作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】タチアナ・ヴァシリエヴァのチェロ協奏曲集(ハイドン)

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今日は久しぶりに新着アルバム。

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タチアナ・ヴァシリエヴァ(Tatjana Vassiljeva)のチェロ、オーギュスタン・デュメイ(Augustin Dumay)指揮のワロニー王立室内管弦楽団(Orchestre Royal de Chambre de Wallonie)の演奏で、ハイドンのチェロ協奏曲1番、2番、モーツァルトの交響曲29番の3曲を収めたアルバム。収録は2012年11月10日から12日にかけて、パリの南側、オーギュスト・ブランキ通りに面したサレ・コロンヌ(Salle Colonne)でのセッション録音。レーベルは仏MIRARE。

ジャケットには歌のお姉さん然としたショートカットのヴァリシエヴァの笑顔の写真が大きく乗せられ、ちょっと気になるアルバムでした。

Tatjana Vassiljeva: Official Website of Russian Cellist

タチアナ・ヴァリシエヴァは1977年、ロシアのノヴォシビルスク生まれのチェリスト。ノヴォシビルスクといってピンと来る方、相当の地理B通です(笑)。ノヴォシビルスクとはロシア語で「新しいシベリアの街」。シベリアの西の奥、カザフスタンの北にあたり、オビ川(なつかしい!)添いにあるシベリア最大の街とのこと。6歳でチェロを習い始め、ノヴォシビルスク音楽院、モスクワ音楽院、その後ミュンヘン音楽大学などで学びますが、気になるのは1998年からベルリンのハンス・アイスラー音楽大学で、あのダヴィド・ゲリンガスのマスタークラスに所属していた事。コンクールの受賞歴もいろいろあり、1994年にミュンヘンで開催されたARDコンクールで2等に輝いた他、日本への演奏旅行時には文化村オーチャードホール・アワードを受賞しているとのこと。また2001年にはパリで開催されたロストロポーヴィチ・チェロ・コンクールでロシア人としてはじめて優勝するなど経歴は申し分ありません。レパートリーは古典から現代ものまで幅広く、上に紹介したオフィシャルサイトのディスコグラフィーには10枚近いアルバムが紹介されており、既に広く活躍しているようですし、日本にも何度か来ているようですのでご存知の方も多いでしょう。

一方指揮者のオーギュスタン・デュメイはヴァイオリニストとして有名な人。1949年パリ生まれ。パリ音楽院等で学び、アルテュール・グリュミオーに4年間師事したことによりグリュミオーを受け継ぐフランコ・ベルギー派の正統な後継者と看做されています。名声を得たのは、カラヤンに見いだされ1979年パリのコンサートで共演してからとのこと。現在はこのアルバムで指揮しているワロニー王立室内管弦楽団の指揮者としても活躍しているそうです。

タチアナ・ヴァシリエヴァは私ははじめて聴く人ゆえ、虚心坦懐にこのアルバムを楽しもうと思います。

Hob.VIIb:1 / Cello Concerto No.1 [C] (1765-7)
最新の録音らしく、かなり鮮明で残響は少なめ。デュメイのコントロールするオケはからっと明るく、アクセントはカッチリ、陰りはほとんどないあっけらかんとしたもの。非常にクッキリとわかりやすい序奏。ほどなくヴァシリエヴァのチェロが入りますが、同様にチェロも屈託がないというより、ちょっと単調に感じなくもないリズムに乗って入ります。1番はハ長調ゆえ、明るく晴朗な曲調ですが、現代楽器によるこの曲の演奏の伝統とはかなり異なる、明るくわかりやすすぎるような演奏。慣れるまでちょっと違和感がありますが、これはこれでユニークなスタイル。チェロはほとんど溜めることなく、リズム通り、高音の音色は艶があって悪くありません。テンポは行進曲のようにほとんど揺らさないので、曲の構造が平板な印象になってしまっているのが惜しい所。この印象、デュメイのコントロールに起因するのでしょうか。1楽章のカデンツァで現代音楽もこなすヴァシリエヴァのアーティスティックな側面が垣間見えました。
アダージョも、これまでの演奏とはかなり異なる印象です。あえてさっぱりした雰囲気を出そうと意図しているようです。チェロという持続音が得意な楽器に対して、そればかりがチェロでないとでも言いたそうなデュメイの演出。ヴァシリエヴァは、それに素直に従いながらも、徐々に歌うようになってきますが、深入りしません。古楽器の爽快な演奏ともまた違う独特の感興。アダージョも中盤に至ってようやく、演奏がしっとり落ち着いて、こちらもスタイルになじんできたというのが正直なところ。アダージョの後半はヴァリシエヴァのチェロが自然な弓さばきで、流石といわせる音楽。
この曲で最もしっくりいっているのがこのフィナーレ。クッキリと明るい表情に、程よい推進力。チェロとオケの音楽が溶け合って、両者とも創意を凝らしあって掛け合いの妙が楽しめます。ここに来て、テンポがぐっと上がりヴァリシエヴァの見事な弓さばきが素晴しい効果。尻上がりに調子が出てきたよう。最後はスリリングに盛り上がり完全燃焼。1楽章からのさっぱりしたスタイルからかなり変化して、若干勢いに乗り過ぎな印象も残します。

Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
1番の1楽章にはちょっと違和感がありましたが、2番の方は穏やかな曲調の分、自然に聴こえます。リズムを強調した独特のオケのコントロールは変わりませんが、音楽の起伏がハッキリしている分、平板な印象はありません。オケは音色が美しく、イタリアっぽい弦楽器の伸びやかさもあり、音色に関してはなかなか良い線いってます。ヴァシリエヴァのチェロは、フレーズひとつひとつのメリハリを前曲より明確に描いているため、こちらは悪くありません。オケも色彩感の豊かさが印象に残ります。音楽のしなやかさと大きな視点でのまとまりがあるとさらに良いのでしょう。やはり何となく伴奏の問題のような気もします。
アダージョは、ディテールは音色の美しさで聴かせますが、大きな音楽のつくりがもうすこしあればという印象を残してしまいます。フィナーレも同様。良く聴くとテンポを落とす所、表情を抑える所の踏み込みが足りないので平板な印象が残ってしまうのではないでしょうか。チェロもオケも音色の美しさはかなりのものだけに、惜しい所です。

このところ超名演盤がつづいていたので、ちょっとこちらの期待も高くなっていたのは正直なところですが、美人チェリスト、タチアナ・ヴァシリエヴァとオーギュスタン・デュメイのコンビによるハイドンのチェロ協奏曲集、これまで数多の演奏と比べて、独特なユニークな演奏ではあるものの、過去の名演を揺るがすほどの説得力には欠けていたというのが正直なところでしょう。どちらかというとデュメイのオケのコントロールに課題があるように感じられます。評価は両曲とも[+++]とします。

ちなみに、最後に収められたモーツァルトの29番は、ハイドンの曲とは完成度が異なり、かなり良い演奏。デュメイも得意としているそうです。こちらは爽やかな名演と言っていいでしょう。

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2 Comments

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トトラ

買わなくてよかった(笑)気になってたので。。

Daisyさんの好きなチェロ協奏曲はやはりゲリンガスですか?

  • 2013/11/26 (Tue) 21:36
  • REPLY

Daisy

Re: タイトルなし

トトラさんおはようございます。
ゲリンガスもいいですね。チェロ協奏曲はいろいろ名盤があります。ルーディン、デュプレなどもいいですね。基本的に所有盤リストでのHaydn Disk of the Monthに選定したアルバムは気に入りの演奏です。

  • 2013/11/27 (Wed) 08:20
  • REPLY