作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

マルカンドレ・アムランのXVI:31ライヴ(ハイドン)

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今日はDVDです。音楽は目でも聴くとの啓示に触発されて(笑)

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

マルカンドレ・アムラン(Marc-André Hamelin)のピアノによる2007年ルール(Ruhr)ピアノ・フェスティバルでのコンサートの模様を収めたDVD。プログラムは、ハイドンのピアノソナタXVI:31、ショパンのピアノ・ソナタ第3番Op.58、ドビュッシーの前奏曲第2集など。収録は2007年6月29日、ドイツ、エッセンのフィルハーモニーでのライヴ。レーベルはEURO ARTS。

ご存知のとおり、超絶技巧で現代曲をこともなげに弾く豪腕で知られるアムランですが、ハイドンのソナタ集を3組6枚と協奏曲集をhyperionからリリースしており、ハイドンに格別の愛着をもっているようです。

2013/04/20 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】マルカンドレ・アムランのピアノ協奏曲集
2012/05/17 : ハイドン–ピアノソナタ : 【新着】マルカンドレ・アムランのピアノソナタ集3

豪腕アムランが弾くハイドンは、リヒテルのハイドンのような人を圧倒するようなダイナミックな迫力があるわけでもなく、逆に現代音楽にも通じる静かな狂気のようなものが感じられると同時に、ハイドンの音楽の展開の妙をもさりげなく表現する余裕もあり、これもハイドンのソナタの一面を表した、本質的なものとみなしています。そのアムランのコンサートの映像ということで、期待の一枚ということでしょう。

プログラムの最初におかれたハイドンは、コンサートの幕開けにふさわしい、聴衆の脳に音楽というものの刺激と奥深さを印象づける素晴しい演奏です。

Hob.XVI:31 / Piano Sonata No.46 [E] (1776 or before)
ステージ上、ピアニストの背後におかれたカメラから客席方向に向けたカメラで、拍手に迎えられ、静かに深々と礼をするアムランの姿からはじまります。静寂からこのソナタの美しいメロディーがそよ風のように鳴り始めると、いきなりホールに音楽が満ちます。いつもの峻厳さをともなったキレ味は健在。指のアクションは動きが少なくなめるようなタッチで弾き進めていきます。紡ぎ出される音楽の可憐な美しさは例えようがありません。抑えた表情のなかに青白く光る狂気の炎。非常に大きな構造の音楽のごく一部を弾いているようなアムラン特有の雰囲気も十分。客席もコンサートの1曲目からいきなり濃密な音楽に引き込まれ、静寂の中に流れる音楽に酔いしれているよう。宇宙に輝く星雲のように曇りのない美しさ際立ちます。広いホールの全聴衆の耳がアムランのタッチに釘付け。
構えなくつづくアレグレットに。淡々と進む音楽の微妙な流れの変化がアムランの表情とともに実に鮮明に撮られています。良く聴くとそこここにアクセントやレガートが織り交ぜられて、滔々と流れる音楽に変化をあたえています。あまりの完成度にライヴであることを忘れそうですが、時折混じる咳払いでこれがコンサートであることにふと気づかされます。
フィナーレに入り、一音一音の粒立ちがクリアになり、心地よいパッセージが続きます。指は軽々と音階をこなし、アムランも余裕たっぷりで速いパッセージをこなします。小気味好い音楽を終え、会場からはブラヴォーまじりの拍手が降り注ぎます。

コンサートの冒頭に取りあげられたハイドンの短いソナタですが、流石はアムラン。軽々としたタッチから生み出される音楽はハイドンのソナタのこれまでの演奏の垢をはぎ取った純粋無垢な音楽として、そして現代にも通用するシャープなシェイプに仕立てて聴かせ、響きの織りなす綾の美しさでホールの聴衆を釘付けにする演奏でした。現代最高のハイドン演奏の一つといっても過言ではないでしょう。録音用の演奏とは異なり、コンサートでのこの精緻な演奏、表面的ではなく本質的なテクニックの高さを思い知らせる素晴しい演奏です。このハイドン1曲だけでも買う価値のあるDVDです。このあとのショパン、ドビュッシー、アンコールで演奏されるガーシュインなども素晴しい演奏。オススメです。ハイドンの評価はもちろん[+++++]とします。

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2 Comments

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だまてら

No title

アムラン、良いですね!ハイぺリオン盤は、3組6枚すべてをiphoneに取り込んでいます。
なかなか通して聴く機会は無いですが・・・。
ところでこの選集、ケース裏の曲名表示が第一巻はソナタ通しNo.なのに、第二集以降は調性とホーボーケン番号になっていて、ちと判りずらいですね!アムラン氏は網羅的な全集収録については(たぶん?)興味無い人なので、第四集は期待薄そうなのが寂しいです。
もうひとつ、BAD?ニュース!フェステティチSQが廉価な19CDの全集で発売です。作品番号別に過半まで揃えてるんですが・・・。でも世間的にはGOODニュースか、それともどーでも良いニュースかな?

  • 2014/08/31 (Sun) 00:25
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Daisy

Re: No title

だまてらさん、コメントありがとうございます。
アムラン盤の曲名表記の件、言われてあらためてアルバムを見るとご指摘どおりですね(笑) 確かに一貫性がなくわかりにくいですね。ピアノソナタの場合、番号表記でもそれがホーボーケン番号だったりすることもあるため、調性も合わせて確認しないと厄介です。モーツァルトなどでも国内は番号表記が主で、海外ではケッヘル番号が主だったりといろいろですね。
さて、フェステティチの件、私も未入手盤があるのですが、隙間を埋めるか、いっそのこと全集盤を買い直すか、確かに悩ましいところです(笑)

  • 2014/09/01 (Mon) 00:20
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