作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

リンデ/カペラ・コロニエンシスの交響曲66番、90番、91番(ハイドン)

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今回は鼻が利きました。前記事であまりにも素晴しいディヴェルティメントを聴かせたハンス=マルティン・リンデの未入手の交響曲の中古を注文しておいたものが早速到着。

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ハンス=マルティン・リンデ(Hans-Martin Linde)指揮のカペラ・コロニエンシス(Cappella Coloniensis)の演奏で、ハイドンの交響曲90番、66番、91番の3曲を収めたアルバム。収録は1987年から88年にかけてですが、収録場所が3曲それぞれ異なりますので、レビュー記事の中で触れましょう。レーベルは独CAPRICCIO。

前記事で取りあげた、ハンス=マルティン・リンデのディヴェルティメントのことを調べている途上、リンデの指揮で他に交響曲の録音があることを知り、気になっていました。前記事の演奏があまりにも素晴らしかったので、これは注文しないわけにはいかぬということで、即中古盤を注文。幸い国内の出荷だったので、あっという間に本日到着していたと言う流れです。

いろいろ、レビューしなければならないアルバムがありますが、気になってこのアルバムをCDプレイヤーにかけると、、、予想通り、いきなり素晴しい響きのオーケストラが部屋に出現。アドレナリン大噴出です。どうやらリンデはハイドンの肝をつかんでいるようですね。

Hob.I:90 / Symphony No.90 [C] (1788)
収録は1988年5月18日、独ケルンの東30kmほどのところにあるリンドラー(Lindlar)という街の教育センターでのセッション録音。
カペラ・コロニエンシスは古楽器オケ。このアルバムでは一番オケが遠くに定位する落ち着いた録音。キレのいい古楽器オケの響きが鮮明に録られてなかなか鮮明。ハープシコードの繊細な響きが加わり、迫力だけではなく繊細な感じもよくでています。テンポは遅めでリズムを強調したもの。ディヴェルティメント集ではのびのびとした印象が勝っていたものが、オケが古楽器だということもあり、直線的なフレージングと表情は抑えながらもリズム感を強調したオーケストラコントロール。予想よりも古楽器らしいタイトな響きです。1楽章はキレの良さとハイドンの機知のバランスの良い秀演。
2楽章のアンダンテに入るとディヴェルティメントの演奏で聴かれた起伏に富んだのどかな音楽が徐々に顔を出します。おそらくオケのメンバーの力量はリンデコンソートの方が腕利き揃いなのでしょう。ソロのフレーズの音楽の豊かさはディヴェルティメント集に軍配があがります。ただし、メロディーを楽器ごとに受け継いでいく面白さは変わらず、この辺はリンデのセンスの良さが光るところです。このアンダンテの豊かな感興はリンデならでは。
メヌエットは独特の優雅さに迫力も加わりますが、中間部に入るとオーボエの絶妙なソロに耳を奪われます。
フィナーレは他の演奏で聴きなれたテンポよりかなり遅く、フィナーレを爽快感ではなく、堅固な構造の妙を聴かせたいと言うところでしょうか。ディティールをくっきり浮かび上がらせながら、骨格を丹念に描いていきます。確かにこの曲の骨格構成はこうして解きほぐすことで、さらに魅力を帯びて聴こえます。ラトルが終わったように見せかけて続く演出を得意としている曲ですが、リンデの演奏ではそもそもそれを織り込んがハイドンの機知をきっちり描く事に集中しているよう。なかなか筋の通った解釈です。

Hob.I:66 / Symphony No.66 [B flat] (before 1779)
収録は1987年1月26日、独バーデン=バーデンとフライブルクの間にあるフリーゼンハイムのスターネンベルクホールでのセッション録音。
1曲だけ10年ほど遡った時代の曲が挟まれています。録音会場と時期が異なるため、響きは変わります。オケの実体感が上がり、響きは少し厚くなります。なにより演奏に推進力が漲り、生命力あふれる素晴しい響き。オケの奏者が前曲よりもリラックスして、音楽に弾力があります。ハイドンの中期の交響曲の魅力が満ち満ちて、1楽章は圧巻の出来。
弱音器付きの弦楽器の奏でる、アダージョのほの暗いメロディーはハイドンの真骨頂。リンデもこの曲ではドラティやアダム・フィッシャーの演奏以上の説得力をもつ自然なフレージングで、まるでハイドン自身が乗り移っているかのような素晴しい演奏。1音だけピチカートを混ぜたり、曲の調子をクイックに切り替えたり、ハイドンの曲の面白さの博覧会のような曲を、ハイドンの意図通りであるかのように演奏していきます。極上のアダージョ。
アダージョの余韻を断ち切るように、こんどは表情を抑え、リズムを強調したあえて淡々としたメヌエット。曲調にあわせて自在にスタイルを変えながらも音楽には一貫性がある素晴しい演奏。
そしてフィナーレはざわめきを音楽にしたような不可思議な雰囲気から入ります。抑えた表情の中で展開する音楽の面白さ。そして最後にコミカルに展開するメロディ。まさにおもちゃ箱のような曲の魅力が溢れた演奏でした。

Hob.I:91 / Symphony No.91 [E flat] (1788)
収録は1988年1月29日、独ドルトムントとハノーファーの間にあるビーレフェルトのルドルフ・エーテカー・ホールでのセッション録音。録音は1曲目と2曲目の間をとった感じで、バランスはこの曲が一番。
ここまでで、すでにリンデの描くハイドンの魅力に引き込まれっぱなしです。やはりリンデはハイドンの音楽のツボをおさえて、ハイドンが考えた閃き、アイデアをひとつひとつ丁寧に、しかもセンス良くこなしていくので、聴いているほうも、ハイドンの曲の魅力がよくわかる訳です。最後のこの曲でも、曲自体の創意のまま丁寧にこなしていくので、悪かろうはずもありません。序奏から、これからはじまる音楽のそわそわ感に胸が高鳴ります。奏者も力みなく実にリラックスしての演奏。八分の力でのびのびと演奏しており、余裕たっぷり。1楽章から、2楽章のアンダンテ、メヌエット、フィナーレと何れの楽章もゆったりとした演奏で、演奏する側が心から楽しんで演奏しているのが伝わってくるような演奏。このメリハリや迫力に媚びないゆったりとした音楽こそ、ハイドンの本質だと言わんばかり。特にフィナーレのゆったりとした演奏が印象的。これぞハイドンの本質なんでしょう。

ハンス=マルティン・リンデのハイドンの交響曲集。やはりこの人、只者ではありませんでしたね。ハイドンの音楽を聴く悦びの真髄を味わえる素晴しい演奏でした。冒頭の90番の1楽章を聴いたときには、古楽器のさもありそうな演奏と聴こえたのですが、聴き進めるうちに、前記事の素晴しいディヴェルティメント集での豊かな音楽と同じ音楽が流れ出し、曲のジャンルやオケこそ違えども、リンデのハイドンの特質が一貫して感じられる素晴しい演奏となっていました。やはり、この人、ハイドンの真髄を知っていますね。評価はやはり全曲[+++++]です。特に66番、91番は決定盤といってもいいでしょう。ハイドンの交響曲の素晴しさがすべて詰まった名盤です。手に入るうちに、どうぞ。

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