エリナ・ヴァハラ/ヴィルトゥオージ・ディ・クフモのヴァイオリン協奏曲集(ハイドン)

たまにはアイドル路線のアルバムも取りあげましょう(笑)

Vahala.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

エリナ・ヴァハラ(Elina Vähälä)のヴァイオリン、ヴィルトゥオージ・ディ・クフモ(Virtuosi di Kuhmo)の演奏でハイドンのヴァイオリン協奏曲3曲(Hob.VIIa:4、VIIa:3、VIIa:1)を収めたSACD。収録は2008年7月7日から9日にかけて、フィンランドのヘルシンキの北方約100kmにあるハメーンリンナ(Hämeenlinna)の郊外にあるハトゥッラ教会でのセッション録音。レーベルはフィンランドのALBA。

先日TOWER RECORDS新宿店に立ち寄ったときに、未入手のアルバムとして発見したもの。若く美麗なヴァイオリニストがフィンランドの氷の色のような薄いブルーの空間に凛とたたずむジャケットをみて、迷いなく購入。よく見るとSACDマルチチャネルと表記があるため、録音にはこだわったものでしょう。生憎うちにはステレオ環境しかありませんので、マルチチャネル録音の評価は出来ません。

Elina Vähälä

彼女のオフィシャルサイトはなかなかセンスのいい造り。

エリナ・ヴァハラはもちろんはじめて聴く人。1975年、アメリカのアイオワ州アイオワシティー生まれのフィンランド人ヴァイオリニスト。ということで現在38歳になり、ジャケットの印象よりもベテランでした。オーケストラとの共演はなんど12歳の時、オスモ・ヴァンスカ率いるラハティ・交響楽団ということで、後にヴァンスカからはその年の若手音楽家賞に選ばれています。その後フィンランドの主要なオケとの共演を重ねました。1999年にはヘルシンキのシベリウスアカデミーを卒業し、同年、ニューヨークで行われた若手音楽家国際オーディションで優勝し、北米、南米でも演奏活動を行っています。イギリス室内管とはパートナー関係にあったそう。楽器はフィンランド文化省から貸与されているストラディヴァリウスとのことです。アルバムは探した限り、このアルバムと最近リリースされたジョン・ココリアーノのヴァイオリン協奏曲などを収めたアルバムのみ。オフィシャルサイトのレコーディング情報にもそれ以外のアルバムが触れられていないので、おそらくこのハイドンのヴァイオリン協奏曲集がデビュー盤ということだと思います。ハイドンのヴァイオリン協奏曲をデビュー盤に選ぶということで、当ブログでも軽く扱うことはできません。冒頭のアイドル路線発言は訂正です(笑)

Hob.VIIa:4 / Violin Concerto [G] (c.1765/70)
SACD層の2チャンネルで聴きます。録音は鮮明。残響はあるのですのが、かなり直接音重視の録音。オケは少人数でしょう、かなりタイトな響き。キビキビとしたオケに乗って、まずはテンポ良く鋭敏なヴァイオリンの入り。ヴァイオリンは高音の伸びというか張りつめたテンションが凛々しい感じ。ヴァイオリンもオケもテクニックはかなりのもので、鮮烈かつキリリと引き締まった演奏。フィンランドの澄んだ空気のような空気感を感じる印象。カデンツァも爽やかさと鋭利なキレ味が同居したなかなかのもの。これはかなりの実力でしょう。
アダージョ楽章では表現力が問われますが、ヴィルトゥオージ・ディ・クフモは程よいテンションを保ちながら、リラックスした入り。驚くのがヴァハラのヴァイオリンの高音の美しさ。流石ストラディヴァリウス。特に最高音域の素晴しい浸透力はゾクッとするほど。女流らしく可憐さもありますが、この突き抜けるような輝きは流石です。ゆったりとしたフレーズのなかにきらめきがちりばめられてクリスタル細工のような輝き。
フィナーレもオケとヴァイオリンの掛け合いの面白さをうまく表現しています。ヴァイオリンもオケもキリリと引き締まって、そこここにつけられたアクセントも効果的。これはレベル高いですね。

Hob.VIIa:3 / Violin Concerto "Merker Konzert" 「メルク協奏曲」 [A] (c.1765/70)
1曲目よりわずかに残響が多くなっています。序奏のオケのキレは前曲以上。序奏から身を乗り出して素晴しい響きに引き込まれます。ソロもオケ1曲目より力が抜けて、演奏に余裕がでてきます。落ち着き払った演奏からえも言われぬ爽やかな響きが生み出されます。ピンと張りつめた高音の魅力は相変わらず。フレーズひとつひとつをしっかりと描き分けながら、自身のヴァイオリンの音色の魅力で暈取って行くところは相当の腕前でしょう。オケも小編成にしては厚み、特に低音弦の迫力が見事。12分と長い1楽章も一気に聴かせきってしまいます。
聴き進むうちにオケの伴奏がかなり踏み込んだ演奏であることに気づきます。アダージョでもぐっと踏み込んだアクセントでソロをもり立てるあたり、指揮者は置かれていないので、ヴァハラの指示なのでしょうか、実に活き活きとした表情にハッとさせられます。ハープシコードによって響きに絶妙な繊細感が加わります。ヴァハラはオケに乗って自在に弓を操ります。テクニックもさることながら、音楽に爽やかな色気のようなものが乗って癒されます。
フィナーレは入る前の静寂と、一瞬の気配にゾクッとさせられます。絶妙な間の閃き。そのあとは音楽がしなやかに流れていきます。一貫して力がいい具合に抜けて、音楽が弾みます。1曲目とは演奏のスタイルが変わっていますね。

Hob.VIIa:1 / Violin Concerto [C] (c.1765)
ハイドンのヴァイオリン協奏曲集では通例1曲目に置かれてる事が多いんですが、このアルバムでは最後に置かれています。3曲の中では最も伸びやかな1楽章。ヴァハラの美しいヴァイオリンの音色がマッチしてえも言われぬ華やかさ。ヴァイオリンの音階が昇るたびに刺さるような高音の魅力に打たれます。これほど美しいヴァイオリンの音色で演奏されたハイドンのコンチェルトは他に知りません。圧倒的な高音の魅力。あまりにも艶やかな高音に痺れます。
この曲のアダージョはピチカートの伴奏による夢のような美しさで知られていますが、ヴァハラのただでさえ美しいヴァイオリンが、気配を殺すように抑えたピチカートに乗って輝きまくる奇跡的な時間。昇天。ハイドンの書いた音楽の結晶のようなこの曲の最も美しい演奏と言っても過言ではありません。再び昇天。あまりの美しさに絶句。
フィナーレはこのアルバムの総決算。オケも前楽章のヴァハラのヴァイオリンで痺れたでしょうが、活力を取り戻し、分厚い響きで渾身のサポート。短いフィナーレながらオケも聴かせどころで意外なほどの踏み込み。ヴァハラもそれに応えて輝きで応酬。恐ろしいほどの掛け合いながら音楽は完全に一体化して見事な調和。協奏曲を聴く楽しみを存分に味あわせててもらえます。

1曲目を聴き始めた時には美人ヴァイオリニストによるキレの良い演奏程度の印象でしたが、聴き進むうちに印象一変。これは素晴しいアルバムです。エリナ・ヴァハラというフィンランド人ヴァイオリニスト、ジャケットの美貌もさることながら、フィンランドのどこまでも突き抜ける青空のような透明感と張りつめたテンションのヴァイオリンの美音は圧倒的な魅力を放ってます。美しすぎるヴァイオリンによる、ハイドンのヴァイオリン協奏曲集。これほどの演奏とは予想だにしませんでした。オケのサポートも絶品。評価はもちろん全曲[+++++]とします。このアルバム、ハイドン好きの方、必聴です。

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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ヴァイオリン協奏曲 美人奏者 SACD

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わ~い、引き続いて!

おはようございます~

引き続いて手持ちのCDのレビューを嬉しく読ませていただきました!それもまたDaisyさんも演奏をとても楽しまれたとのことで、大変嬉しく思います。私もこのCDを初めて聴いたとき(ジャケ買いじゃないよ(笑))、その透き通った美しい音に魅了されました!すぐにこちらのリストを調べたのですが、その時はお持ちではなかったようだったので、いずれレビューを書いてくださるかなと楽しみにしていました~(^^)

今週はラッキーな始まりで元気が出ます~(^^♪

Re: わ~い、引き続いて!

sifareさんからコメント、わ〜い(笑)
こちらもお持ちでしたか。このアルバム、意外と出回っていますね。アイドル路線好きのおじさんばかりではなく、音楽ファンの心もガッチリつかんでいるようですね。この実力からするとモーツァルトも聴いてみたくなります。ベルクなどもいいかも。いづれにせよ次の録音が楽しみな人です。

(^^)

ご唱和頂き有難うございます(^^ゞ

V協奏曲はアッカルドやグリュミオーの流麗さが好きなのですが、これもぜひ聴いてみます(^_^)
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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Joseph Haydn Discography
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものはリスト冒頭に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

登録曲数:1,365
登録演奏数:11,529
(2019年3月31日)
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