ハイティンク/クリーヴランド管 交響曲86番1976年ライヴ(ハイドン)

ベルナルド・ハイティンク(Bernard Haitink)指揮のクリーヴランド管弦楽団(Cleveland Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲86番、マーラーの交響曲9番!の2曲を収めたCD-R、ハイドンの収録は1976年2月27日、クリーヴランド管の本拠地、セヴェランスホールでのライヴとありますが、裏面では何と2月11日とあります。どちらが本当かわかりません。レーベルははじめて手にする米Don Industrialeとしゃれた名前のCD-Rレーベル。
ハイティンクはハイドンの録音をほとんど残していませんが、おそらく専属契約だったPHILIPSではネヴィル・マリナーとコリン・ディヴィスの録音が大量にあり、レパートリーが重なっていたからでしょう。ただし、コンサートのライヴを記録したCD-Rはいろいろリリースされており、コンサートではハイドンをよく取りあげていた可能性があります。当ブログでも見かける度に手に入れたり借りたりしてレビューしています。
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これまで、取りあげた演奏は1989年が最も古く、あとは2000年代に入ってからのもの。今日取り上げる86番は1976年でしかもアメリカのオケということで、ハイティンクの若々しい指揮振りが聴かれるかどうかといったところがポイントでしょう。
以前の記事でもハイティンクの略歴などにふれていなかったため、少し調べてみましょう。
1929年、オランダ、アムステルダム生まれの指揮者。アムステルダム音楽院で学び、最初はヴァイオリニストとしてオーケストラに加わっていたが、1954年から55年にかけてフェルディナント・ライトナーに師事し指揮を学んだそう。デビューは1954年、オランダ放送組合管弦楽団(現オランダ放送フィル)のコンサートで、1955年には副指揮者、1957年には首席指揮者となりました。そして、その後長年つれそうことになるアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の指揮をはじめてまかされたのがジュリーニの代役として1956年のこと。その後1959年にエドゥアルト・ファン・ベイヌムの急死により、名門アムステルダム・コンセルトヘボウの第1指揮者に名をつらね、1961年には首席指揮者となりました。このときハイティンク32歳ということで異例の大抜擢でしょう。コンセルトヘボウとは1988年まで、その後1967年から79年までロンドンフィルの首席指揮者、1978年から88年までグラインドボーン音楽祭の音楽監督、1987年から2002年までロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督など著名なポストを歴任しました。2006年からはシカゴ交響楽団の首席指揮者を務めています。
このアルバムの演奏当時はアムステルダム・コンセルトヘボウ管の首席指揮者時代。一方オケのクリーヴランド管は黄金期を築いたセルが1970年に亡くなり、1972年からはマゼール時代に入り、第二の繁栄期でした。アメリカでも指折りのオケに実力派ハイティンクが客演した期待のコンサートということでしょう。
Hob.I:86 / Symphony No.86 [D] (1786)
録音はそこそこ鮮明ですが、時代なりの粗さもあります。テープヒスノイズがちょっと目立ちますでしょうか。会場の物音も程よく聴こえる臨場感を感じる録音。冒頭からハイティンクらしい筋骨隆々とした演奏。音楽の骨格をきっちり描くハイティンクならでは引き締まった音楽。オケの隅々までハイティンクのコントロールが行き届いて、音のキレは抜群。弦楽器陣のボウイングが全員きれいにそろって、統率が行き届いています。音量を上げると引き締まったリズムの刻みが痛快。巨木から鋭い鉈で彫像が一気に掘り出される瞬間を見るよう。背筋がピンと伸びる緊張感が漲ります。鉈を次々に打ち込み、彫像があらわになります。見事すぎる1楽章。50歳を前にした全盛期のハイティンクの覇気がスピーカーから伝わってきます。
つづくラルゴは緊張感を保ちながら、引き締まった音楽が続きます。ゆったりとした雰囲気はなく、一音一音に緊張感が漲ります。音量をかなり緻密にコントロールして、ダイナミクスは抑えながら、それでもなぜか彫りの深い険しい表情をつくっていきます。テンポは落としているのに、ゆったりとした音楽とは対極にある緊張感。
楽章間の咳払いと調弦のようすが、会場の緊張感をつたえます。
メヌエットもハイティンクらしい、純音楽的なもの。よく鍛えられたオケが楔を打つように音を刻んでいきます。この響きの純度の高さこそがハイティンクのもとめる音楽の骨格なんでしょう。
やはりクライマックスはフィナーレにありました。これまでの演奏も筋骨隆々としたものでしたが、フィナーレは力感が2段上がり、水際立った迫力で音塊が飛んできます。徐々にドライブがかかり、荒々しいほどのエネルギーが噴出。ハイティンクはここでも冷静沈着にオケをコントロールして、オケが乱れることもありません。クライマックスに向けて、オケは恐ろしいばかりの覚醒したようなキレを聴かせます。最後はまだ力感を増す余地があったかと驚くほどエネルギーが集中。恍惚とするほどのクライマックス。ブラヴォー!
やはりハイティンクはオケを鳴らすツボを押さえていますね。華やかさはないのですが、聴くものをグイグイと引き込む迫力ある響きを巧みに造っていきます。特にこの86番はハイティンクも得意としていたのでしょう、ハイティンクの芸風がビシッと決まる曲です。以前取りあげたドレスデン・シュターツカペレとの2004年のライヴもよかったんですが、このクリーヴランド管との76年のライヴはそれを上回る純粋な力感が楽しめます。いやいや、こうゆう86番を聴いてしまうと、古楽器や最近のオケは力感では太刀打ちできませんね。もちろん評価は[+++++]です。
ハイティンクには「悲しみ」のライヴもあるようなので、気長に探してみたいと思います。
なお、このアルバムの後半以降はマーラーの9番。これもまた鬼気迫るスゴイ演奏です。アルバムのメインはマーラーですよね、普通(笑)
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