作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ジョン・バルビローリ/SWF響の雌鶏(ハイドン)

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今日は久しぶりの新着アルバム。

Barbirolli83.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

サー・ジョン・バルビローリ(Sir John Barbirolli)指揮のバーデン=バーデンSWF交響楽団(SWF-Sinfonieorchester Baden-Baden)の演奏で、ハイドンの交響曲83番「雌鶏」、ベルリオーズの幻想交響曲の2曲を収めたアルバム。ハイドンの収録は、バーデン=バーデンにあるハンス・ロズバウド・スタジオでのセッション録音。レーベルはica CLASSICS。

バルビローリはハイドン、それも雌鶏を度々とりあげていたようで、手元にはこのアルバムで3種のアルバムがあります。

ハレ管弦楽団との1949年12月のセッション録音
SWF響との1969年2月のセッション録音(当盤)
ハレ管弦楽団との1969年8月9日プロムスライヴ

このうち3番目のプロムスライブとは半年違いの録音のため、今回あらためて聴き直してみました。演奏の傾向はかなり似ているものの、録音は今日取り上げるアルバムの方が俄然鮮明であることがわかりました。一方のプロムスライヴはハイドンの雌鶏にはじまり、ウィンナワルツ、リヒャルトシュトラウスの薔薇の騎士組曲、レハールなどとウィーンものをテーマにしたコンサートで、まるでロックコンサートのように観客と一体に盛り上がる素晴しいライヴ盤。どちらも得難い素晴しい演奏なんですね。

そもそもバルビローリのハイドンは2度ほど記事にしています。独特の語り口がぐっと心に迫る指揮をする人。

2010/09/12 : ハイドン–協奏曲 : ジャクリーヌ・デュ・プレ!
2010/08/10 : ハイドン–交響曲 : バルビローリ64年のオックスフォード

オックスフォードの記事に書いたようにバルビローリが亡くなったのは1970年のことということで、今日取り上げるアルバムは亡くなる前年、バルビローリ69歳の時の録音です。なおジャケットの左上に "First CD Release" とあるように、この録音は初CD化ということです。

Hob.I:83 / Symphony No.83 "La Poule" 「雌鶏」 [C] (1785)
燻らしたように弦セクションに独特の艶が乗るのがバルビローリ流。冒頭から太い筆で少し崩した書体ながら、力漲る筆致で攻めて来ます。そこここで畳み掛けるような迫力で聴かせながら、テンポは意外に落ち着いています。この弦楽セクションの素晴しい覇気がバルビローリならではです。曲が進むにつれて、テンポはそのまま、テンションは徐々に上がり、エネルギー密度が上がってきます。途中、かなり長めの休符を挟みつつ、のびのびとメロディーラインを描く事で曲の構造を明確に印象づけます。素晴しい覇気!
雰囲気が完全に一転して、ゆったりと深い呼吸のアンダンテに入ります。弦楽器は今度は癒しに満ちた優しいフレーズを奏で、音楽のうねりを静かに描いていきます。この楽章の深く陰影の濃い音楽こそバルビローリの真骨頂。イギリス紳士のジェントルさに満ちた音楽と言えばいいでしょうか。時折バルビローリのものか、うなり声が聴こえます。終盤押しよせる高波のような盛り上がりは波のヴォリューム感を万全にあらわした迫力あるもの。バルビローリの音楽の力に圧倒されます。
メヌエットに入ってもテンポの落ち着きはそのまま。むしろ逆に鎮まったようにも感じる冷静さ。音楽をメヌエットで逆に鎮めようとしているのかもしれません。もちろん音量と覇気は期待通りなんですが、この落ち着き払ったテンポ設定により音楽のフォルムが客観的に浮かび上がってきます。
そしてフィナーレも沸き上がるような興奮、ではなく、こちらも音楽のフォルムの美しさにスポットライトを当てているよう。際立つ陰影と立体感。デフォルメはなく、自然な陰影をサイドライトで浮かび上がらせるように見せています。バルビローリのハイドンの音楽に対する畏敬のようなものが滲み出ているよう。勢いや観客受けを狙った盛り上げ方ではなく。この雌鶏という曲の素晴しい骨格を美しく描くことに集中しているような演奏でした。

やはりバルビローリはバルビローリ。響きの深さは流石なものがあり、弦楽器のコントロールだけでも類いまれな才能を持った人であったことがわかる演奏でした。おそらくバルビローリの声だと想像されますが、後半、なにかつぶやきながら指揮をしているようで、迸り出る表現意欲を感じざるを得ません。バルビローリの得意としていた雌鶏の、最晩年の条件の良い録音ということで、期待した通りの絶品の演奏でした。これは多くの人に聴いていただきたい素晴しい演奏です。評価は[+++++]ですね、やはり。

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