作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ルドルフ・ケンペ/ベルリンフィルの校長先生ライヴ(ハイドン)

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TESTAMENTの新譜。いつもながら、モノクロームのジャケットから浮かび上がる奏者の写真がえも言われぬ味わい。つい手を出してしまう好企画。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ルドルフ・ケンペ(Rudolf Kempe)指揮のベルリンフィルの演奏で、ハイドンの交響曲55番「校長先生」、ベートーヴェンののピアノ協奏曲4番(独奏:ニキタ・マガロフ)、モーツァルトの交響曲39番の3曲を収めたアルバム。収録は1962年8月16日、ザルツブルクのモーツァルテウムでのライヴ。レーベルは復刻にかけては第一線の英TESTAMENT。

このアルバム、まさに入荷したてのもの。冒頭に触れたTESTAMENT独特のジャッケットに、ザルツブルク音楽祭の赤いロゴマークが燦然と輝き、演奏当時の空気をそのまま運んでくれそうな素腹らしいプロダクション。ジャケットから音楽が溢れ出してくるようです。

ケンペのハイドンの録音は少ないながらも、いくつか取りあげています。

2011/07/05 : ハイドン–交響曲 : ルドルフ・ケンペ/フィルハーモニア管1956年のロンドン
2010/10/10 : ハイドン–交響曲 : ルドルフ・ケンペのロンドン

何れもロンドンですが、フィルハーモニア管とBBC交響楽団との演奏。今回は相手がベルリンフィルで、ザルツブルク音楽祭のライヴということで、俄然期待が高まります。

Hob.I:55 / Symphony No.55 "Der Schulmeister" 「校長先生」 [E flat] (1774)
録音はモノラル。残念ながらかなりカマボコ型のハイ落ち、ロー落ちの録音。安定感は悪くありません。ヴォリュームを上げて演奏会場の雰囲気に近づけるよう調整。ハイドンの中期の交響曲のシンプルながら面白い表情をさらりと聴かせながら、流れの良さを印象づける正統派のもの。録音がもう少しリアリティがあれば、かなり楽しめる演奏でしょう。録音を脳内で補正して聴くと、小曲ながら表情の多彩さ、快活さはなかなかのもの。1楽章はテンポ感の良さで聴かせきってしまいます。
続くアダージョに入ると、録音のハンディがあまり目立たなくなり、ゆったりした音楽に集中することができます。校長先生という曲名の元になった規則正しい音楽。そのメロディが次々と変奏として重なりますが、その表情が実にいい。メロディーが活き活きとして、表情豊か。オケは一糸乱れることなくケンペのコントロールに忠実にメロディーを置いていきます。いつも火を噴くベルリンフィルもケンペに完全に掌握されてます。この統率力は見事で、シンプルな曲に素晴しく豊かなニュアンスが重なります。
メヌエットも旋律はシンプルなものながら、ケンペの手にかかると、その旋律が活き活きと躍動します。曲の核心をつく解釈。力が抜けているのに音楽は躍動します。途中でチェロのソロが登場しますが、軽々とした弓さばきが見事。ケンペ独特の穏やかながら活気あるコントロール。
フィナーレは敢えて力をかなり抜いて、羽毛布団のような肌触りでコミカルなメロディーを重ねていきます。このスタンスこそケンペらしいところでしょう。音楽に潜む本質的な気配を汲みとり、音にして行くセンスの鋭敏さ。この曲の機知を見事に捉えています。最後に突然クリアになってフィニッシュ。観客もそれに反応して拍手まで音楽のよう。

つづくベートーヴェンの4番のコンチェルトに入ると、ニキタ・マガロフのピアノが驚くほど鮮明に響いてビックリします。これは鮮明な録音。オケは校長先生と同様ですが、ピアノの鮮明さは驚くほど。味わい深いピアノが印象的。
そしてモーツァルトの39番は独特の高揚感と燻し銀の響きに痺れます。これも名演奏。

1962年と言えば私の生まれた年。今から51年前、ザルツブルク音楽祭の行われたモーツァルテウムの空気がそのまま家に届くような雰囲気のアルバムです。この日のコンサートではハイドンの校長先生は前座的な位置づけですが、すこしぼやけた録音を通しても、その粋な演奏の真髄は伝わります。ケンペと言う指揮者の誠実かつ曲に対する謙虚な姿勢がつたわる良いアルバムです。校長先生の評価は、録音の分差し引いて[++++]というところでしょう。このアルバム、やはり聴き所はベートーヴェンとモーツァルトです。51年前のザルツブルクを想像しながら楽しみました。

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