シェーンブルン・アンサンブルのディヴェルティメント集(ハイドン)

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シェーンブルン・アンサンブル(Schönbrunn Ensemble)の演奏による、ハイドンのディヴェルティメント3曲(Hob.II.11、II.D8、II:1)、ミヒャエルハイドンのディヴェルティメントハ長調の4曲を収めたアルバム。収録は1995年2月、オランダのユトレヒトでのセッション録音。レーベルは蘭GLOBE。
このアルバム、いつものように湖国JHさんから貸していただいているもの。ハイドンのディヴェルティメント集は音楽の楽しみを知った人こそのんびりと聴いて楽しめるものです。ハイドンと言えば交響曲に弦楽四重奏曲、そしてオラトリオやミサ曲が有名ですが、若い頃に書いたディヴェルティメントなども、実にいい曲が多く、収集欲をそそられます。私同様ハイドンマニアでいらっしゃる湖国JHさんの貴重なコレクションということで、楽しみをわかるものが食指をそそられるアルバムと言う感じです。つまり、一般的にはマイナー盤という位置づけであると言いたい訳です(笑)
演奏者のシェーンブルン・アンサンブルは、ウィーンのシェーンブルン宮殿のイメージからオーストリアの団体だと思っていましたが、オランダの団体。彼らのウェブサイトは、Ensemble Schönbrunn Amsterdamとなっており、最近はアムステルダムという地名をつけているようです。
Ensemble Schönbrunn Amsterdam
設立は25年以上前で、フレスコバルディからドビュッシーという幅広い時代のあまり知られていない曲を演奏するというのが彼らのスタイルのようで、リリースされているCD14点を見ると、まさにマイナー曲ばかり。その中にハイドンが2点あり、そのうちの1枚がこのアルバムです。これだけマイナー好みな団体ということで、非常に気になり、残りの1枚のハイドンのフルート三重奏曲集も注文し、入手済みです。やはりマイナー盤には目がありません(笑)
今日取り上げるアルバムの曲をよく見てみると2曲目のHob.II:D8と言う曲、手元の所有盤リストやハイドンマニアの聖書、大宮真琴さんの「新版ハイドン」にも記載がありません。ライナーノーツを見てみると、この曲、バーゼル大学図書館に保管されている作者不詳の18世紀の楽譜がもとになっており、1958年、ヘルマン・シェルヘンによってフルートと弦楽合奏のためのディヴェルティメントとして出版されたもので、ハイドンの作と考えられてきましたが、現在では真作とはみなされていないものでしょう。曲を聞くとメロディーの美しさと展開はなかなかいいのですが、構成にハイドンらしい閃きが欠けているような気がしなくもありません。ということで今日はハイドンの作曲と明らかになっている2曲を取りあげることとします。
Hob.II:11 / Divertimento "Der Geburtstag" 「誕生日」(6 Qurtette fur Flote, Violine, Viola und Violincello Op.5 Nr.6) [C] (c.1763)
ハイドンのディヴェルティメントでは有名な曲。フルート、オーボエ、ヴァイオリン×2、チェロ、コントラバスと6声のディヴェルティメント。シェーンブルン・アンサンブルの演奏は古楽器としては自然な音色で、落ち着いた演奏。適度にキビキビ感もあり曲の面白さを素直に味わう事ができます。録音も自然で鮮明。コントラバスの低音がリアルに響きます。1楽章のプレストは軽快、2楽章はハイドンらしい穏やかなかにも陰りを感じる静かなアンダンテ。そしてまさにハイドンらしい展開の要のメヌエットとつづきます。このメヌエットで楽章間にクッキリとコントラストがついているのを印象づけ、ディヴェルティメントの面白さをうまく演出しています。フィナーレはハイドン存命時に流行った夫婦という有名な歌のメロディーをもとにした変奏曲。奏者はそれぞれ腕利き揃いらしく、一貫して穏やかな音楽ながらメロディーがクッキリ浮かび上がります。最初は落ち着いていたものの、変奏がヴァイオリンのソロになったあたりから奏者も少し表現に力が入り、変奏の面白さに耳を奪われるようになります。ハイドンの機知に富んだ音楽の面白さの極致。曲の流れに応じての盛り上げ方が非常に上手いですね。
Hob.II:1 / Cassatio [G] (c.1755)
前曲よりも遡ってハイドンが20代前半の作曲によるディヴェルティメント。前曲と同じ編成による6声のディヴェルティメント。変わらず落ち着いた入り。アレグロを軽快にこなして行きます。古楽器の音色を素直に活かした演奏ですが、集中して聴くとかなりメリハリをつけているので、メロディーラインがクッキリと浮かび上がっていることがわかります。シェーンブルン・アンサンブルの演奏、穏やかにはじまり、要所で盛り上がるというのがわかっているので、つづくアンダンテ・モデラートのはじまりの素っ気なさは逆に期待を煽ります。徐々に伸びやかさが増して来て、ゆったりとした雰囲気に呑まれるようになります。ヴァイオリンの音階が静かに響き渡り、他の楽器が溶け合うように迎える、穏やかな掛け合い。感情の高ぶりはなく、平常心で音楽を楽しむ粋なひと時。技巧ではなく響きの美しさというか、余韻の美しさに聴き入るような演奏。三昧の境地ですな。メヌエットはチェロの聴かせどころを挟んでささっと駆け抜けます。そしてフィナーレはこちらも変奏曲。実に聴き応えのある穏やかなメロディー。ハイドン弱冠20代にしてこの冴えに驚きます。楽器の音色の本質を捉えたメロディーの受け渡し。それぞれの楽器がどう響くと美しいのかを完全に掌握して曲を書いています。シェーンブルン・アンサンブルは完璧な演奏でハイドンの静かな狂気を描いていきます。この変奏の見事さは筆舌に尽くし難い。いやいや、このような小曲でこれほどの冴え。音楽の喜びがすべて詰まっているような充実感。参りました。
シェーンブルン・アンサンブルのディヴェルティメント集。はじめて聴く団体でしたが、マイナー曲を好んでレパートリーとしているだけあって、曲の真髄をとらえた音楽の深さは流石の実力ですね。ハイドンの小曲に描かれた音楽の素晴しさを残さず描ききっています。室内楽好きの方、必聴の素晴らしさです。心の中にじわりと幸福が満ちてくるような素敵なアルバムです。ハイドンの2曲の評価はもちろん[+++++]です。
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