作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ダリア・グロウホヴァのピアノソナタ集(ハイドン)

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新着アルバムが続きます。リリースされたのは少し前でしたが、HMV ONLINEから最近届きました。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ダリア・グロウホヴァ(Daria Gloukhova)のピアノによるハイドンのピアノソナタ4曲(Hob.XVI:39、XVI:32、XVI:31、XVI:12)と、ピアノ協奏曲(XVIII:11)のあわせて5曲を収めたアルバム。協奏曲の伴奏はパヴェル・ゲルシュタイン(Pavel Gerstein)指揮の管弦楽団との表記。録音用の臨時編成のオケでしょうか。収録は2011年12月、モスクワ議会議事堂のラジオ放送収録第1スタジオでのセッション録音。レーベルは米ルイジアナ州バトン・ルージュのCENTAUR。

このアルバム、久々にジャケットから怪しい妖気が立ちのぼっております(笑)。アイドル系というには少々個性的なグロウホヴァがほくそ笑む、なかなかインパクトのあるジャケット。

ライナーノーツによると、グロウホヴァは1986年,モスクワ生まれのピアニスト。まだ27歳と言う若さ。ゴルバチョフがソ連共産党書記長に就任したのが1985年、そしてベルリンの壁崩壊が1989年ですので、まさにモスクワは激動のさなかにあった時代に生まれた人。モスクワのチャイコフスキー音楽院で学び、20歳になる2006年からプロの演奏家として活躍しているそうです。ネットを探すと、彼女のサイトがありました。

Russian Pinanist Daria Gloukhova

アルバムは、今日取り上げるアルバムと同じCENTAURから他に2枚リリースされていますが、モーツァルト、フンメル、メンデルスゾーン、グリーグなど、比較的軽めのものが多いようで、このハイドンのアルバムが3枚目。amazonをみると、4枚目もリリースされ、これもハイドンのようです。

アメリカのデキシーランドジャズの聖地、ニューオーリンズに近い街にあるレーベルが、ロシア人の若手ピアニストを起用して、古典の本流ハイドンの曲のレコーディングをモスクワで行うという平和な時代のアルバム。果たしてどのような音楽が流れてくるのか、興味津々です。

Hob.XVI:39 / Piano Sonata No.52 [G] (1780)
最新の録音のものだけにピアノの艶やかな音色が鮮明に収められています。女性らしい軽やかさ、流れるようなタッチでハイドンの曲を自然な響きで紡いで行きます。曲の構造を意識させる事なく、詩的に柔らかな表情を表現することを狙っているよう。最近聴いたワリド・アクルやギャリック・オールソンとは全く異なるアプローチ。女性ならではの繊細かつ自然なソノリティーがなかなかいいですね。なんとなくショパンをイメージさせる演奏です。
アダージョに入ると、音階を崩しながら本当にショパンの曲を聴いているような気にさせる、くだけた表現。ちょっとロシア人ピアニストというイメージではなくフランスの人のような印象。独特のセンスを持ち合わせているようですね。じつに優雅で華麗な時間。
フィナーレは、高音の透明感溢れる響きの美しさにため息が出ます。独墺系のピアニストとはまったく異なるアプローチ。転がるような高音の魅力はこの人の持ち味でしょう。キレを聴かせるためではなく、情感濃く音楽を奏でるためのキレは持ち合わせているよう。なかなかいいかもしれません。

Hob.XVI:32 / Piano Sonata No.47 [b] (1776 or before)
聴き慣れた曲ですが、これまで聴いたどの演奏とも異なる詩的な入り。と思ったところで、突然強烈なギアチェンジで爆速に。再び詩的な音楽に戻るなど、こちらの脳髄直撃の変化球を投げてきます。ハイドンの楽譜の奥に潜む、ハイドン自身も考えつかなかった音楽を掘り出そうとしているようなアプローチ。これだけテンポの変化の激しいこの曲ははじめて聴きます。
つづくメヌエットではハイドンの曲が持つ美しさを踏まえて、再び詩情溢れる演奏。高音の美しいメロディーを訥々と奏でていくのを得意としているようですね。強奏の部分の盛り上げる演出も非常に巧み。前振りないアタックは一切なく、しなやかさを保ちながらの駆け引きが続きます。
フィナーレは個性的。転がるように滑らかな右手音階と、くっきりとしたアクセントの織りなす音楽の豊かさ。他の誰の演奏とも似ていない個性は流石なところ。キレよくさっぱりした印象もありながら、これだけの個性的な余韻をのこすあたり、かなりのキレ者であることは間違いありません。

Hob.XVI:31 / Piano Sonata No.46 [E] (1776 or before)
すっかりグロウホヴァの魅力にハマったようです。これだけ個性的な演奏ながら、ハイドンの曲の演奏として、表現の範囲を逸脱しているという印象はありません。力感と機知のバランスも良く、この人が今後成熟していくことで、この表現がどこまで深まるか楽しみな存在です。曲が進むにつれて、めくるめく音楽にどっぷり浸ります。この曲でも、意外にダイナミックな表現を見せたり、かと思うとフィナーレではコミカルなリズムの面白さを際立たせたりと音楽を造っていくのが上手い所を印象づけます。

Hob.XVI:12 / Piano Sonata No.12 [A] (before 1765)
ぐっと時代を遡った初期の軽い曲。ころがるような高音の美しい響きから紡ぎ出される素朴なメロディーに聴き入ります。まるで水仙の群落の甘い香りに包まれているような気分にさせられる華麗な音楽。続くメヌエットは前半でタッチのキレのよさを印象づけ、中盤でしっとりと濡れたようなデリケートなタッチに変化。なかなか表現の幅が広く、この小曲を飽きさせません。フィナーレも手堅くまとめて聴かせ上手ぶりが際立つ演奏でした。

協奏曲も続けたいのですが、今日はここらで時間切れ。またの機会に取りあげることにいたしましょう。

ダリア・グロウホヴァのピアノ、最近聴いたハイドンのピアノソナタの中では、詩情の濃さでは一番でしょう。独特の雰囲気のあるピアノは、男性ピアニストとは明らかに異なる、女性ならではのほんのりと色香の漂うピアノでした。まだ若いのにこの香しさはなんでしょう。このまま円熟を重ねるとハスキル並みの個性的なピアニストになりそうな予感がします。今日聴いたソナタはどれも個性的な演奏で、その音楽性も確かなものでした。評価はXVI:32のみ[++++]、他の3曲は[+++++]とします。XVI:32はかなり踏み込んだ表現ですが、ギアチェンジが激しすぎのように感じる人も少なくないでしょう。何れにしても、この先が楽しみなピアニストです。

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2 Comments

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sifare

実は、、、(笑)

こんにちは~

実はクラシカルな雰囲気のジャケットに惹かれていました(^_-)-☆女性らしい色香のある演奏とのこと、ハイドンのそんな演奏が聴きたいです(^^♪

Daisy

Re: 実は、、、(笑)

sifareさん、連投ありがとうございます。
このアルバム、おすすめです。久しぶりに物腰の柔らかく、情感溢れるハイドンでした。この他のアルバムのアーティスティックな写真を使ったジャケットの方が、彼女のイメージに合っている気がします。もう一枚リリースされるものもの発注予定です。

  • 2013/12/03 (Tue) 21:23
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