作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ディヴェルティメント・ザルツブルクのディヴェルティメント集(ハイドン)

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今日は好きなディヴェルティメント集。

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ディヴェルティメント・ザルツブルク(Divertimento Salzburg)の演奏による、ハイドンのディヴェルティメント3曲(Hob.II:11、II:16、II:22)とマーティン・ハーゼルベックがオルガンソロをつとめたクラヴィーア協奏曲(Hob.XVIII:10)、それにアンネグレート・ディートリヒセンのヴァイオリンソロが加わったクラヴィーアとヴァイオリンのための協奏曲(Hob.XVIII:6)の5曲を収めたアルバム。ディヴェルティメントの収録は1982年2月27日、3月2日、オーストリア放送ザルツブルクスタジオでのセッション録音。協奏曲2曲は1982年6月11日から12日にかけて、オーストリア東部のシュッツェン・アム・ゲビルゲという街の教会でのセッション録音です。レーベルは独ORFEO。

このマイナーなアルバムは、マイナー盤好きな当方の所有盤リストにない、特にマイナーなアルバムを選りすぐって貸していただく湖国JHさんから送り込まれたもの。いつもながら、送り込まれるアルバムの素晴らしさは折り紙付き。

ディヴェルティメント・ザルツブルクは1978年、このアルバムの協奏曲でヴァイオリンソロを弾いているアンネグレート・ディートリヒセンが設立した室内楽アンサンブル。メンバーはザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団のメンバーが中心で、オーストリアでも最も早くから古楽器演奏に取り組んだ団体の一つということです。レパートリーはモーツァルト、ハイドン、ベートーヴェン、シューベルトなどの室内楽曲ということです。
オルガンを弾くマーティン・ハーゼルベックはおなじみでしょう。当ブログでも過去に同じくORFEOへのこのアルバムと同時期に録音されたオルガン協奏曲集などを一度取りあげています。

2012/12/14 : ハイドン–協奏曲 : マーティン・ハーゼルベック/ディヴェルティメント・ザルツブルクのオルガン協奏曲集
2012/12/11 : ハイドン–声楽曲 : ウィーン少年合唱団/ウィーン響の大小オルガンミサ

特にオルガン協奏曲のアルバムはオケも同じディヴェルティメント・ザルツブルク。ハーゼルベックの略歴などはそちらの記事をご参照ください。

ということで、今日取り上げるアルバムはハーゼルベック得意のオルガン協奏曲のみならず、ディヴェルティメント・ザルツブルクによる文字通りディヴェルティメントに存在価値がかかっている訳です。一般的には地味な存在であるディヴェルティメントですが、ハイドン好きな皆さんは、このゆったりとした音楽の楽しみを知っているので、このアルバムへの興味も尽きないはず。ディヴェルティメントを中心にレビューいたしましょう!

Hob.II:11 / Divertimento "Der Geburtstag" 「誕生日」(6 Qurtette fur Flote, Violine, Viola und Violincello Op.5 Nr.6) [C] (c.1763)
プレスト-アンダンテ-メヌエット-フィナーレの4楽章。2楽章は「夫婦」と名付けられ、「誕生日」という呼称とともに古い筆写譜に記載されていたとのこと。最近聴き慣れたメロディーから入りますが、テンポはゆっくり。噛み締めるようにじっくりとした入りが録音年代を物語ります。古楽器の演奏ではありますが、音を聴く限りそうは感じません。2楽章はユーモラスなメロディーの面白さを誇張するように表情をつけていきます。そして3楽章のメヌエットも一貫してゆったりとしたテンポで濃い表情。フィナーレの変奏曲に入っても屈託なくメロディーラインの面白さを描いて行きます。良く聴くと音量的なメリハリや構成よりも、メロディーをしっかり描いて行くことに集中しているよう。次々に楽器を変えてメロディーを受け継いでいくあたりは、スリリングではなく確実なバトンリレーを見せられているよう。ディヴェルティメントとはこう演奏するものとのメッセージのようでもあります。奏者の愉悦感が伝わってくるような躍動感。変奏が進むにつれて音楽にグイグイ引き込まれていきます。最後の高揚感も素晴しいものがあります。

Hob.XVIII:10 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [C] (before 1771,1760?)
録音に若干古めかしい響きを感じますが、すぐに、やはりゆったりとしながらもがっちりと堅固な音楽の魅力に引き込まれます。ハーゼルベックのオルガンソロは、以前聴いたアルバム同様、キレキレ。オルガンと言う楽器独特の音色の魅力が立ちのぼります。バリトントリオ同様、音色のもつ神秘的な響きにトランス状態に引き込まれそう。テンポが落ち着いている分、メロディーと音色の魅力が引き立ちます。ディヴェルティメントもそうでしたが、このアルバムの演奏、テンポの変化は極力抑えることで、メロディーのもつ魅力にピシッとフォーカスがあたります。2楽章のアダージョもじっくりとした表情づけで音楽の面白さが際立ちます。敢えて構成の変化やダイナミクスを抑えているようです。フィナーレも同様。この演奏を聴いてこうしたアプローチの有効性に気づかされました。実に雄弁な音楽。少し古いスタイルとは思いますが、音楽の濃さはそれを越えた価値をもつように感じます。

Hob.II:16 / Divertimento [F] (1760)
再びディヴェルティメント。この曲は録音が少ないので貴重。手元には他にマンフレッド・フス盤くらいしかありません。リラ・オルガニザータ協奏曲のようなオモチャっぽい推進力のある響きが特徴。すでにディヴェルティメント・ザルツブルクのスタイルに馴れてきていますので、じっくりと奏でられる彼らの音楽がすっと耳に入ってきます。この曲はアレグロ-メヌエット-アダージョ-メヌエット-フィナーレと5楽章構成。音楽の濃さは相変わらずで、特にアダージョのゆったりとした美しさは出色。このアルバムの中では珍しく抑えた表現を上手く挟んでいます。後半のメヌエットは木管とホルンによるコミカルな表情がいい味をだしています。フィナーレは2本のホルンが活躍。えも言われぬ感興。曲調からか、この曲では表現を極めるというより演奏を楽しむ感じで、いい意味で楽天的な印象です。これがディヴェルティメント本来の姿でしょう。

Hob.XVIII:6 / Concerto per violino, cembalo e orchestra [F] (1766)
好きな曲。オルガンとヴァイオリンの掛け合いとともに、独特の高揚感のある曲です。ハーゼルベックのオルガンはまたしてもキレキレ。ディートリヒセンのヴァイオリンは燻らしたような味のある音色が特徴。やはり全体に落ち着いたテンポで、じっくりと曲を描いていきます。演奏をリードするのはハーゼルベックのオルガンで、ヴァイオリンは伴奏のようにオルガンに付き従うスタイル。1楽章の祝祭感と高揚感はハーゼルベックのオルガンによるもの。
アダージョは夜空の星のきらめきのような美しい曲ですが、研ぎすまされた美しさというよりは、等身大の音楽の美しさで聴かせる感じ。主役はやはりハーゼルベックのオルガン。よく聴くとオルガンの表情の多彩さに気づきます。ヴァイオリンソロとオケがうまく寄り添ってオルガンの奏でるメロディーに変化をつけていくよう。
フィナーレはかなり力を抜いて流すような演奏。今度はヴァイオリンとオケが少し前に出てきてオルガンより先にメロディーを置いて行きます。だんだんオルガン、ヴァイオリン、オケが溶け合うように高揚して終了。

Hob.II:22 / Divertimento [D] (1760-62)
最後のディヴェルティメント。プレスト-メヌエット-ラルゴ・カンタービレ-メヌエット-フィナーレの5楽章構成。やはり2本のホルンの音色が独特の表情。ホルンの響きが加わることで音楽がこれほど豊かになるとは、ハイドンの楽器の音色に関する鋭敏な感覚に唸るばかり。この曲では楽章ごとの演奏スタイルにきっちりメリハリをつけて、特にラルゴ・カンタービレの抑えた美しさにこだわっているよう。ここに来てディートリヒセンの突き抜けるような伸びやかな高音を披露。後半のメヌエットも実に落ち着いた音楽。最後のフィナーレは短いながらも非常に面白い音階の構成に釘付け。

ディヴェルティメント・ザルツブルクによる、ハイドンのディヴェルティメント3曲とオルガン協奏曲など2曲の協奏曲をあわせたアルバム。これぞハイドンの音楽の楽しみといわんばかりの演奏。腕利き奏者の集まりに違いありませんが、音楽のフォルムにこだわった精緻な演奏ではなく、音楽とは素朴なものであると言わんばかりの、実にくだけた演奏。前半の曲は大きな造りでグイグイと聴かせると思って聴いていると終盤は繊細な面ものぞかせ、聴くものを飽きさせません。選曲といい、演奏といい、まさに玄人好みのアルバムです。評価は真ん中に置かれたディヴェルティメントHob.II:16が[++++]、他は[+++++]とします。このアルバムも現在では入手が難しい貴重なものとなってしまっていますね。

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