ハンス=マルティン・リンデ/カペラ・コロニエンシスの交響曲36番(ハイドン)
今日はこちらがリクエストして貸していただいたアルバム。

ハンス=マルティン・リンデ(Hans-Martin Linde)指揮のカペラ・コロニエンシス(Cappella Coloniensis)の演奏で、ハイドンの交響曲36番、カンタータ「哀れな民、哀れな祖国」、ベレニーチェのシェーナ「ベレニーチェ、何をしようとしているのか?」、ヴァイオリン協奏曲(Hob.VIIa:4)の4曲を収めたアルバム。今日取り上げる交響曲36番の収録は1986年2月2日、ケルンの少し東にあるリンドラー(Lindlar)の文化センターでのセッション録音。レーベルはCAPRICCIO DIGITAL。
このアルバムの交響曲36番以外の曲は既に手元の別のアルバムに含まれていて聴いていますが、交響曲のみ未聴だったもの。リンデのハイドンは最近ディヴェルティメント集を聴いて、その素晴しさを知りました。
2014/03/10 : ハイドン–交響曲 : リンデ/カペラ・コロニエンシスの交響曲66番、90番、91番(ハイドン)
2014/03/08 : ハイドン–管弦楽曲 : リンデ・コンソートのディヴェルティメント集(ハイドン)
2012/01/29 : ハイドン–協奏曲 : ハンス=マルティン・リンデ/カペラ・コロニエンシスのカンタータ、ヴァイオリン協奏曲
リンデの指揮するハイドンにはハイドンの真髄を知る者のみに到達しうる空気感のようなものがあります。ハイドンの音楽を真に楽しんで演奏している演奏だけに感じられる癒しのようなものと言えばいいでしょうか。この空気感が人を惹き付けるハイドンの音楽の素晴しさの証なんですね。
このアルバムもプレイヤーにかけたとたん、極上の癒しにつつまれました。
Hob.I:36 / Symphony No.36 [E flat] (before 1769)
カペラ・コロニエンシスは古楽器オケですが、最近の古楽器の演奏とは異なり実にマイルドな響き。古楽器然とした演奏ではなく現代楽器への進化の途上、調弦が少し低くしっとりとした響きを出すオケと言う感じ。リズミカルに弾むメロディーに冒頭から癒し成分充満。ハイドンの初期の交響曲の晴朗な響きに素朴なエネルギーが宿り、音楽に活き活きとした表情が加わっています。テンポは中庸、音楽は躍動、録音はほどよく鮮明。それほど広くない響きの良いホールでの収録のよう。低音弦とハープシコードが刻むリズムに弦楽器陣がキレよくメロディーを乗せて行きます。良く聴くと低音弦のリズムも弾む弾む。奏者全員がノリにノっているのわかります。オケが完全に一体化してリンデの棒に踊っているよう。1楽章から癒し全開。
続くアダージョは冒頭の印象的なメロディーを軸にして展開していきます。すぐにヴァイオリンとチェロのソロが入りますが、それぞれ極上の磨き抜かれた演奏。可憐に響くヴァイオリンに対し、ちょっと下がってサポートするチェロはのびのびとした演奏。しばらく続くヴァイオリンとチェロの掛け合いの実に典雅なこと。冒頭のメロディーが繰り返されていくこの形式は調べたところリトルネロ形式というそう。最後のそっと消えるように終わる部分のセンスの絶妙な事。
メヌエットは前楽章で登場しなかったホルンがリズムに合わせて乗ります。メロディーがつぎつぎと表情を変えて現れるユーモラスな音楽。このメロディーの変化の面白さがハイドンならでは。
そしてフィナーレもホルンが加わってまろやかな響きが心地よいですね。メロディーはユーモラスなのにそれにとどまらない構成感と変化の面白さは驚くばかり。音量を落としたヴァイオリンの精妙なボウイングで聴かせるとおもいきや、オケの各楽器が程よくブレンドしながらクッキリと音楽を描いて行くさまは見事と言う他ありません。実にリラックスして音楽の聴かせどころのポイントを押さえた演奏。流石リンデという演奏。
ハンス=マルティン・リンデのハイドンの3枚目。やはりハイドンの初期の交響曲の魅力を存分に表現した名演でした。この癒しの魅力はたまりません。オケの演奏は指揮者の演奏によって変わるものですが、リンデが振るとハイドンが乗り移ったように音楽が弾み、そしてハイドン自身はこのように振ったであろうとさえ思えるような説得力です。これは貴重な演奏ですが、残念ながらamazonでさえアルバムがヒットしません。ハイドンの交響曲を愛する多くの人に聴いていただきたい名演奏です。評価はもちろん[+++++]。心を洗われるようないい演奏でした。
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