ロータス・カルテットの五度、Op.20のNo.4(ハイドン)

今日は日本のクァルテッットによる弦楽四重奏曲。

LotusSQ_76.jpg
HMV ONLINEicon / amazon

ロータス・カルテット(Lotus String Quartet, Stuttgart)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76のNo.2「五度」、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲Hess34(ピアノソナタ9番の編曲)、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.4の3曲を収めたアルバム。収録はOp.20が2012年11月28日、その他が12月5日、東京の品川区立五反田文化センターの音楽ホールでのセッション録音。レーベルは日本のLIVE NOTES。

ロータス・カルテット(本来シュツットガルト・ロータス弦楽四重奏団と訳すのでしょうが、下に掲載した音楽事務所の記載にあわせています)は1992年に結成されたクァルテット。翌93年に大阪国際室内楽コンクールで3位入賞しました。95年にドイツに渡り、シュツットガルト音楽大学に入学し、メロス四重奏団に師事。その後、97年にロンドン国際弦楽四重奏コンクールでメニューイン特別賞、パオロ・ボルチアーニ国際弦楽四重奏コンクールで3位になる等の実績を残しています。現在1人だけ外人の男性がメンバーとなっていますが、彼は2005年にシュツットガルト弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンだったマティアス・ノインドルフ。活動の舞台はヨーロッパらしく、2006年の来日が久々の来日。2008、2012年と来日しているようですが、2012年は結成20周年ツアーということでNHKのテレビでも放送されたと言う事です。

コジマ・コンサートマネジメント:ロータス・カルテット

ということで、ご存知の方はご存知なんでしょうが、私はまったくはじめて聴くクァルテット。ハイドンが2曲も入ったアルバムを出されては、放っておく訳には参りません。メンバーは次の通り。

第1ヴァイオリン:小林 幸子(Sachiko Kobayashi)
第2ヴァイオリン:マティアス・ノインドルフ(Mathias Neundorf)
ヴィオラ:山崎 智子(Tomoko Yamasaki)
チェロ:齋藤 千尋(Chihiro Saito)

Hob.III:76 / String Quartet Op.76 No.2 "Quintenquartetett" 「五度」 [d] (1797)
冒頭からかなりタイトでハイテンションな響き。オンマイクで鮮明に録られた直接音重視の録音。間近で4人が弾いているような近接定位。1楽章は速めのテンポでグイグイ畳み掛けるような演奏。まさに大上段に構えた正攻法の演奏。第1ヴァイオリンの小林幸子さんのキレのよい弓さばきが印象的。
つづくアンダンテに入ると、リラックスした雰囲気に変わりますが、音楽が濃くなるわけではなく、なんとなく淡々とした演奏。もう少し沈むといいなと思いつつ聴き進むうちに第1ヴァイオリンの奏でる音楽に突然光がさすような輝き。徐々にヴァイオリンのプレゼンスが上がってきます。
メヌエットは日本人らしい、カッチリとした線が通った演奏。若干几帳面すぎるような印象も感じさせますが、ダイナミックさよりはクリアに響かせることを意図しているよう。綺麗に鉋のかかった垂木の連続する様を見るような細やかな肌合いの規則正しさを感じさせます。
そしてフィナーレに入ってもこの透明感を感じさせる印象は一貫しています。表現は一歩踏み込んできますが、クッキリした和風の良さを感じさせる響きは変わらず。良く聴くと録音のバランスの問題か、チェロの音量がかなり控えめ。これがガラス細工のようなカッチリとした響きの印象に大きな影響があるのでしょう。ヴァイオリンの高音主体のクッキリとした響きが耳に残ります。

Hob.III:34 / String Quartet Op.20 No.4 [D] (1772)
録音日は異なりますが、響きの質は変わりません。前曲よりも25年も前の作曲になりますが、曲のスタンスは落ち着きはらって、構成感でも負けていません。曲の構成をより深く表現しているようで、沈む所は沈み、輝くところは輝く、なかなかメリハリの効いた演奏。生々しい弦楽器の音色の迫力が良く伝わる録音。
アダージョに入ると、前曲で比較的淡々としていたのと異なり表現が深くなります。そしてしばらくすると、今まで大人しかったチェロが雄弁に語りはじめ、渋い美音を轟かせるように。ひとつひとつの楽器の存在がクッキリと浮かび上がりながら、アンサンブルのラインもきちんとそろって、なかなかの精度。一人一人のメリハリがきっちりついているからこその存在感でしょう。このアルバムの聴き所。
短い弾むメヌエットを挟んで、フィナーレはハイドンのフィナーレの面白さの詰まった缶詰のような曲。疾風のような速度で、様々な機知が詰め込まれた曲を、ロータス・カルテットはまさに畳み掛けるのを楽しむような展開。テクニックは十分で、変化に富んだ曲の、一つ一つのフレーズを変化させながらグイグイ進めていきます。良い意味で粗さも感じさせて、最後は上手くまとめて終わります。

はじめて聴く、ロータス・カルテットのハイドンは、超hi-fi録音による、極めてリアルな弦楽四重奏の響きに撃たれるようなハイドン。もう少しゆったりとメロディーを楽しみ、曲をどう弾くかを余裕あるスタンスで楽しみたいという気にもさせるような、ストイックな印象も感じました。これは鮮明な録音のせいでもあり、また、このロータス・カルテットの個性でもあるのでしょう。人によって評価が割れるアルバムかもしれません。タイトに攻めるハイドンが好きな方にはなかなかの演奏。逆にハイドンの曲の美しいメロディと構成を楽しみたい方にとっては、ちょっとテンションが高すぎるかもしれません。私の評価は両曲とも[++++]としておきます。この演奏の素晴らしさを認めた上で、もう一段の余裕があればと思います。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.76 五度 弦楽四重奏曲Op.20

コメントの投稿

非公開コメント

No title

ごぶさたしています。
当カルテットは、シューマンのSQ全集(といっても3曲を1枚のCDに収録)が愛聴盤です。
このハイドンの前にはベートーヴェンのラズモフスキー(op.59)3曲が出ています。
シューマン録音ん後に、第二vn.が替わっているかな・・・
メロスSQの直弟子ということで、質実剛健というかハイドンお得意の様式美や構成感を
良く再現しているのでは・・・と拝察します。一方で、甘美な音色のタイプ・・・では無いよう
ですね。

Re: No title

だまてらさん、コメントありがとうございます。
まだまだ、知らないクァルテットがたくさんありますね。このロータスも、随分実績があるようですが、私は知りませんでした。ヨーロッパを中心に長く活動をしてるようですが、東京クァルテット同様、張り詰めた緊張感が特徴のようですね。クァルテットごとにそれぞれの世界があり興味は尽きません。継続して発掘に努めます(笑)
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

最新記事
カテゴリ
ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものはリスト冒頭に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

登録曲数:1,365
登録演奏数:11,529
(2019年3月31日)
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

ピアノ協奏曲XVIII:4軍隊ヒストリカル交響曲93番交響曲70番ピアノ協奏曲XVIII:11交響曲80番交響曲81番トランペット協奏曲ヴァイオリンとピアノのための協奏曲XVIII:6悲しみロンドンオックスフォードモーツァルト交響曲4番ヨハン・クリスチャン・バッハピアノソナタXVI:51豚の去勢にゃ8人がかりピアノ三重奏曲十字架上のキリストの最後の七つの言葉スカルラッティヘンデルラモーバッハ驚愕ショスタコーヴィチシェーンベルク弦楽四重奏曲Op.76ドヴォルザークベートーヴェン交響曲75番チェロ協奏曲ホルン協奏曲古楽器時計弦楽四重奏曲Op.50アンダンテと変奏曲XVIII:6弦楽四重奏曲Op.54弦楽四重奏曲Op.64弦楽四重奏曲Op.20天地創造ヴォルフレスピーギヨハン・シュトラウスリヒャルト・シュトラウスタリスリゲティ交響曲10番ピアノソナタXVI:49迂闊者交響曲54番ネルソンミサバリトン三重奏曲トマジーニピアノソナタXVI:52交響曲2番ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:46日の出皇帝弦楽四重奏曲Op.71交響曲88番ブルックナーベルリオーズナッセンベンジャミンウェーベルンメシアンシェルシグリゼーヴァレーズOp.20弦楽四重奏曲交響曲67番交響曲65番交響曲9番交響曲39番狩り交響曲73番交響曲61番リームピアノソナタXVI:6ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:48アンダンテと変奏曲XVII:6四季交響曲全集ラヴェルリムスキー・コルサコフピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:44ピアノソナタXVI:45第九太鼓連打交響曲99番ボッケリーニシューベルト交響曲5番ストラヴィンスキーチャイコフスキーライヴ弦楽四重奏曲Op.2序曲ヴィヴァルディオペラ序曲パイジェッロアリア集ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6すみだトリフォニーホールピアノソナタXVI:34ブーレーズサントリーホール弦楽四重奏曲Op.74騎士オルランド無人島哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ変わらぬまことアルミーダチマローザ英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:1ピアノ協奏曲XVIII:3交響曲3番ラメンタチオーネアレルヤ交響曲79番チェロ協奏曲1番交響曲27番交響曲19番交響曲58番紀尾井ホールドビュッシーミューザ川崎協奏交響曲オーボエ協奏曲LPヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:38ピアノソナタXVI:29スタバト・マーテルピアノソナタXVI:39マーラー告別交響曲90番交響曲97番交響曲18番奇跡ひばりフルート三重奏曲交響曲102番交響曲86番ヴァイオリン協奏曲哲学者ミサブレヴィスニコライミサ小オルガンミサ交響曲95番交響曲78番ピアノソナタXVI:23王妃武満徹ライヴ録音SACDマリア・テレジア交響曲21番クラヴィコードBlu-ray東京オペラシティ交響曲11番交響曲12番交響曲15番交響曲37番交響曲1番ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:3ディヴェルティメント東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:35ロッシーニドニぜッティライヒャ弦楽三重奏曲東京文化会館フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.9弦楽四重奏曲Op.17剃刀弦楽四重奏曲Op.103弦楽四重奏曲Op.77ピアノソナタXVI:26ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:31アレグリバードモンテヴェルディパレストリーナ美人奏者ピアノ協奏曲XVIII:7アコーディオンスコットランド歌曲ヴェルナーガスマンピアノソナタXVI:24交響曲51番交響曲35番交響曲46番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3ラ・ロクスラーヌ帝国ハイドンのセレナード五度ラルゴラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス時の移ろい交響曲42番ベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番リュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏冗談ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2ロンドン・トリオモテットドイツ国歌カノンオフェトリウムよみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ベルク主題と6つの変奏オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノ交響曲57番交響曲68番リラ・オルガニザータ協奏曲交響曲50番交響曲89番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生ピアノソナタXVI:47bisピアノ小品音楽時計曲ピアノソナタXVI:11カートリッジ雅楽プロコフィエフサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲91番交響曲66番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭変奏曲XVII:7ピアノソナタXVI:22天地創造ミサジャズ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲62番交響曲108番交響曲107番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲声楽曲カンタータ戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽ピアノソナタ

タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
11 | 2019/12 | 01
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
117位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
11位
アクセスランキングを見る>>
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

大家さんFC2のクラシックブログランキング。

おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)






twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ