作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アーリーン・オジェーのカンツォネッタ(ハイドン)

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世の中ゴールデンウィークですが、ラ・フォル・ジュルネなどを楽しんだり、近くの公園に出かけたりと、近場で適当にゴールデンウィークを満喫して楽しんでおります。

今日取り上げるのは最近ネットを検索していてはじめて存在を知ったアルバム。amazonに注文したら、いつも通り翌日には到着です。

Auger1978.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

アーリーン・オジェー(Arleen Augér)のソプラノ、エリック・ウェルバ(Erik Werba)のハンマークラヴィーアでグルック、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの歌曲26曲を収めたアルバム。収録は1978年5月11日、ザルツブルク・レジデンツ(宮殿)内のリッターザール(Rittersaal)での録音。ライヴとは記載されていませんが、明らかに拍手や会場ノイズが聴こえるのでライヴです。レーベルはORFEO。

アーリーン・オジェーは1939年、ロサンゼルス近郊のサウスゲート生まれのソプラノ歌手。子供のころからピアノとヴァイオリンを習っていましたが、ロングビーチのカリフォルニア州立大学を卒業し、最初は幼稚園の先生でした。26歳になってシカゴ近郊のエヴァンストンでテノール歌手のラルフ・エローレ(Ralph Errolle)について歌を学び始め、2年後にロサンジェルスで行われた声楽コンクールで優勝したことで歌手としてのキャリアがスタートしました。音楽家としては遅咲きのほうでしょう。この後ロサンジェルスフィルと共演、ウィーンに渡りり、ウィーン国立歌劇場ではヨゼフ・クリップスの指揮の魔笛でデビュー、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場ではベームの振るフィデリオのマルチェリーナ役でデビューといきなり世界のトップシーンで活躍し始めました。レーパートリーはバッハからモーツァルトあたりまでで、高貴な響きのソプラノで知られた人です。歌手としては全盛期だった1992年、脳腫瘍のため引退、3度の手術ののち1993年に亡くなったとのこと。今日取り上げるのは1978年、オジェー39歳の頃の歌ということですね。

ジャケットの若々しいオジェーの姿が眩しいですね。オジェーにはホグウッドが伴奏を担当した「ナクソスのアリアンナ」などを収めたアルバムや、オルベルツのピアノ伴奏によるカンツォネッタ集などのアルバムがありますが、何れもこの録音よりあとのセッション録音。また天地創造や四季、ミサ曲のソロを担当した演奏もいくつかありまますが、ドラティの「月の世界」の録音に1977年に参加している以外はすべて今日取り上げるアルバムより後の録音です。このアルバム、若きオジェーの貴重な録音といっていいでしょう。

伴奏のエリック・ウェルバは1918年生まれのオーストリアの作曲家、ピアニスト。ネットを検索すると歌曲の伴奏者として錚々たる歌手の伴奏を担当したアルバムが残されていますね。1992年に亡くなっています。

1曲目のグルックの曲につづき、2曲目から5曲目までの4曲がハイドン。

Hob.XXVIa:35 / 6 Original Canzonettas 2 No.5 "Piercing eyes" 「見抜く目」 [G] (1795)
伴奏のウェルバの弾く楽器はハンマークラヴィーアとありますが、音色はフォルテピアノに近いです。かなり雄弁なウェルバの伴奏に乗って、オジェーの歌が入りますが、高音の響きの豊かさがいきなり印象に残ります。録音は70年代後半としてはちょっと粗さが目立ちますが、特段聴きにくいものではありません。良く響く宮殿内のホールで歌っている感じがよくわかります。ウェルバの起伏に富んだ伴奏に対し、オジェーの歌の誠実な展開にぐっと来ます。

Hob.XXVIa:34 / 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 [A sharp] (1795)
挨拶がわりの前曲に対し、ぐっと情感が強まる曲をもってきました。ウェルバのドラマティックな伴奏にオジェーも応えて、歌の表現の幅も前曲より広がります。ゆったりと間を取る事で生まれる空気感を存分に活かした演奏。しっとりとした歌にゆったりとした伴奏から生まれる濃い情感。会場内のお客さんの集中力も一気に鋭敏になります。

Hob.XXVIa:21 / 12 Lieder No.9 "Das Leben ist ein Traum" 「人生は夢だ」 [E flat] (1784)
前曲同様、しっとりと入りますが、聴かせどころの盛り上がりかたが違いました。オジェー、いきなりフルスロットルで素晴しい高音を聴かせます。声の張りと力の漲り方が尋常ではありません。ウェルバが落ち着きはらってしっかりサポートしているのがいいですね。流石に伴奏に慣れた人と感慨しきり。オジェー全盛期の絶唱。

Hob.XXVIa:4 / 12 Lieder No.4 "Eine sehr gewöhnliche Geschichte" 「ごくありふれた話」 [G] (1781)
ハイドンの最後はこれまでの3曲とはことなりドイツ語の歌。コミカルな台詞まわしが印象的な曲。ハイドンの4曲だけで、歌曲の様々な面白さに次々とスポットライトを当てる巧みな選曲でした。この曲が終わると盛大な拍手に包まれます。

多くのソプラノ歌手の歌でも微妙なニュアンスの違いで、何となく好きになる歌手がいるものです。オジェーはなぜか、華やかさも折り目正しさもあり、妙に心に刺さる人。軽々とした節回しで転がるように音階が走り抜け、あとに何とも言えない可憐な余韻が残ります。このアルバムは若きオジェーの魅力が詰まった素晴しい歌唱が楽しめる絶好の録音。残念ながら70年代としては今少しの鮮明さが欲しいところですが、オジェーの魅力は十分伝わります。ウェルバの伴奏も味があって非常にいいですね。ファン必携のアルバムでしょう。評価はもちろん4曲とも[+++++]です。ハイドン以降のモーツァルト、ベートーヴェン、そして特にシューベルトがいいです。

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2 Comments

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だまてら

No title

素晴らしい(と未聴のうちから断言してしまいましたが・・・)アルバムですね。
同年録音の、ヘルムート・リリングの「マタイ受難曲」旧盤でも彼女が歌っています。
’80年代なかばには、同キャストでの実演をNHKホールで聴いて感動しました。
トピずれになりますが、リリングの指揮はピリオド奏法が業界?を席巻する以前の
中庸的なスタイルの演奏であり、ともすれば微温的と片付けられがちですが、
音盤も実演も滋味溢れる癒しの音楽でした。それにはオジェーとメゾ・ソプラノの
ユリア・ハマリの名唱が大きく貢献していると考えます。

  • 2014/05/06 (Tue) 10:52
  • REPLY

Daisy

Re: No title

だまてらさん、いつもコメントありがとうございます。
オジェーの実演を聴かれたとはうらやましい限り。あの美しい声がホール響き渡るのを想像するだけでぐっときますね。リリングとのバッハはあまり聴いてはいませんが、ちょっと仕入れて聴いてみたくなりました。そういえばリリングのハイドンもテレジアミサを一度取り上げたきりでした。もう少し聴いてみたいですね。

  • 2014/05/21 (Wed) 07:33
  • REPLY