ダヴィド・ゲリンガス/チューリンゲン・ヴァイマル室内管のチェロ協奏曲2番(ハイドン)

ダヴィド・ゲリンガス(David Geringas)のチェロ、イェルク・フェルバー(Jörg Faerber)指揮のチューリンゲン・ヴァイマル室内管弦楽団によるハイドンのチェロ協奏曲2番を収めたアルバム。他にモーツァルトの協奏交響曲(KV297b)、シューベルトの交響曲5番が入っています。収録は2002年1月、独ヴァイマルのヨハネス教会でのセッション録音。レーベルはDeutsche Schallplatten。
ダヴィド・ゲリンガスといえば、チェコフィルとのチェロ協奏曲の圧倒的な名演で記憶に残る人。手元には3枚のアルバムがあり、何れもレビューしています。略歴などはチェコフィルとのチェロ協奏曲の記事をご覧ください。
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チェコフィルとのアルバムは1993年の録音で自らの弾き振り、この時ゲリンガスは46歳。今日取り上げるアルバムは録音が2002年ということで9年の年を経て56歳で再び録音することになったわです。この音楽不況の時代に再び録音の機会に恵まれたということで、今回のアルバムではどのように成熟しているかに感心が集まります。
今回指揮を務めているのはイェルク・フェルバー。手元のアルバムではヴュルテンベルク室内管を振ってアルゲリッチとのピアノ協奏曲、ポール・トルトゥリエとのチェロ協奏曲、ナカリャコフのトランペットによるチェロ協奏曲の伴奏を務めています。1929年シュツットガルトに生まれ、シュツットガルト音楽舞台芸術大学で学び、1962年からはハイルブロン劇場の音楽監督を務めました。1960年にヴュルテンベルク室内管を創設し、2002年まで40年以上にわたり指揮、音楽監督を務めてきたとのこと。このアルバムでは手兵ヴュルテンベルク室内管を去って、チューリンゲン・ヴァイマル室内管を振ったもの。経歴、録音から察するに職人肌の人でしょう。
Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
チェコフィルとのアルバムがかなり雄弁にオケを鳴らしていたのに対し、こちらは室内管で、イェルク・フェルバーの指揮はオーソドックスなコントロール。適度なキビキビ感と落ち着いた表情のバランスが秀逸。表情を抑えてながらも堅実なサポートに徹するような入り。ゲリンガスのチェロもチェコフィル盤のグイグイ迫る演奏とは異なり、オーソドックスな伴奏に乗ってのびのびと演奏を楽しむような力の抜けたもの。9年の歳月によって少し枯れてきたのでしょうか。とは言っても自在なボウイングによる豊かな表情は健在。チェロもオーソドックスながら語るようにしっとりとメロディーを描いていくあたり、流石ゲリンガスというところ。徐々に音量を抑えた部分の美しさに惹かれるようになり、ゲリンガスの音楽に引き込まれます。オケもチェロと見事な呼吸で寄り添い、まるで小宇宙のような完成度。チェコフィルとの演奏が非常に意欲的な表現だったのに対し、こちらは純粋さが際立つ音楽。ゲリンガスが再録音した理由がわかった気がします。カデンツァではこれまでのオケと演奏から離れてまさに自在に弓をふるい、チェロの美音をいやというほど聴かせます。オケは何事もなかったように普通のテンポで迎えにくるのが微笑ましいほど。
アダージョに入ると、オケもゲリンガスも一層力が抜けて純粋さが一際印象的に。音楽が結晶のように輝きます。ゲリンガスのチェロはオケの伴奏に乗りながらも実に自在な弓さばき。崩れすぎることもなくリズムに乗りながらこれだけ流麗なメロディを描いて行くのは並のことではありません。この楽章でもカデンツァでは純粋無垢な美しい響きを聴かせます。
フィナーレは小細工一切無しで流れるような音楽。ハイドンの書いた音符自体に語らせるような演奏。軽々とフレーズを刻むゲリンガスにオケもぴったりと寄り添い、ソロとオケが渾然一体となった素晴しい音楽で終わります。
ゲリンガスによるチェロ協奏曲2番の再録音。やはり9年の歳月は音楽を洗練させていました。チェコフィル盤の実に豊かな表現も素晴しいかったのですが、このチューリンゲン・ヴァイマル室内管盤では純度の高い結晶のような音楽が聴かれました。力みの無いチェロから奏でられる音楽に癒されるような演奏。やはりチェロ協奏曲は傑作ですね。評価はもちろん[+++++]です。このアルバム、比較的最近のリリースにもかかわらずネット系では取扱が無いよう。このような素晴しい演奏が手に入らないとは痛恨事です!
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