作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

デカニー弦楽四重奏団のOp.1(ハイドン)

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以前ファイン・アーツ四重奏団の演奏を取りあげた時に、小鳥遊さんからコメントをいただいたデカニー四重奏団ですが、その後iTunesでダウンロードして聴いていたところ、いつもこちらの所有盤にないアルバムを貸していただく湖国JHさんから、このアルバムを借りる事ができました。

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デカニー弦楽四重奏団(Dekany String Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.20の6曲とOp.1のNo.1、No.2のあわせて8曲を収めたアルバム。収録は1964年とだけ表記されています。レーベルは米VOXBOX。

今日取り上げるアルバムのライナーノーツには曲目解説はありますが、演奏者であるデカニー弦楽四重奏団の情報は掲載されていません。いつものようにネットを調べても、略歴などをまとめた記事は探し当てられませんでした。ネットで得た断片的な情報をまとめると次のとおり。

デカニー弦楽四重奏団はこのアルバムをリリースしているVOXプロダクションの要望により1962年、ハイドンの弦楽四重奏曲全集を録音するために設立されたクァルテット。メンバーはハンガリー出身の、何れも素晴しい腕をもつ音楽家で、オランダのブラバンツ音楽院で教職にあった人。

第1ヴァイオリン:ベラ・デカニー(Belá Dekany)
第2ヴァイオリン:ジャック・ハルトグ(Jacques Hartog)
ヴィオラ:アーウィン・シファー(Erwin Schiffer)
チェロ:ゲオルク・シファー(George Schiffer)

ベラ・デカニーはフィルハーモニア管弦楽団のコンサートマスターをしていた人ということです。

VOXレーベルのハイドンの弦楽四重奏曲全集はデカニー弦楽四重奏団とファイン・アーツ四重奏団で曲をわけて録音したようで、LPでは完結したようです。ファイン・アーツ四重奏団の演奏は過去に3度取りあげています。

2013/10/05 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ファイン・アーツ四重奏団のOp.74
2012/05/07 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ファイン・アーツ四重奏団の「ひばり」
2011/01/04 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ファイン・アーツ四重奏団のOp.77

ということで、燻し銀の演奏が印象的なファイン・アーツとともにハイドンの弦楽四重奏曲全集を録音したということは、ハイドンの弦楽四重奏曲の演奏史でも無視できない存在であるのは間違いありません。

このアルバムをいろいろ聴いてみると、Op.20も素晴しいのですが、演奏の質としてはOp.1の2曲の方が張りのある良い演奏。ということで、今日は珍しいOp.1の方を取りあげることにします。

Hob.III:1 / String Quartet Op.1 No.1 [B flat] (c.1757-59?)
CD2の3曲目に収められたこの曲。一聴してOp.20よりもクリアな響き。1964年録音としてはかなり鮮明な録音。まるでLPを聴いているようなカッチリと実体感のある音。入りの演奏はあっさりとしたもので、アンサンブルはかなりの精度でクッキリとメロディーを描いていきます。第1ヴァイオリンのベラ・デカニーの描くメロディーにドロップシャドウをつけたように他の3人が完璧に重なります。1楽章はクッキリ爽やかでなかなかの存在感。
続くメヌエットに入ると徐々にベラ・デカニーのヴァイオリンの魅力が際立ってきます。デカニーのヴァイオリンは伸び伸びとした高音の魅力に溢れたもの。惚れ惚れとするような響き。流石にレーベルの威信をかけたハイドンの弦楽四重奏曲全集のために結成されただけのことはあります。
秀逸なのはつづくアダージョ。この時代のハイドンの演奏としてはウルトラモダンなものだったでしょう。ヴァイオリンの突き抜けるような美音に圧倒されます。Op.1のアダージョがここまで美しく響くとは想像していませんでした。以前聴いた、エミール・クラインの弦楽合奏盤も穏やかな表情で良かったのですが、これはクァルテットの真髄をつく名演奏。凛とした美しさ。
再びメヌエットですが、ささっと弾き急ぐようなさっぱりた演出。弦楽器の音色の美しさを保ちながら楽章間の変化をつけていきます。
フィナーレは速めのテンポで疾風のように駆け抜けます。速めのパッセージも素晴しいキレ。全員軽々とこの速めの音階をこなしていくあたり、流石に腕利き揃いですね。このシンプルな曲がかなりの聴き応え。

Hob.III:2 / String Quartet Op.1 No.2 [E flat] (c.1757-59?)
つづいてNo.2。響きは変わらず鮮明なもの。チェロの音量がかなり抑えられているのは鮮明さをだそうとした録音上の意図でしょうか。シンプルな曲をこれだけ饒舌に演奏し、弦楽四重奏曲の醍醐味を味あわせてくれるのは相当の音楽性があってのことでしょう。ハイドンの初期のディヴェルティメントなのに、その弱みを感じさせないのはすごいことですね。
メヌエットは弾むリズムとしっとりとしたメロディーとの対比が見事。この活き活きとした音楽はなんでしょう。一人一人の演奏が乗りに乗って、まさに演奏を楽しんでいるようすが鮮明に伝わります。
この曲でもアダージョの美しさは絶品。やはりデカニーのヴァイオリンが心に刺さります。溢れ出す音楽。4人の弓から音楽が噴出する感じ。深い陰影。磨き抜かれた響き。メロディーが踊ります。まさに至福。
さっと雰囲気を変えてメヌエットに移ります。ここではリズムではなく長調から短調への変化を鮮明に演出。聴く側の脳の様々な回路に訴えてきます。この雰囲気の切り替えがあまりに鮮やか。音楽が深いですね。
最後のフィナーレもハイドンらしいいたずらっぽい仕掛けがそこここにあり、その仕掛けをひとつずつ楽しませてくれるような演奏。変化に富んだメロディをここでも軽々とこなしながら、早送りでコミカルな紙芝居をみているような微笑ましい音楽。いやいや、文句なしに素晴しいですね。

本当はOp.20を取りあげようと思って聴き始めたんですが、アルバムの最後に収められたOp.1というハイドンではかなりマイナーな曲にすっかりやられました。これは絶品。この小曲をこれほどまでに研ぎすまされた演奏に仕上げてくるあたり、デカニー弦楽四重奏団の実力を思い知らされました。たしかにハイドンの音楽の真髄をつく演奏。ベートーヴェンでもモーツァルトでもなく、ハイドンの弦楽四重奏の面白さをこれほどまでに感じさせてくれる演奏はそうあるものではありません。CDではこのアルバム以外には出回っていないようですが、LPは丹念にさがせばまだ手に入りそうですので、他の曲も手に入れてみたいと思います。評価は両曲とも[+++++]です。脱帽。

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