スタニスラフ・ブーニンのXVI:23(ハイドン)

今日はかつで一世を風靡したブーニンのハイドン。

Bunin23.jpg
amazon(別装丁のVictor盤)

スタニスラフ・ブーニン(Stanislav Bunin)のピアノでハイドンのピアノソナタXVI:23、モーツァルトのピアノソナタKV.331「トルコ行進曲」、ショパンのピアノソナタ3番Op.58の3曲を収めたアルバム。収録は1986年8月、福島市音楽堂でのセッション録音。レーベルはMEZHDUNARODNAYA KNIGAというロシアのレーベルのようですが、生産はイギリス。

このアルバムは先日ディスクユニオンにて発見したもの。ブーニンは日本では一時異常な人気を博した人。女性ファンがコンサートにわんさか押し掛けていたほどの人気でしたね。もちろん私はそのようなブームとは無縁の生活をしていたため、ブーニンのアルバムは手元に一枚もありません。というかショパンなどはちょっと苦手のため、ショパンのアルバムはリパッティやポリーニなど数枚手元にあるのみですので、まったくの門外漢です。

そのブーニンがハイドンのソナタ、しかも好きなXVI:23を弾いているということで、今更このアルバムの存在を知り、手に入れた次第。録音から30年近く経っての邂逅ということでしょう。今となっては歴史のパースペクティヴ上でブーニンの演奏を捉えるくらいの冷静さです。

今回検索してみると、ブーニンがハイドンを弾いたアルバムはおそらくこれ一枚であろうと想像されますので、ある意味貴重な録音だと思います。いちおうブーニンについてさらっておきましょう。

ブーニンは1966年、モスクワ生まれのピアニスト。なんと私より4つも年下でした! 以前リヒテルの記事でも触れましたが、祖父はモスクワ音楽院の教師でリヒテル、ギレリスなどの師でもあったゲンリフ・ネイガウス、父はピアニストのスタニスラフ・ネイガウスという名門家系の出身。4歳から母の教えでピアノを弾き始め、17歳でパリで開催されたロン=ティボー国際コンクールに最年少で優勝、19歳でショパン国際ピアノコンクールに優勝して一気に注目を浴びるようになります。このショパンコンクールの模様をNHKが特集番組で紹介した事を機に、日本では「ブーニン・フィーバー」なる現象が巻き起こったということです。1985年のことだったんですね。最近では2005年にショパンコンクール20周年記念コンサート、2006年にはデビュー20周年記念コンサートを日本で開催したそうです。なお、奥さんは日本人で日本に在住との事。

ということで、このアルバムはデビュー直後の録音。ブーニンの飛ぶ鳥を落とす勢いは30年近く時を経た現在、どう響くでしょうか。

Hob.XVI:23 / Piano Sonata No.38 [F] (1773)
非常にキレのいいピアノ。タッチがキレてます。特に速いパッセージの惚れ惚れするようなキレは流石と思わせるものがあります。何もひっかかるものがありません。もの凄いスピードの音階でも一音一音にはっきりと表情がついています。録音はちょっと軽めのピアノの音。かなり近めに定位するんですがリアリティがすこし薄いですね。これでラ・ショー=ド=フォンでPHILIPSが録ったような空気感とリアリティーが感じられたらと無い物ねだり。ブーニンは有り余るテクニックでフレーズごとにクッキリと表情をつけていきます。ハイドンのソナタの痛快な側面をきっちり描いていく1楽章。やはりテクニックというか表現力には突き抜けたものを感じます。だてにフィーバーを起こしたわけではないと今更気づきます。
アダージョに入ると、非常にしっとりしなやかにメロディーを描いていきます。アムランの輝きとも、ブレンデルの感興とも異なり、爽やかさを伴いながら、どこか艶っぽいところがあります。ショパンで女性の心を釘付けにした手腕がなんとなくわかってきました。ハイドンにしてはロマンティックな表現ではありますが、くどさもなく流れも良いので不自然さはありません。録音のせいかやはり低音の迫力不足な印象も少々つきまといますが、敢えて軽さを狙った表現なのかもしれませんね。音楽のうねりにさらりと身を任せて極上の気分。
フィナーレはやはり鮮烈なタッチのキレに圧倒されます。やはりこのタッチは真似の出来るものではありませんね。速いパッセージは目もくらむようなスピードでまるで早送りしているよう。曲の構造も良く踏まえて起承転結も鮮やか。流石ブーニンというところ。

つづくトルコ行進曲も名曲が鮮やかなタッチで鮮烈に響く名演奏でしょう。ショパンはあまりコメントする資格と言うか能力がありませんので触れずにおきましょう(笑)

録音から30年近くを経て聴くブーニンのハイドン。今更ですが、この鮮やかなタッチから生み出される麻薬のような恍惚感は流石です。キレまくる音階、上品ながら骨格をふまえたウィットに富んだ解釈、艶かしい輝きを放つ宝石のような音色、フィーバーを巻き起こしたのが今更ながらわかりました。このアルバムではモーツァルトも良いんですが、どちらかというとハイドンの方がブーニンの演奏スタイルに合っているような気がします。私より4歳年下ということは現在48歳くらい。テクニックも心境も落ち着いてきたでしょうから、ハイドンのソナタにじっくり取り組むなんていうのも良いのではないかと思います。聴こえてますでしょうか~、ブーニンさん。ちなみに評価は[+++++]を進呈いたします。いや、良かった!

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tag : ピアノソナタXVI:23

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ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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