作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ジョージ・セル/ボストン響97番1945年ライヴ(ハイドン)

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先日ディスクユニオンのCD-Rの棚で発見したもの。今までその存在も知らなかった演奏です。

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ジョージ・セル(George Szell)指揮のボストン交響楽団(Boston Symphony Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲97番とシューマンの交響曲2番の2曲を収めたCD-R。収録はハイドンが1945年1月26日とだけあります。レーベルはCD-Rではたまに見かけるVIBRATO。

セルのハイドンはSONY CLASSICALのセッション録音の他にライブ盤、CD-Rなどいろいろと交響曲の録音があり、当ブログでもこれまでにも度々取りあげています。

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録音の善し悪しは別として、やはり録音年代の古いもの、すなわち若い頃の演奏に漲る覇気が聴き所であり、そういう意味では今日取り上げる1945年のライヴは、手元にあるセルのハイドンの録音の中でも最も録音年代が古く、名演の期待が高まります。

セルは戦前ヨーロッパで活動していたものの、1939年のオーストラリア、アメリカへの演奏旅行中に第二次世界大戦が勃発したため、そのままアメリカに残り、トスカニーニの手引きによりNBC交響楽団の客演指揮者として活動するようになりました。その後メトロポリタン歌劇場でも指揮することになりますが、1945年のシーズンに客演したクリーブランド管弦楽団の客演が大成功を収めたため、翌1946年からクリーブランド管弦楽団の常任指揮者に就任することになります。以後1970年の万博への日本公演の直後に亡くなるまで、クリーヴランド管弦楽団と多くの録音を残していることは皆様ご存知の事でしょう。

今日取り上げる録音は、セルが手兵クリーヴランド管の常任指揮者に就任する直前、しかも大戦終結前の1945年1月のボストン響とのライヴということで、セルがアメリカで足固めしていた充実期の演奏ということになります。

Hob.I:97 / Symphony No.97 [C] (1792)
録音はモノラル。ただし図太い響きで悪くありません。LPから起こしたものと思われスクラッチノイズが聴こえます。音もすこし歪み気味でコンディションは最良とは言えないものの、脳内で録音のアラを補正して聴くと、壮年期のセルの覇気が迸ってます。97番の1楽章独特の落ち着いた表情のなかに漲る力。特にビシッとそろった鋼のような響きの弦楽セクションの迫力はかなりのもの。中盤の盛り上がりは黒光りするボディービルダーの筋骨隆々の姿のよう。1楽章は抜群のキレ。
つづくアダージョに入ると、なぜか音量が少し上がります。先程は黒光りしていた弦が、今度はしなやかに響き合い、引き締まりながらも響き合う独特の雰囲気になります。響きはデッドですが潤いがないわけではなくスクラッチノイズ以外はさほど気になりません。中間部の盛り上がりでも、落ち着き払って余裕のある演奏。セルらしい緊張感ビリビリの穏やかさ。フレーズのひとつひとつを寸分の狂いもなく克明に描いて行きます。コントロールされた静寂が見事。
メヌエットはセルの面目躍如。オケが気持ち良く鳴り響き、響きの隅々まで制御が行き渡り、リズムもしっくり落ち着いたもの。特に金管は禁欲的なまでに抑制され、オケ全体の響きのバランスを保ちます。金管奏者の緊張感が伝わるよう。晩年にスタティックな印象を残してしまったセルですが、この頃の演奏はコントロールが行き届いているのにダイナミック。
フィナーレは冒頭から力感溢れ、畳み掛けて来そうな予感がバリバリします。弦楽セクションは再び鋼のように統率され、怒濤の迫力。音量を上げると風を感じるような迫力。会場で生で聴いていたらのけぞったことでしょう。刺さるようなピチカート。規律に支配されながらも赤熱するような興奮。完全にセルのハイドン。冷徹さもダイナミックさもあり、刺さるようなキレ味を感じさせる演奏でした。最後は拍手が鳴り響きますがすぐにフェードアウトします。

ジョージ・セルがクリーブランド管の常任指揮者の地位につく直前のボストン響とのライヴ。録音のコンディションは万全でないものの、その録音を通してさえもセルの素晴しい覇気が伝わる名演奏です。鋼のような弦のキレと、オーバーコントロール寸前の規律。ハイドンの音楽がセルの手にかかると、まるで大衆車をフェラーリがチューンしてしまったような突き抜けたものになってしまいます。これもハイドンの音楽の一つの姿でしょう。この演奏、CD-Rということで録音も今ひとつですが、演奏は素晴しいものがあります。評価は[+++++]をつけましょう。セルファンの方は手に入れるべきアルバムでしょう。

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