作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

シュパンツィヒ四重奏団の弦楽四重奏曲集Vol.1(ハイドン)

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先日取りあげたシュパンツィヒ四重奏団の最新盤が良かったので、未入手の2枚を注文していて入荷したもの。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

シュパンツィヒ四重奏団(Schuppanzigh Quartet)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.9のNo.6、Op.74のNo.1、Op.50のNo.6「蛙」の3曲を収めたアルバム。収録は2007年12月5日から8日にかけて、ベルリンのポツダムに近いヴァン湖のほとりにあるアンドレアス教会でのセッション録音。レーベルはベルギーの名門ACCENT。

以前取りあげた記事はこちら。

2013/10/21 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : 【新着】シュパンツィヒ四重奏団の弦楽四重奏曲集

以前取りあげたアルバムは2011年の録音ですが、この間、チェロの奏者が変わっています。このアルバム録音時のメンバーは以下のとおり。

第1ヴァイオリン:アントン・シュテック(Anton Steck)
第2ヴァイオリン:フランク・ポールマン(Franc Polman)
ヴィオラ:クリスティアン・グーセンズ(Chiritian Goosses)
チェロ:アンティエ・ゴイセン(Antje Geusen)

クァルテットの情報は前記事をご覧ください。この頃のチェロ奏者は女性のアンティエ・ゴイセン。両演奏の間の違いは、このクァルテット最初のハイドンのアルバムということで4年の月日の経過と、チェロ奏者の違いとなります。以前のアルバムのクッキリとメロディーラインが浮かび上がる素晴しい演奏が聴かれるでしょうか。

Hob.III:24 / String Quartet Op.9 No.6 [A] (c.1769-70)
シュトルム・ウント・ドラング期の作品。Op.9はこれまであまり取りあげてきませんでしたので、ちょうどいいでしょう。後年の成熟した筆致の曲とは異なり、ディヴェルティメントと呼ばれていた頃のもの。広い教会堂の残響が適度に乗った美しい響き。前アルバムと同様、伸び伸びとした古楽器が、クッキリと楽天的でさえあるようにフレーズを重ねて行く演奏。1楽章の小気味好い闊達な響きと、2楽章のメヌエットの陰りのある陰影。アダージョではアントン・シュテックのヴァイオリンの美しい伸び伸びとした高音の音色がたまりません。静謐感がある引き締まった響き。抑えた表情も素晴しいですね。フィナーレはアントン・シュテックが軽々と駆け上がるような音階をこなし、小気味好いことこの上なし。素晴しいキレで曲を結びます。シュパンツィヒ四重奏団、ハイドンの1枚目からキレてました。

Hob.III:72 / String Quartet Op.74 No.1 [C] (1793)
だいぶ時代が下って聴き慣れた名曲。変に凝ったところなく、美しい響きで曲を流麗に描いて行きます。もちろんシュテックのヴァイオリンの音色は相変わらず磨き抜かれて最高。他の3人も見事に追随して、アンサンブルの精度も悪くありません。やはり抑えた部分とクッキリ描く部分の対比が良いので、非常に立体感を感じる演奏。ただ、ちょっと楽天的に過ぎて、この曲の深みのようなものが欠けているという気がしなくもありません。
2楽章のアンダンティーノに入っても流麗さは変わらず、軽いタッチで淡い音楽を描いていきます。そして、メヌエットも同様。響きの美しさとアンサンブルの精妙さは保っているものの、楽章の対比がもう少し欲しいと思うのは私だけでしょうか。フィナーレまで一貫して一気に持って行く感じ。最後の盛り上げ方は流石。

Hob.III:49 / String Quartet Op.50 No.6 "Frosch" 「蛙」 [D] (1787)
フィナーレのバリオラージュ奏法による不思議な響きによって「蛙」と名前がついた曲。この曲でも冒頭から楽天的な雰囲気を感じさせながら、速いテンポで曲の織りなす綾を表現していきます。軽々と速いパセージをこなしていくところのテクニックは流石なところです。疾風のような勢いで1楽章をこなします。
2楽章のポコ・アダージョに入ると、テンポをようやく落とし、しっとりとした表情の演奏に戻ります。少し曲の構造を感じさせるメリハリがついて、曲の陰影もはっきりしてきます。フレーズごとに微妙に明るさと陰りをコントロールして深みを表現していきます。
2楽章がちょっと沈んだので、メヌエットは軽いものの引き立ちます。そして印象的な響きのフィナーレは、シュパンツィヒの響きの良さが曲想に合っています。伸び伸びと美しいヴァイオリンの響きと、コミカルなメロディーの語り口の上手さが相俟って、なかなかの味わい。アントン・シュテックの妙技が光ります。

シュパンツィヒ四重奏団のハイドンの弦楽四重奏曲集のVol.1。古楽器の腕利き奏者ぞろいのクァルテットによって、ハイドンの弦楽四重奏曲の軽妙洒脱な面白さをうまく表現した演奏といって良いでしょう。先日レビューした最新盤と演奏スタイルは大きく変わらないものの、こちらの方が、軽さと勢いがある代わりに、クッキリとした精妙さと陰影は最新盤に分があるといったところでしょう。古楽器によるハイドンの弦楽四重奏曲の演奏としては万人にお薦めできる内容です。評価はOp.74のNo.1のみ[++++]、他2曲は[+++++]とします。

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