テンシュテット/NDR響の「王妃」ライヴ(ハイドン)
先日ディスクユニオン店頭で発見したテンシュテットのCD-R。

クラウス・テンシュテット(Klaus Tennstedt)指揮の北ドイツ放送交響楽団(North German Radio Symphony Orchestra)の演奏で、シューマンのピアノ協奏曲(独奏:ブルーノ・レオナルド・ゲルバー)、ハイドンの交響曲85晩「王妃」の2曲を収めたCD-R。収録年は不明と記されています。レーベルはCD-Rでは良く見かけるEn Larmes。
店頭で見かけたとき、確かテンシュテットの「王妃」は手元にあるはず、、、ということでiPhoneで所有盤リストを確認すると確かにあり、レビューもしてますが、1976年、ボストン響とのライブでした。ということで迷いなく入手です。ちなみにテンシュテットのハイドンはどうもしても気になるため、これまでもいろいろ取りあげています。
2013/04/04 : ハイドン–交響曲 : テンシュテット/SWR交響楽団の「時の移ろい」
2010/11/20 : ハイドン–交響曲 : テンシュテットの軍隊ライヴ、爆演!
2010/07/16 : ハイドン–交響曲 : テンシュテットの太鼓連打
2010/06/17 : ハイドン–交響曲 : テンシュテットの王妃
2010/06/13 : ハイドン–オラトリオ : テンシュテットの天地創造
2010/06/09 : ハイドン–交響曲 : テンシュテットの57番
今日取り上げる演奏は演奏年不明とあります。早速ネットでいろいろ調べてみると、テンシュテットは北ドイツ放送響の音楽監督に就任した1979年から、1981年にはツアー中に楽団員や事務局と関係が悪化して辞任しています。おそらくこの演奏はその間の録音だと推定されます。
このあと1983年にテンシュテットはロンドンフィルの音楽監督となり、亡くなる1998年の前年までロンドンフィルと名演奏を残しました。ちなみに先日取りあげたコンドラシンの軍隊は、1981年、テンシュテットが北ドイツ放送交響楽団とのコンサートをキャンセルしたため、急遽亡命直後のコンドラシンが代役を務めた時のもの。コンドラシンはこのコンサートのあとホテルで倒れて亡くなっています。いろいろな運命が交錯して時代が流れていたんですね。
このテンシュテットの演奏、CDプレイヤーにかけると、1曲目のシューマンから尋常ならざる迫力。恐ろしい炎のような集中力が素晴しい演奏。ピアノのゲルバーにもこの迫力が乗り移って、奇跡的なコンサートとなったようです。つづく王妃も最初から恐ろしいほどの凝縮感です。CD-Rとは思えない鮮明なライヴ。残響は豊かなのに定位はピンポイント。
Hob.I:85 / Symphony No.85 "La Reine" 「王妃」 [B flat] (1785?)
異様な緊張感を帯びながら、ゆったりと神々しいばかりに序奏が響き渡ります。なんという迫力、オケ全体に張りつめた緊張感にたじろぎます。あまりに堂々とフレーズを奏でられのけぞるよう。オケは完璧なバランスでテンシュテットのコントロールに従っています。このような奇跡的な演奏のあと、不仲でテンシュテットが辞任するのが信じられないほど。オケからエネルギーが噴出しています。王妃がこれほどの迫力を帯びて響くとは思いませんでした。次々とやってくるフレーズの波の変化と機知に圧倒されっぱなし。完璧なプロポーションなのにデフォルメされたような異容なフォルムはまるでミケランジェロの彫刻のよう。この秩序に満ちたハイドンの交響曲が赤熱した鉄のようにエネルギーを帯びます。まさに奇跡的な演奏。
2楽章のロマンツァはオケが穏やかな表情の音楽を奏でていきますが、すぐにの異様なテンションとオケの熱気がそのまま残っていることに気づきます。なぜかフルートのソロが鮮明に浮かびあがります。このソロ、異常な腕前。オケの北ドイツ放送響、素晴しい技術でテンシュテットの指示に応えます。
メヌエットも実に自然なフレージングですが、オケに宿るエネルギーはやはりそのまま。コンサート会場は、まさに異様な熱気につつまれているようです。作為は全く感じず、ただただハイドンの楽譜に従って演奏しているような自然さ。オケの各奏者の息が完全に合って、テンシュテットのタクトに集中しているよう。もしかしたらこの響きをつくるために、過酷なリハーサルが続いたのでしょうか。有無をも言わせぬ素晴しい迫力。
そしてフィナーレは速いテンポに変わるかとおもいきや、むしろ遅めで丁寧なフレージング。力は抜き気味なのがかえって迫力につながっています。オケは盤石。各パートが活き活きと音楽を創っていきます。最後まで一気に聴かせる名演奏でした。拍手はありません。
このテンシュテットと北ドイツ放送響の演奏、間違いなく「王妃」のベストです。CD-Rで入手も容易ではないかと思いますが、この千載一遇の奇跡的な演奏は多くの人の心に響くでしょう。私のテンシュテットとの出会いは昔FM放送で聴いたロンドンフィルとのマーラーの「復活」のライヴ。異様な緊張感が続く、白熱の演奏で、いまでも燃え滾る火の玉のようなあの演奏を思い出します。このハイドンの「王妃」は、マーラーとハイドンという爆発と秩序のような違いはあれど、演奏の根底には恐ろしいまでの集中力から生み出される怒濤の迫力が宿ると言う意味では同じ空気を感じる演奏です。間違いなくテンシュテットのハイドンの演奏のベストと言っていいでしょう。評価は[+++++]。これは人類の遺産です。

クラウス・テンシュテット(Klaus Tennstedt)指揮の北ドイツ放送交響楽団(North German Radio Symphony Orchestra)の演奏で、シューマンのピアノ協奏曲(独奏:ブルーノ・レオナルド・ゲルバー)、ハイドンの交響曲85晩「王妃」の2曲を収めたCD-R。収録年は不明と記されています。レーベルはCD-Rでは良く見かけるEn Larmes。
店頭で見かけたとき、確かテンシュテットの「王妃」は手元にあるはず、、、ということでiPhoneで所有盤リストを確認すると確かにあり、レビューもしてますが、1976年、ボストン響とのライブでした。ということで迷いなく入手です。ちなみにテンシュテットのハイドンはどうもしても気になるため、これまでもいろいろ取りあげています。
2013/04/04 : ハイドン–交響曲 : テンシュテット/SWR交響楽団の「時の移ろい」
2010/11/20 : ハイドン–交響曲 : テンシュテットの軍隊ライヴ、爆演!
2010/07/16 : ハイドン–交響曲 : テンシュテットの太鼓連打
2010/06/17 : ハイドン–交響曲 : テンシュテットの王妃
2010/06/13 : ハイドン–オラトリオ : テンシュテットの天地創造
2010/06/09 : ハイドン–交響曲 : テンシュテットの57番
今日取り上げる演奏は演奏年不明とあります。早速ネットでいろいろ調べてみると、テンシュテットは北ドイツ放送響の音楽監督に就任した1979年から、1981年にはツアー中に楽団員や事務局と関係が悪化して辞任しています。おそらくこの演奏はその間の録音だと推定されます。
このあと1983年にテンシュテットはロンドンフィルの音楽監督となり、亡くなる1998年の前年までロンドンフィルと名演奏を残しました。ちなみに先日取りあげたコンドラシンの軍隊は、1981年、テンシュテットが北ドイツ放送交響楽団とのコンサートをキャンセルしたため、急遽亡命直後のコンドラシンが代役を務めた時のもの。コンドラシンはこのコンサートのあとホテルで倒れて亡くなっています。いろいろな運命が交錯して時代が流れていたんですね。
このテンシュテットの演奏、CDプレイヤーにかけると、1曲目のシューマンから尋常ならざる迫力。恐ろしい炎のような集中力が素晴しい演奏。ピアノのゲルバーにもこの迫力が乗り移って、奇跡的なコンサートとなったようです。つづく王妃も最初から恐ろしいほどの凝縮感です。CD-Rとは思えない鮮明なライヴ。残響は豊かなのに定位はピンポイント。
Hob.I:85 / Symphony No.85 "La Reine" 「王妃」 [B flat] (1785?)
異様な緊張感を帯びながら、ゆったりと神々しいばかりに序奏が響き渡ります。なんという迫力、オケ全体に張りつめた緊張感にたじろぎます。あまりに堂々とフレーズを奏でられのけぞるよう。オケは完璧なバランスでテンシュテットのコントロールに従っています。このような奇跡的な演奏のあと、不仲でテンシュテットが辞任するのが信じられないほど。オケからエネルギーが噴出しています。王妃がこれほどの迫力を帯びて響くとは思いませんでした。次々とやってくるフレーズの波の変化と機知に圧倒されっぱなし。完璧なプロポーションなのにデフォルメされたような異容なフォルムはまるでミケランジェロの彫刻のよう。この秩序に満ちたハイドンの交響曲が赤熱した鉄のようにエネルギーを帯びます。まさに奇跡的な演奏。
2楽章のロマンツァはオケが穏やかな表情の音楽を奏でていきますが、すぐにの異様なテンションとオケの熱気がそのまま残っていることに気づきます。なぜかフルートのソロが鮮明に浮かびあがります。このソロ、異常な腕前。オケの北ドイツ放送響、素晴しい技術でテンシュテットの指示に応えます。
メヌエットも実に自然なフレージングですが、オケに宿るエネルギーはやはりそのまま。コンサート会場は、まさに異様な熱気につつまれているようです。作為は全く感じず、ただただハイドンの楽譜に従って演奏しているような自然さ。オケの各奏者の息が完全に合って、テンシュテットのタクトに集中しているよう。もしかしたらこの響きをつくるために、過酷なリハーサルが続いたのでしょうか。有無をも言わせぬ素晴しい迫力。
そしてフィナーレは速いテンポに変わるかとおもいきや、むしろ遅めで丁寧なフレージング。力は抜き気味なのがかえって迫力につながっています。オケは盤石。各パートが活き活きと音楽を創っていきます。最後まで一気に聴かせる名演奏でした。拍手はありません。
このテンシュテットと北ドイツ放送響の演奏、間違いなく「王妃」のベストです。CD-Rで入手も容易ではないかと思いますが、この千載一遇の奇跡的な演奏は多くの人の心に響くでしょう。私のテンシュテットとの出会いは昔FM放送で聴いたロンドンフィルとのマーラーの「復活」のライヴ。異様な緊張感が続く、白熱の演奏で、いまでも燃え滾る火の玉のようなあの演奏を思い出します。このハイドンの「王妃」は、マーラーとハイドンという爆発と秩序のような違いはあれど、演奏の根底には恐ろしいまでの集中力から生み出される怒濤の迫力が宿ると言う意味では同じ空気を感じる演奏です。間違いなくテンシュテットのハイドンの演奏のベストと言っていいでしょう。評価は[+++++]。これは人類の遺産です。
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