ハイティンク/コンセルトヘボウ管の奇跡、99番(ハイドン)

ベルナルド・ハイティンク(Bernard Haitink)指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲96番「奇跡」、99番の2曲を収めたLP。収録年代は記載されておりませんが、ネットを調べてみると1967年にプレスされたものとの情報がありました。レーベルはPHILIPS。
このLP、PHILIPSのデラックス・シリーズと名付けられたシリーズ物の一枚のようです。ジャケットには、なぜか源氏物語絵巻から飛び出してきたような十二単の女性の姿が。ERATOのBONSAIシリーズの対抗馬のようなキッチュなシリーズです。ジャケットには一部カビが見られるコンディションでしたが、盤面はそこそこ綺麗なので手に入れた次第。帰って愛機THORENSのプレイヤーにのせ、針を落とすと、瑞々しい響きが吹き出しました。コンセルトヘボウでのPHILIPSの空気感溢れる素晴しい響きに圧倒されます。若きハイティンクの覇気も噴出。これはいいです。
つい先日もハイティンクのCD-Rを取りあげましたが、ハイティンクのハイドンは気になります。オケをキリリと引き締め、タイトな響きを引き出すハイティンクの演奏は、ハイドンのちょっと武骨なところをそのまま音楽にするようで、ハイドンの交響曲の本質の一面を突く演奏といえるでしょう。
ということで、これまで取りあげたハイティンクの演奏の一覧はこちら。ハイティンクの略歴などは、クリーヴランド管との記事をご覧ください。
2014/01/20 : ハイドン–交響曲 : ハイティンク/クリーヴランド管 交響曲86番1976年ライヴ(ハイドン)
2011/07/21 : ハイドン–交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ベルリンフィルの95番ライヴ
2011/06/28 : ハイドン–交響曲 : ハイティンク/ドレスデン・シュターツカペレの86番ライヴ!
2011/05/12 : ハイドン–交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ウィーンフィルの時計ライヴ
今回取りあげるのは、まさにハイティンクが長年首席指揮者を務めた、アムステルダム・コンセルトヘボウ管との録音。しかもご本家、PHILIPSによる録音ということで、これまで取りあげたCD-Rなどとは期待度が異なります。
Hob.I:96 / Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
ゆったりと響きわたるオーケストラの序奏。PHILIPS独特の鮮明な響きがスピーカーから溢れ出します。主題に入るとシフトチェンジ。小気味好いほどに軽々としたフレージングでこの曲独特のコミカルなメロディーが進みます。アバドほどの突き抜けた爽快感はないのですが、堅実な響きはハイティンクならでは。ハイティンクのアクセルワークに鮮やかに応じるオケの機能美は素晴しいものがあります。流石コンセルトヘボウといったところ。
アンダンテは、そのままテンポを落として、平常心の演奏。ハイティンク自身がゆったりと響きオケの響きを楽しんでいるよう。素朴な音楽の魅力に溢れた楽章。つづくメヌエットも適度な筋肉美を見せ、あっさりとした表情にとどめるところにハイティンクの美点があるよう。中間部のオーボエのソロの響きの美しいこと。ソロの美しさと続くオケの分厚い響きの対比をそれとなく目立たせる巧みな演出。
この曲のハイライトのフィナーレは、入りの軽さでまたまた演出の上手さが光ります。ステレオ録音ゆえ、フィナーレの左右の掛け合いの効果も見事。オケは流石コンセルトヘボウという素晴しいキレ味。交響曲の醍醐味を十分に表現して終わります。ハイティンクの後年の重厚さよりも、この頃のほうが閃きがあるような気がします。
Hob.I:99 / Symphony No.99 [E flat] (1793)
LPを裏返して、ハイティンクの至芸に相応しい穏やかな曲調の99番。予想どうりの分厚いコンセルトヘボウの響きに冒頭からうっとり。少しスクラッチノイズがありますが、気になるほどではありません。穏やかな流れに徐々にキリリと引き締まるようなメロディーが浮かび上がり、グイグイ推進していきます。ヴァイオリンパートがキレキレ。筋肉質な音楽の魅力が炸裂します。
意外に良いのがこのアダージョ。各楽器の響きが微妙に溶け合いながら掛け合う様子が実に巧みに描かれていきます。ハイティンクのアダージョがここまで深い情感をはらむとは思ってませんでした。穏やかな音楽なのに素晴しい立体感。広大な大草原を鮮明な3D映像で見るよう。遠くの草が風でそよぐわずかな変化が手に取るようにわかります。素晴しい録音によって音楽が鮮明に迫ります。これは名演でしょう。
メヌエットはアムステルダムコンセルトヘボウのホールに響きわたるオケの余韻の美しさに惚れ惚れします。ここでも節度あるハイティンクのコントロールは見事。
フィナーレは奇跡のコミカルさとはことなり、じっくりと燻したような味わいの深いもの。ゆったりと深い間をとり音楽をつないで、ここでもオケの各楽器を鮮明にじっくりと鳴らし分けて素晴しい感興をつくっていきます。実に味わい深い演奏でした。
ハイティンクと手兵アムステルダムコンセルトヘボウ管によるハイドンのザロモンセットからの2曲。ハイティンク38歳という若さでの演奏ですが、オケを完全にコントロールして、ハイドンの素朴な音楽を、ハイティンクらしく節度あるコントロールで、コンセルトヘボウのホールの空気を鳴らすように淡々と描いていく演奏。これまで聴いたハイティンクのハイドンの中では間違いなく最上のもの。若きハイティンクの才能の素晴しさを伝えるアルバムでした。評価はもちろん[+++++]とします。
この演奏、記事を書き終えてから確認してみるとmichaelさんのブログでも取りあげられていますね。リンクしておきましょう。
Micha Lute ブログⅡ:B.ハイティンク:ハイドン交響曲第96番、99番
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