【新着】トーマス・ファイ/ハイデルベルク響のの98番、太鼓連打(ハイドン)

トーマス・ファイの交響曲全集、久々の新盤です。

Fey98_103.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

トーマス・ファイ(Thomas Fey)指揮のハイデルベルク交響楽団(Heidelberger Sinfoniker)の演奏で、ハイドンの交響曲98番、103番「太鼓連打」の2曲を収めたアルバム。収録は2013年9月5日、6日、10月21日、22日、ドイツのハイデルベルク近郊にあるドッセンハイムのマルティン・ルター・ハウスでのセッション録音。レーベルはいつもどおりhänssler CLASSIC。

ご存知のとおり、ファイの交響曲集はリリースされる度にかなりの枚数とりあげています。

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全集も半ばを越え、このアルバムで22枚目。私は当初、ファイのかなり外連味のある演奏に抵抗がありましたが、聴き進むうちに、これもハイドンの醍醐味ということで、耳が馴れて、ファイの外連を楽しめるようになりました。これまでの演奏の中ではアーノンクールに近いものですが、アーノンクールが形式的に聴こえるほどに、曲ごとに変幻自在の演奏を聴かせ、聴くものを飽きさせません。そして今回は太鼓連打に98番と、ファイがどのような演奏をしてくるか興味津々といったところでしょう。

前置きはほどほどにして、早速レビューに入りましょう。

Hob.I:98 / Symphony No.98 [B flat] (1792)
ファイのこのシリーズ、不思議と一枚一枚録音会場が異なり、このアルバムも最近のレビューではNo.15のアルバムで使ったマルティン・ルター・ハウスでの録音。かなり響きを抑えた直接音重視の録音で、迫力重視。ヴォリュームを上げると間近にオケが定位するかなり鮮明な録音。98番の冒頭のゴリゴリした展開、まさにオケによってゴリゴリ鳴らされていきます。奏者の演奏は若干粗く、冒頭は音程が若干不安定なところもあるスリリングな演奏。ただしこれはファイの確信犯的演出かもしれません。曲が進むにつれて、徐々にフォーカスが合ってきて、起伏に富んだハイドンの旋律をファイのえぐるような露骨な響きで構成していきます。灰汁の濃いリズムと短く切った金管による縁取りが効いて、旋律は迫力十分。
続くアダージョは過度にさらりとしたテイストで入ります。曲の構造を浮かび上がらせようとしているのか、サラサラとしたテイストながら徐々に起伏がクッキリさせ、迫力を増して行きます。途中で音量をぐっと落として静寂を巧く使った演出。ハイドンの書いたメロディーの巧みな設計が引き立ちます。
メヌエットは一層さらりとしたテイスト。もちろんそれなりの迫力で、なかなかスペクタクルな演奏なんですが、もうひとキレ欲しいと思うの私だけしょうか? そして間をおかずフィナーレに突入。ザクザクとオケを鳴らして、聴き慣れた旋律ですがファイ流に迫力と新鮮味を加えて進めます。オケの鳴らし方がいつもの閃きを感じさせるかといえば、若干一本調子に聴こえなくもありません。曲に対するアプローチにいつものキレがちょっと欠けているでしょうか。誰が聴いてもファイの演奏とはすぐにわかる特徴をもっていますが、ここでももうひとキレ欲しいと思わせてしまいます。最後のクライマックスへの盛り上げ方は流石。ハイドンが仕組んだ最後のフォルテピアノによるメロディーの演出も上手いんですが、フォルテピアノだけが近くに定位する不思議な録音。最後にビシッと締まりますが、ファイにはもう一段のキレっぷりを期待してしまうのが正直なところです。

Hob.I:103 / Symphony No.103 "Mit dem Paukenwirbel" 「太鼓連打」 [E flat] (1795)
続いて太鼓連打。もちろんオーソドックスな遠雷タイプの太鼓ではありませんが、それほど変化に富んだ太鼓でもありません。意外に穏やかにきました。こちらの曲は冒頭から緊張感が支配する演奏。厳かさと前衛的な感じが拮抗する序奏。主題に入るとエネルギーが満ちて、覇気が迸る演奏。ファイの面目躍如。聴き慣れたメロディーですが、ファイによる斬新なメリハリで曲に生気が漲ります。1楽章の終わりの太鼓はなんと普通の遠雷タイプ。オケも乗っているのか1楽章は素晴しい充実ぶり。
2楽章は前曲同様さらりとした練らない入り。徐々にリズムがクッキリと浮かび上がり、木管によるテーマもかなり浮き立たせてクッキリとしたわかりやすい演奏。途中から副旋律を目立たせて今度はメロディーの絡みあうようすを強調するよう。このへんの細かい演出はファイならではでしょう。テンポや強弱などもずいぶん動かしていくので、こちらも集中力が途切れません。なかなか聴かせますね。展開部の怒濤の迫力と静寂の対比を繰り返して終盤に至るところは聴き応え十分。
前曲とは異なりメヌエットもキレてます。オケに力が漲り、フレーズのひとつひとつが弾みます。アクセントとレガートを巧みに使い分けて旋律を立体的に浮かび上がらせていきます。中間部のユーモラスな旋律もちょっと普通では思いつかない変わった演出。
フィナーレは敢えてレガートを効かせた抑えた入り。爆発を際立たせようということでしょうか。主題に入るとコラールのような荘厳さを思わせる演奏。この抑えた表現からぐぐぐっと沸き上がってくるようなオケの迫力は痛快。このフィナーレはまさにファイならではのユニークな演出。これは聴いていただかなくてはわかりませんね。擦るようにように奏でられる弦のモチーフのなかからオケの大音量が沸き上がってくる快感。独特の表情の効果抜群。最後は期待通り灰汁の強いクライマックスにもちこんで盛り上げます。

さてさて、毎度楽しみにしているファイのハイドンの交響曲シリーズですが、今回のアルバムは98番に太鼓連打という玄人好みの選曲。特に太鼓連打はファイがどう来るか特に楽しみにしていた曲です。アルバムのジャケット写真は譜面を見ながらヘッドフォンで録音をチェックしているようなファイの姿が写っていますが、その表情には若干迷いもありそうな印象。このアルバム、98番は1楽章こそ抜群のメリハリで入ったものの、以降にいつものファイの閃きが聴かれず、若干迷いを含んでいるよう。まさに98番のテイクを聴いている写真ではと邪推しています。一方太鼓連打はファイの面目躍如。冒頭の太鼓をどう鳴らすかというような野次馬的聴衆の感心を見事に裏切り、曲自体をファイにしかできない演出で聴かせてくるあたり、流石と言わざるを得ません。評価は98番を[++++]、太鼓連打は[+++++]とします。

シリーズを追いかけている方、今回ももちろん買いです(笑)

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tag : 交響曲98番 太鼓連打

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Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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