絶品! ペターセン四重奏団の弦楽四重奏曲Op.1(ハイドン)
今日は弦楽四重奏曲でも滅多に取りあげないOp.1。このアルバム、コート姿のちょっとイケてない4人が並んだ、ちょっと不思議なジャケット。この妖気が気になり手に入れた次第。聴いてみると、これが超絶名盤でした。

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ペターセン四重奏団(Petersen Quartett)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.1のNo.1~No.6の6曲を収めた2枚組のアルバム。収録は前半3曲が1995年9月4日から9日、後半3曲が1996年2月18日から23日、ドイツのヴッパータールにあるインマヌエル教会でのセッション録音。レーベルはCAPRICCIO。
ペターセン四重奏団は、1979年、当時ベルリンのハンス・アイスラー音楽院の学生だったメンバーが設立したクァルテット。カラヤン時代のベルリンフィルのコンサートマスターだった、トーマス・ブランディスやシャーンドル・ヴェーグらに師事し、1985年エヴィアンで開催された国際室内楽コンクールで2等、1986年フィレンツェで開催された国際室内楽コンクールで優勝しています。その後それぞれのメンバーがベルリンやライプツィヒの主要なオーケストラメンバーとして働き、1998年にはベルリン放送のレジデント・クァルテットとなっています。1992年に現在の第1ヴァイオリンのコンラッド・ムックが加入し、ヨーロッパをはじめとして世界の楽壇で活躍しているということです。
この演奏当時のメンバーは下記のとおり。
第1ヴァイオリン:コンラッド・ムック(Conrad Muck)
第2ヴァイオリン:ジェルノ・ジュスムース(Gernot Süssmuth)
ヴィオラ:フリードマン・ヴァイクル(Friedemann Weigle)
チェロ:ハンス=ヤコブ・エシェンブルグ(Hans-Jakob Eschnburg)
この時はメンバーではありませんでしたが、創設メンバーにウルリカ・ペターセン(Ulrike Petersen)という人がおり、それゆえペターセン四重奏団という名前のようです。ウルリカ・ペターセンは一旦メンバーから外れましたが、2008年に復帰し、現在はメンバーとなっています。
さてこのOp.1、ハイドン最初の弦楽四重奏曲であり、後に確立された4楽章の緊密な構成には至っていない曲ながら、メロディーの美しさと素朴な表情はそれなりに魅力的。しかしながら録音は他曲よりぐっと少なくなります。これまでは弦楽四重奏ではなく弦楽合奏で伸びやかに演奏したエミール・クライン盤などが印象に残っていますが、このペターセン四重奏団盤は、弦楽四重奏という本来の構成での名演奏ということができるでしょう。曲ごとに特徴をかいつまんで書いておきましょう。
Hob.III:1 / String Quartet Op.1 No.1 [B flat] (c.1757-59?)
鮮烈な響き。速めのテンポで入り、この曲も緊密な構成であることを誇示するようなアンサンブル。のどかな演奏から迸るゆったりとした感興とは異なるキビキビとした響き。しかもインテンポで畳み掛けるように攻め込んできます。素晴しい立体感と緊張感。この曲集では全曲5楽章構成で、2楽章と4楽章にメヌエットが置かれています。そのメヌエットに入るとヴァイオリンのコンラッド・ムックの見事なヴァオリンに釘付け。素晴しい緊張感。そして3楽章に置かれたアダージョの磨き抜かれた演奏は、奏者たちの素晴しいテクニックに裏付けられたもの。録音も鮮明で素晴しい演奏を余すところなく伝えます。4楽章のメヌエットではところどころかなりハッキリとしたアクセントをつけますが、これが実に自然で効果的。センスいいですね。フィナーレは痛快そのもの。速いパッセージにも余裕があり、抜群のメリハリでハイドンの初期のクァルテットをこともなげに超絶名演。
Hob.III:2 / String Quartet Op.1 No.2 [E flat] (c.1757-59?)
1曲目からのけぞらんばかりの名演に、身を乗り出して聴きます。やはり第1ヴァイオリンのコンラッド・ムックのヴァイオリンの素晴しいプレゼンスに惹き付けられます。前曲では爽快な演奏でしたが、このNo.2では音楽を楽しむように、ひとつひとつのメロディーを丁寧に描き、メロディーの描き方の上手さを見せつけます。ハイドンのメロディーメーカーとしての才能はご存知のとおりですが、この演奏によって、こうした初期の弦楽四重奏曲においても素晴しいメロディーの波に襲われるような快感を味わうことごができます。特にバリトンを思わせるピチカートをそこここに配したりと創意も噴出。アダージョの美しいメロディーとピチカートに痺れます。静寂と弦の美しい響きの織りなす綾。そしてフィナーレの小気味好いアンサンブル。絶品!
Hob.III:3 / String Quartet Op.1 No.3 [D] (c.1757-59?)
このクァルテット、曲ごとの描き分けも見事。曲に潜む気配のようなものを捉えて、そのデリケートなニュアンスを非常にうまく表現しています。No.3の静寂から徐々に響きを立ち上がってくるあたりの表現は鳥肌もの。そして天に届かんばかりのヴァイオリンの伸びきった高音の響き。次々とメロディーが重なって行く非常に繊細な表情。ピチカートを交えた穏やかなメヌエットを経て、この曲のみ3楽章にプレストがきます。正確なボウイングでさっとプレストをこなし、再びメヌエット。やはり聴き所は濃密なメヌエットのメロディー。やはり音楽の気配を良くつかんで緊張感を保ちます。フィナーレは変化に富んだ曲調で、このクァルテットの表現力を遺憾なく発揮。ここまで引き込まれっぱなし。
Hob.III:4 / String Quartet Op.1 No.4 [G] (c.1757-59?)
CD2で録音日が異なります。1枚目の鮮烈な録音とは少し印象が異なり、オンマイク度がほんの少し下がり、響きの余韻が微妙に多くなったよう。アンサンブルが溶け合い、CD1ほどの鮮烈さは感じさせないものの、音楽は練れてきた感じ。メヌエットに入ると、このクァルテット独特のキリリとしたアクセントが顔を覗かせはじめ、CD1同様、どんどん引き込まれていきます。なんといっても素晴しいのがつづく7分を越えるアダージョ。おそらく録音の効果でしょうが、一部のパートがかなり距離を置いて遠くと会話するようなメロディーのやりとり。この曲がこのようなユニークな面白さを持っていたとは知りませんでした。録音会場の静けさのなかに浮かぶアンサンブル。会場の外を走る車の音がかすかに聞こえるほど。クッキリと表情をつけたメヌエットですが、中間部のさざめくような表現も秀逸。楽章ごとに聴き所満載です。フィナーレは弦楽器の多様な響きの面白さを見せつけられるよう。
Hob.II:6 / String Quartet Op.1 No.0 [E flat] (c.1757-59?)
最初の楽章がまるでフィナーレの様な曲調。CD1の演奏よりも曲の流れを重視しているように聴こえます。流れの中での有機的な変化の面白さという感じ。メヌエットの面白さは相変わらずですが、この曲も聴き所はアダージョ。しっとりとした語り口の面白さと、弦楽四重奏ならではの各パートの絡みあうメロディーの受け渡しの妙が際立ちます。パートごとの楽器の音色の違いも興味深いですね。続くメヌエットもハイドンの仕込んだユーモアを見事に捉えてにんまりするような演奏。フィナーレもコンラッド・ムックの軽やかな弓さばきの鮮やかさにうっとり。
Hob.III:6 / String Quartet Op.1 No.6 [C] (c.1757-59?)
最後の曲。やはり速いテンポでクッキリとした表情を作っていきます。鮮烈、鮮明な演奏、ヴァイオリンがリードしてくっきりと隈取りをつけていきます。もはや彼らのメヌエットの魅力にハマっていますので、安心して身を任せることができます。メヌエットの中間部との表現のコントラストはペターセン四重奏団の特徴の一つ。中間部へ入るときのちょっとした間と、変化が非常に上手い。アダージョはピチカートをベースにした聴き慣れた曲ですが、ペターセンの演奏で聴くと実に新鮮。空間に響くピチカートの余韻の美しさは絶品。雄弁なメヌエットを挟んで、最後のフィナーレはキツい音寸前のプレゼンスでコンラッド・ムックのヴァイオリンが迫ってきます。最後はぐっと沈み込んで終わります。
ジャケット写真を見た瞬間の妖気は、このアルバムのもつエネルギーを表したものでした。ペターセン四重奏団のハイドンの弦楽四重奏曲のOp.1は、間違いなくこの曲のベスト盤。このハイドン初期の弦楽四重奏の魅力を余すところ無くつたえる名盤です。この曲集がこれほど素晴しかったと気づかせてくれたのはまさにこの演奏の素晴しさがあってのこと。世評はわかりませんが、ペターセン四重奏団の素晴しい音楽性はこのアルバムだけでもよくわかります。これまで聴いた弦楽四重奏のアルバムでも屈指の出来であることは間違いありません。もちろん、このアルバムの評価は全曲[+++++]とします。
弦楽四重奏曲好きの方、必聴です。

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ペターセン四重奏団(Petersen Quartett)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.1のNo.1~No.6の6曲を収めた2枚組のアルバム。収録は前半3曲が1995年9月4日から9日、後半3曲が1996年2月18日から23日、ドイツのヴッパータールにあるインマヌエル教会でのセッション録音。レーベルはCAPRICCIO。
ペターセン四重奏団は、1979年、当時ベルリンのハンス・アイスラー音楽院の学生だったメンバーが設立したクァルテット。カラヤン時代のベルリンフィルのコンサートマスターだった、トーマス・ブランディスやシャーンドル・ヴェーグらに師事し、1985年エヴィアンで開催された国際室内楽コンクールで2等、1986年フィレンツェで開催された国際室内楽コンクールで優勝しています。その後それぞれのメンバーがベルリンやライプツィヒの主要なオーケストラメンバーとして働き、1998年にはベルリン放送のレジデント・クァルテットとなっています。1992年に現在の第1ヴァイオリンのコンラッド・ムックが加入し、ヨーロッパをはじめとして世界の楽壇で活躍しているということです。
この演奏当時のメンバーは下記のとおり。
第1ヴァイオリン:コンラッド・ムック(Conrad Muck)
第2ヴァイオリン:ジェルノ・ジュスムース(Gernot Süssmuth)
ヴィオラ:フリードマン・ヴァイクル(Friedemann Weigle)
チェロ:ハンス=ヤコブ・エシェンブルグ(Hans-Jakob Eschnburg)
この時はメンバーではありませんでしたが、創設メンバーにウルリカ・ペターセン(Ulrike Petersen)という人がおり、それゆえペターセン四重奏団という名前のようです。ウルリカ・ペターセンは一旦メンバーから外れましたが、2008年に復帰し、現在はメンバーとなっています。
さてこのOp.1、ハイドン最初の弦楽四重奏曲であり、後に確立された4楽章の緊密な構成には至っていない曲ながら、メロディーの美しさと素朴な表情はそれなりに魅力的。しかしながら録音は他曲よりぐっと少なくなります。これまでは弦楽四重奏ではなく弦楽合奏で伸びやかに演奏したエミール・クライン盤などが印象に残っていますが、このペターセン四重奏団盤は、弦楽四重奏という本来の構成での名演奏ということができるでしょう。曲ごとに特徴をかいつまんで書いておきましょう。
Hob.III:1 / String Quartet Op.1 No.1 [B flat] (c.1757-59?)
鮮烈な響き。速めのテンポで入り、この曲も緊密な構成であることを誇示するようなアンサンブル。のどかな演奏から迸るゆったりとした感興とは異なるキビキビとした響き。しかもインテンポで畳み掛けるように攻め込んできます。素晴しい立体感と緊張感。この曲集では全曲5楽章構成で、2楽章と4楽章にメヌエットが置かれています。そのメヌエットに入るとヴァイオリンのコンラッド・ムックの見事なヴァオリンに釘付け。素晴しい緊張感。そして3楽章に置かれたアダージョの磨き抜かれた演奏は、奏者たちの素晴しいテクニックに裏付けられたもの。録音も鮮明で素晴しい演奏を余すところなく伝えます。4楽章のメヌエットではところどころかなりハッキリとしたアクセントをつけますが、これが実に自然で効果的。センスいいですね。フィナーレは痛快そのもの。速いパッセージにも余裕があり、抜群のメリハリでハイドンの初期のクァルテットをこともなげに超絶名演。
Hob.III:2 / String Quartet Op.1 No.2 [E flat] (c.1757-59?)
1曲目からのけぞらんばかりの名演に、身を乗り出して聴きます。やはり第1ヴァイオリンのコンラッド・ムックのヴァイオリンの素晴しいプレゼンスに惹き付けられます。前曲では爽快な演奏でしたが、このNo.2では音楽を楽しむように、ひとつひとつのメロディーを丁寧に描き、メロディーの描き方の上手さを見せつけます。ハイドンのメロディーメーカーとしての才能はご存知のとおりですが、この演奏によって、こうした初期の弦楽四重奏曲においても素晴しいメロディーの波に襲われるような快感を味わうことごができます。特にバリトンを思わせるピチカートをそこここに配したりと創意も噴出。アダージョの美しいメロディーとピチカートに痺れます。静寂と弦の美しい響きの織りなす綾。そしてフィナーレの小気味好いアンサンブル。絶品!
Hob.III:3 / String Quartet Op.1 No.3 [D] (c.1757-59?)
このクァルテット、曲ごとの描き分けも見事。曲に潜む気配のようなものを捉えて、そのデリケートなニュアンスを非常にうまく表現しています。No.3の静寂から徐々に響きを立ち上がってくるあたりの表現は鳥肌もの。そして天に届かんばかりのヴァイオリンの伸びきった高音の響き。次々とメロディーが重なって行く非常に繊細な表情。ピチカートを交えた穏やかなメヌエットを経て、この曲のみ3楽章にプレストがきます。正確なボウイングでさっとプレストをこなし、再びメヌエット。やはり聴き所は濃密なメヌエットのメロディー。やはり音楽の気配を良くつかんで緊張感を保ちます。フィナーレは変化に富んだ曲調で、このクァルテットの表現力を遺憾なく発揮。ここまで引き込まれっぱなし。
Hob.III:4 / String Quartet Op.1 No.4 [G] (c.1757-59?)
CD2で録音日が異なります。1枚目の鮮烈な録音とは少し印象が異なり、オンマイク度がほんの少し下がり、響きの余韻が微妙に多くなったよう。アンサンブルが溶け合い、CD1ほどの鮮烈さは感じさせないものの、音楽は練れてきた感じ。メヌエットに入ると、このクァルテット独特のキリリとしたアクセントが顔を覗かせはじめ、CD1同様、どんどん引き込まれていきます。なんといっても素晴しいのがつづく7分を越えるアダージョ。おそらく録音の効果でしょうが、一部のパートがかなり距離を置いて遠くと会話するようなメロディーのやりとり。この曲がこのようなユニークな面白さを持っていたとは知りませんでした。録音会場の静けさのなかに浮かぶアンサンブル。会場の外を走る車の音がかすかに聞こえるほど。クッキリと表情をつけたメヌエットですが、中間部のさざめくような表現も秀逸。楽章ごとに聴き所満載です。フィナーレは弦楽器の多様な響きの面白さを見せつけられるよう。
Hob.II:6 / String Quartet Op.1 No.0 [E flat] (c.1757-59?)
最初の楽章がまるでフィナーレの様な曲調。CD1の演奏よりも曲の流れを重視しているように聴こえます。流れの中での有機的な変化の面白さという感じ。メヌエットの面白さは相変わらずですが、この曲も聴き所はアダージョ。しっとりとした語り口の面白さと、弦楽四重奏ならではの各パートの絡みあうメロディーの受け渡しの妙が際立ちます。パートごとの楽器の音色の違いも興味深いですね。続くメヌエットもハイドンの仕込んだユーモアを見事に捉えてにんまりするような演奏。フィナーレもコンラッド・ムックの軽やかな弓さばきの鮮やかさにうっとり。
Hob.III:6 / String Quartet Op.1 No.6 [C] (c.1757-59?)
最後の曲。やはり速いテンポでクッキリとした表情を作っていきます。鮮烈、鮮明な演奏、ヴァイオリンがリードしてくっきりと隈取りをつけていきます。もはや彼らのメヌエットの魅力にハマっていますので、安心して身を任せることができます。メヌエットの中間部との表現のコントラストはペターセン四重奏団の特徴の一つ。中間部へ入るときのちょっとした間と、変化が非常に上手い。アダージョはピチカートをベースにした聴き慣れた曲ですが、ペターセンの演奏で聴くと実に新鮮。空間に響くピチカートの余韻の美しさは絶品。雄弁なメヌエットを挟んで、最後のフィナーレはキツい音寸前のプレゼンスでコンラッド・ムックのヴァイオリンが迫ってきます。最後はぐっと沈み込んで終わります。
ジャケット写真を見た瞬間の妖気は、このアルバムのもつエネルギーを表したものでした。ペターセン四重奏団のハイドンの弦楽四重奏曲のOp.1は、間違いなくこの曲のベスト盤。このハイドン初期の弦楽四重奏の魅力を余すところ無くつたえる名盤です。この曲集がこれほど素晴しかったと気づかせてくれたのはまさにこの演奏の素晴しさがあってのこと。世評はわかりませんが、ペターセン四重奏団の素晴しい音楽性はこのアルバムだけでもよくわかります。これまで聴いた弦楽四重奏のアルバムでも屈指の出来であることは間違いありません。もちろん、このアルバムの評価は全曲[+++++]とします。
弦楽四重奏曲好きの方、必聴です。
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