2月7日から11日、パリ11区のボン・セクール教会でのセッション録音。レーベルはHarmonia Mundi系列のZIGZAG。

このアルバムも湖国JHさんから貸していただいているもの。ハイドンのフルートソナタということで、ハイドン好きな方でも、ピンと来る人はなかなかいないでしょう。原曲は上で触れたとおり弦楽四重奏曲ですが、ハイドンの生きていた時代、フルートはアマチュア音楽家に絶大な人気のある楽器であり、そうしたフルート人気にあやかり有名曲をフルートで演奏するための編曲は相次いでいたとのことで、今日取り上げるフルートソナタもその流れで編曲出版されたものと推察されます。当ブログでもこれまでフルートソナタの演奏は一度取りあげています。フルートの流行に関する記述もありますので関連する記事も取り上げておきましょう。

2011/04/20 : ハイドン–室内楽曲 : 佐藤和美とバティックのフルートソナタ
2011/04/09 : ハイドン–室内楽曲 : 2011/04/09 : ハイドン–室内楽曲 : フルート四重奏による太陽四重奏曲

このアルバム、ジャケットからわかりませんが、奏者は美人ぞろい。敢えてアイドル系の造りにしないところにレーベルの見識を感じます(笑)

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写真左のフルートのジュリエット・ユレルははじめて聴く人。パリ国立高等音楽院でフルートと室内楽で1等を受賞した他、ダルムシュタット、神戸、ブカレスト、ジャン=ピエール・ランパルコンクールなどの国際コンクールで優勝しているそう。主にヨーロッパと日本で活動しているということで、東京都交響楽団などとも共演しているようですね。
写真右のピアノのエレーヌ・クヴェールは以前、同じZIGZAGレーベルからリリースされているピアノソナタの演奏を取りあげています。

2010/08/24 : ハイドン–ピアノソナタ : エレーヌ・クヴェールのピアノソナタ

クヴェールの情報は上の記事をご参照ください。

Hob.III:80 / String Quartet Op.76 No.6 [E flat] (1797)
落ち着き払った自然な入り。もともとの弦楽四重奏は4楽章ですが、メヌエットを省いて3楽章としています。この辺はピアノトリオが3楽章構成だったということに由来するのでしょうか。ただ弦楽四重奏のタイトな魅力はフルートとピアノという楽器に置き換わることで、華やかな響きになります。フルートもピアノも実に自然な響き。HMV ONLINEの情報によれば、楽器はフルートがベーム式木製フルート、ピアノは1903年製エラール・ピアノということで、現代楽器よりは少々素朴な響きに聴こえます。女性奏者らしい自然な鮮度の高さを感じさせる演奏。特にクヴェールのピアノの弱音部の美しい響きはぐっと来ます。現代楽器とフォルテピアノいいところを合わせたようなデリケートな響き。無理に楽器を鳴らさず、控え目に響かせることで、心地よい響きが生まれます。残響を多めに録った録音も響きの良さを引き立てています。クァルテットのように音楽に正対して聴くというより、のんびりと楽しむように促されます。
2楽章に入ると穏やかな響きと余韻が一層しなやかになり、原曲とは異なる魅力を発散します。今度はユレルのフルートが艶やかに歌います。ユレルも弱音のコントロールが実に繊細。ゆったりと流れる音楽に引き込まれ、我を忘れるよう。
フィナーレでは2人のアンサンブルの正確さにあらためて気づかされます。セッション録音とはいえ、このリズムの刻みの見事さは流石。特にユレルのフルートの音階のキレの良さはトランス状態になりそうなほど。2人とも腕利きぞろいであることがわかります。軽さとキレはハイドンのフィナーレのポイントです。1曲目から脱帽です。

Hob.III:81 / String Quartet Op.77 No.1 [G] (1799)
聴き慣れたメロディーがフルートピアノにによって新鮮に響きます。弦楽器のストイックな印象とは異なり、フルートピアノの転がるように艶やかな響きがこの曲にはより合う感じ。音量を上げて聴くと、広い空間で2人がのびのびと演奏しているようすが手に取るように伝わります。すっと抑える部分が実に効果的。非常に緻密なデュナーミクのコントロール。ユレルはクヴェールのピアノ伴奏に安心して乗っているようで、2人の息の合った演奏は実に魅力的。ハイドンの創意の真髄に近づくというよりはハイドンの美しいメロディーを存分に楽しんでいるよう。これも音楽、これも再現といっていいでしょう。
アダージョは前曲同様、音楽が美しい響きに溶け込み、幸せに包まれるよう。ユレルの緊張感は途切れず、キレ味鋭いまま。ゆったりとした音楽ですが起伏は大きく迫力もかなりのもの。ここから生まれる音楽の価値を知れと言われているよう。
フィナーレはまさに転がるように進む音楽。

Hob.III:72 / String Quartet Op.74 No.1 [C] (1793)
最後の曲はこの2人の演奏に馴れた耳で聴きます。曲ごとのアプローチの差はなく、どの曲もじっくり噛み砕いて取りあげますので、聴く方も安心して身を任せることができます。フルートもピアノもキレ味は変わらず、どんな曲がこようとも揺るぎない姿勢で望もうとの気合いを感じます。まるでこれが原曲であるが如き説得力があります。2楽章は曲想がソロの部分が多い分、孤高の表情も聴かれこのアルバムの白眉といった印象。それぞれの楽器のソロのような完成度。フィナーレに入ってハッとしますが、まさに自分の部屋に2人奏者が来て演奏しているようなリアリティ。この臨場感はリアルな録音によって感じられるもの。研ぎすまされた奏者の息吹を至近距離で浴びるような素晴しい録音です。

3曲とも素晴しい安定感で、ムラは皆無。この緊張感の持続は素晴しいものがあります。自宅が響きの良いホールになったような錯覚さえ感じさせる素晴しいリアリティ。ジュリエット・ユレルとエレーヌ・クヴェールという美人デュオが聴かせるハイドンの名旋律。アイドル系の演奏というには完成度高過ぎで、やはり本格的な室内楽のアルバムと言っていいでしょう。ハイドンのオリジナルであるかどうかといったことは全く気にせず、音楽の面白さを純粋に楽しめる名盤といって良いでしょう。評価は全曲[+++++]と致します。

湖国JHさんも美人デュオの演奏ににんまりしていた事でしょう(笑)。室内楽好きな皆さん、オススメです。

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