カメラータ・ベロリネンシスの弦楽三重奏曲集(ハイドン)

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カメラータ・ベロリネンシス(Camerata Berolinensis)の演奏による、ハイドンの弦楽三重奏曲5曲(Hob.V:20、V:16、V:4、V:3、V:21)を収めたアルバム。収録は2003年10月27日から29日にかけて、ベルリンのマルティン・ルター教会でのセッション録音。レーベルははじめて見る独Musikmanufaktur Berlin。
お察しのとおり、このアルバム、いつも当方の所有盤リストにない名演盤をそっと送り込んでこられる湖国JHさんから貸していただいたもの。比較的最近リリースされたようなのでまだ手に入ります。早速聴いてみると、キビキビとした古楽器による演奏ながら、曲が進むにつれて、これぞハイドンという愉悦感に満ちたメロディーが湧き出してくる素晴しい演奏。いつもながら感服です。
はじめて聴く団体ゆえ、奏者のことを少しさらっておきましょう。メンバーは以下のとおり。
第1ヴァイオリン:ヨハネス・ゲバウアー(Johannes Gebauer)
第2ヴァイオリン:フィオナ・スティーヴンズ(Fiona Stevens)
チェロ:ウルリケ・リューベン(Ulrike Rüben)
ウェブサイトもドイツ語のみですが、ありました。
CAMERATA BEROLINENSIS Ensemble für Alte Musik auf Originalinstrumenten
創設者で音楽監督はヴァイオリンのヨハネス・ゲバウアー。イギリス、ケンブリッジのキングス・カレッジで音楽学を学び、ヴァイオリンをサイモン・スタンデイジに師事しています。1992年にはロンドンのパーセル・ルームでエドゥアルト・メルクスの公開マスタークラスに参加、94年から95年にかけて、アカデミー室内管(Academy of Ancient Music)やコレギウム・ムジクム90のメンバーとして活躍、スコラ・カントゥルム・バーゼルの大学院で学び、その後ジョシュア・リフキン率いるバッハ・アンサンブルなどで活躍しています。サイトを見ると、このカメラータ・ベロリネンシスの他に、カメジーナ四重奏団やブルーノ・ヴァイル率いるカペラ・コロニエンシスのメンバーとして四季や3枚リリースされているザロモンセットの録音に参加しているようですね。
カメラータ・ベロリネンシスとしては今日取り上げるアルバムの他に、もう一枚ハイドンの弦楽三重奏曲のアルバムがリリースされていることがわかりましたので、こちらは早速手配です(笑)
ハイドンの曲のなかでもかなりマイナーな弦楽三重奏曲集。作曲年代はまさにシュトルム・ウント・ドラング期、もしくはその直前のものと思われます。まさにハイドンの創作の最初の黄金期。曲ごとの演奏の特色を記しておきましょう。
Hob.V:20 / No.19 Divertimento for 2 Violins and Violoncello [G] (1765)
キビキビとした古楽器のヴァイオリン2本とチェロのアンサンブル。録音は近くにアンサンブルがリアルに定位する鮮明なもの。構成はアレグロ - メヌエット - プレストの3楽章構成。演奏は規律重視、恣意的ま表情の変化を抑え、古楽器の響きの魅力を前面に出した落ち着いたもの。1楽章はリズミカルに入りますが、良く聴くとアンサンブルの精度はかなりのもの。弦楽四重奏曲よりも声部が少ないためか響きはよりピュア。楽器の微妙な音の重なりの面白さ、メロディーの引き継ぎの鮮やかさが際立ちます。メリハリもクッキリ、キレのいい演奏。2楽章のメヌエットに入るといつもながらハイドンの創意に釘付けになりますが、その面白さをしっかり踏まえて、表現の幅が広がります。最後のプレストではボウイングの軽さと軽妙洒脱さが加わり、聴き応え十分です。最初の曲からしっかり引き込まれます。
Hob.V:16 / No.15 Divertimento for 2 Violins and Violoncello [C] (1766)
アレグロ - メヌエット - フィナーレ:プレストと前曲とほぼ同じ構成ですが、入りはコミカルなリズムとメロディー。弦楽器3本でこの豊穣な音楽。驚くばかりの創意です。アンサンブルは全員キリリと引き締まっていますが、ここに来てヴァイオリンのヨハネス・ゲバウアーの美しい高音が際立ちます。いい意味で他の2人が少し抑えることでメロディーラインがクリアに響きます。伴奏にまわる2人のリズムの取り方も表情豊か。3人のリズム感のキレは惚れ惚れするよう。メヌエットに入っても緩急自在なリズムのキレは健在。演奏する方が存分に楽しんでいる様子が伝わります。フィナーレに入ると気持ちよい音程のジャンプがそこここに出現。さらにノリが良くなって、ハイドンが乗り移っているような愉悦感。弦楽三重奏曲がこれほど面白いとは気づいていませんでした。
Hob.V:4 / No.4 Divertimento for 2 Violins and Violoncello [Es] (before 1767)
すでにアルバムに痺れています。構成はアレグロ - アダージョ・カンタービレ - プレストの3楽章構成。メロディーラインの面白さ、創意はどんどんアップ。こんこんと湧き出るアイデアの快感。まさに音楽的エクスタシー。このアンサンブルはハイドンの曲の面白さのツボを完全に掌握して、完璧な演奏。精緻でありながらユーモラスで、なにより楽しい雰囲気に満ちています。平日ですがモルトに手を出してしまいます。1楽章の面白さと対比を鮮明にするようなしっとりとしたアダージョ・カンタービレ。しっかりと沈みこんでゆったりとした音楽をじっくり楽しめます。控えめなチェロのサポートが絶妙。最後のプレストも予想をまったく越える展開。参りました。
Hob.V:3 / No.3 Divertimento for 2 Violins and Violoncello [h] (before 1767)
今度はアダージョ - アレグロ - デンポ・ディ・メヌエットという構成でこのアルバム唯一の短調の入り。これまでの愉悦感に満ちた音楽から一転、ゲバウアーの切々としたヴァイオリンの音色が険しく耳に刺さります。続くアレグロにもテンションが残り、険しい雰囲気から入りますが、徐々に明るさを帯びてくるようなデリケートな変化が見事。最後のメヌエットにもテンションは伝わり、妙に刺さる音楽です。
Hob.V:21 / No.22 Divertimento for 2 Violins and Violoncello [D] (1766)
最後の曲はシチリアーノ :アダージョ - アレグロ - メヌエットという構成。緩やかな付点リズムに乗った舞曲ですが、様々に交錯する和音の魅力も加わり、実に趣き深い音楽。あっさりとした表情が古典期の明解さも感じさせる絶妙のバランス。つづくアレグロはパートの絡み合いの面白さを活かしながらスリリングな音階が交錯。チェロも音階でせめぎ合い、メロディーよりも構成の面白さに表現のポイントが移っています。 最後のメヌエットは落ち着いたもの。パートごとに慈しむように淡々とした演奏が逆に音楽の純粋さを引き立てます。中間部は何奏法というのかわかりませんが、ギターで言うとハーモニクスのような音を響かせ、聴かせどころをつくります。シンプルな構成なのに実に聴き応えのある音楽。ここにもハイドンの真髄がありました。
いまいちなじみのなかった弦楽三重奏ですが、ようやく決定盤に出会った気がします。このアルバムに収められた曲の面白さは、最近気に入っているディヴェルティメントや、初期の弦楽四重奏曲同様、ハイドンの音楽の面白さがやまほど詰まった素晴しい音楽です。演奏は曲の面白さを実に自然に表現した、しかも万全のテクニックを持つ腕利き奏者による一級のもの。このアルバムはハイドンの室内楽の真髄がしっかり味わえる名盤です。評価はもちろん全曲[+++++]とします。
もう1枚リリースされているアルバムが到着するのが楽しみです!
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