作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

シュタルケル/ジュリーニ/フィルハーモニア管のチェロ協奏曲2番(ハイドン)

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ハイドンの録音は少ないジュリーニですが、意外なところに録音が含まれてました。

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カルロ・マリア・ジュリーニ(Carlo Maria Giulini)の協奏曲の演奏をおさめた9枚組のアルバム。この中のCD2にハイドンのチェロ協奏曲2番の演奏が含まれています。チェロ協奏曲の奏者は、チェロのソロはヤーノシュ・シュタルケル(János Starker)、オケはフィルハーモニア管弦楽団(Philharmonia Orchestra)。収録は1958年5月29日から30日、ロンドンの今は亡きキングスウェイホール。元々の録音はもちろんEMIですが、このアルバムはWARNER CLASSICSのリリースです。

ジュリーニは気になる指揮者ですが、ハイドンの録音は多くなく、過去に驚愕の演奏を2度ほど取りあげています。

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2010/09/20 : ハイドン–交響曲 : ジュリーニの驚愕

個人的にはジュリーニの演奏で懐かしいのは、同じフィルハーモニア管を振った1959年録音のフィガロの結婚。フィガロといえば日本では圧倒的にベーム盤の評価が高かったのですが、ジュリーニ盤は後年の透徹した響きを予感させるジュリーニのタイトなコントロールとアンナ・モッフォの可憐なスザンナがお気に入りです。

さて、チェロのソロはヤーノシュ・シュタルケルですが、手元にはシュタルケルがソロを務めるチェロ協奏曲のアルバムが何枚かありますが、今ひとつな印象があり、ちょっと苦手としていました。ジュリーニとのコンビで真価を発揮するのでしょうか。

Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
1958年録音ということで燻したような雰囲気がいい感じ。ゆったりとオケをコントロールして、しかもジュリーニらしいクッキリとした線の美しさを感じさせるもの。シュタルケルのチェロは意外にオーソドックスで、オケにピタリと寄り添いながらオケと同じく燻したような音色で入ります。リズムもボウイングも目立つようなそぶりを見せず、ひたすらオーソドックスにいきます。時折きかせる高音のむせび泣くような音色が特徴でしょうか。オケの方は折り目正しくクッキリとフレーズをこなして行き、ハイドンの美しいメロディーがじわりと香り立つ理想的なサポート。フィガロの結婚同様、このころのジュリーニの端正かつ優美な音楽が伝わります。徐々にシュタルケルのチェロが雄弁になり、リズムを遅らせながらボウイングが大胆になり、美音を轟かせるようになります。それを知ってジュリーニもテンポを少し合わせるところもありますが、再現部では再びクッキリと美しさを際立たせるように華やかなオケが戻ります。ジュリーニもシュタルケルも徐々に表現が落ち着きながら大胆に変化していき、音楽の掛け合いが浮かび上がってきます。ゆったりとしたテンポの中、音楽は活き活きと流れ、終盤、シュタルケルの美音がようやく炸裂します。チェロから絞り出されるような魂の乗った高音。そのままカデンツァに入り、落ち着き払いながらも創意が嵩じてチェロから入魂の響きが流れ出ます。ようやくシュタルケルの真価を知った気になります。ジュリーニがあの世にいきそうなシュタルケルを華やかな響きで迎えにきます。
アダージョはジュリーニとシュタルケルの息がピタリと合って、ジュリーニが意図する穏やかな感興にシュタルケルも乗ります。それにしてもシュタルケルのチェロの高音はいい音。美音をひけらかす感じではなく、素朴に高音の響きの良さがにじみ出る感じ。この楽章のカデンツァは短いのに神がかったような精妙な響きを聴かせます。
フィナーレはシュタルケルが主導権を握ります。ジュリーニは落ち着いてくっきりとサポートしますが、シュタルケルはリスムを先に打ち、今まで一番雄弁に弓を運びます。調子が出てきたのかオケを制するかのようなプレゼンス。イタリア人らしいジュリーニの華やかさに対し、ハンガリーの音楽が湧き出てきているよう。最後はジュリーニがテンポを上げてクライマックスを彩ります。

ジュリーニの数少ないハイドンの録音の一つでしょうが、このチェロ協奏曲は絶品でした。シュタルケルの真価を知った演奏ともなりました。1950年代のジュリーニのオーソドックスながらクッキリとした音楽が心地よい演奏。晩年はテンポを極端に落とし、クッキリとしたところが極端に際立ち、躍動感を失ってしまうような演奏もありましたが、この頃の演奏を聴くとイタリア人らしくメロディーラインを美しく響かせ、純度の高い音楽をつくる人であることがよくわかります。評価は[+++++]とします。

この9枚組のアルバム、ハイドンも素晴しいのですが、ジュリーニ壮年期の協奏曲の演奏がいろいろ聴ける好企画ですね。

さて、残念ながらEMIはクラシックから手を引いたのか、過去の音源をいろいろなレーベルに提供していますが、どうやら全般にWARNERに移管したのでしょうか。過去の貴重な録音がふたたびリリースされるのは嬉しいことですが、PHILIPSをはじめEMIまでレーベルが亡くなってしまうとは思いませんでした。これも歴史の流れでしょうか、複雑な心境です。

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