作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】アルド・パリソ/バルビローリ/ニューヨークフィルのチェロ協奏曲2番(ハイドン)

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週末にTOWER RECORDS新宿店で手に入れたアルバムから。

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HMV ONLINE / iconamazon / TOWER RECORDS

サー・ジョン・バルビローリ(Sir John Barbirolli)指揮のニューヨーク・フィルハーモニック管弦楽団の演奏で、ミヨーの序曲、ディーリアスの「フェニモアとゲルダ」間奏曲、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番、ブラームスの交響曲第2番ニ長調、そしてハイドンのチェロ協奏曲第2番の5曲を収めたアルバム。チェロの独奏はアルド・パリソ(Aldo Parisot)。ハイドンの収録は1962年12月9日、ニューヨークのフィルハーモニックホールでのライヴ。レーベルはTHE BARBIROLLI SOCIETY。

このアルバムもリリースされたばかりのアルバム。バルビローリはハイドンの録音をいろいろ残しています。当ブログでも過去に2回バルビローリの演奏を取りあげています。

2010/09/12 : ハイドン–協奏曲 : ジャクリーヌ・デュ・プレ!
2010/08/10 : ハイドン–交響曲 : バルビローリ64年のオックスフォード

以前の記事に書いたように、バルビローリと言えばシベリウスやエルガーなんでしょうが、個人的にはマーラーの9番のベルリンフィルを振った録音が深いのにさっぱりとしたバルビローリ独特の表情付けが印象に残っています。
ハイドンの演奏ではジャクリーヌ・デュ・プレのチェロ協奏曲2番の伴奏を担当していたのが有名なところでしょう。
その他には、レビューには取りあげていませんが、BBC LEGENDSからリリースされている1969年のプロムスのライヴの会場と一体になった盛り上がりも独特。この時にはハイドンの交響曲83番「雌鶏」にウィンナワルツ、リヒャルト・シュトラウスの「薔薇の騎士」組曲、レハールの「金と銀」などを、プロムス独特の盛り上がりのなか次々に演奏していくものですが、クラシックのコンサートというより、まるでロックコンサートのような盛り上がりが素晴しい高揚感を醸し出していました。

なんとなく、イギリスのジェントルな側面をもちながら癒しに満ちた音楽を奏でてくれる人とのイメージですので、ハイドンのチェロ協奏曲、それも2番の伴奏ということで期待が高まります。

チェロのアルド・パリソははじめて聴く人。1921年、ブラジルの大西洋岸の最東端に近いナタール(Natal)生まれのチェリスト、指揮者。現在パリソの名前で検索しても数枚のアルバムがヒットするのみですので、ご存知の方は少ないのではないのでしょうか。義父からチェロを習い、12歳でチェリストとしてデビュー。その後リオ・デ・ジャネイロのブラジル交響楽団の首席チェリスト等を経て、渡米しイェール大学で音楽理論と室内楽を学ぶことになります。イェール在学中の26歳の時にタングルウッドでボストン交響楽団と共演してアメリカデビューを果たしました。1950年代にはソリストや協奏曲のソロ奏者として有名になり、多くの作曲家が彼に曲を書きましたが、中でもヴィラ=ロボスのチェロ協奏曲2番が有名で、初演は彼のニューヨークフィルデビューということです。パリソは教師としても有名で、1958年以来イェール大学で教えているとのこと。おそらくまだご存命ですね。もう90歳を超えていることになります。

今日取り上げる演奏は1962年のもの。バルビローリがデュ・プレの伴奏をしたアルバムの録音が1967年ですので、その5年前の演奏ということになります。バルビローリ63歳、アルド・パリソは41歳です。

Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
モノラル録音。録音年代からするともう少し鮮明でも良いかもしれませんが、ヒストリカルな録音特有の雰囲気のある響き。バルビローリの指揮するニューヨークフィルは、かなり柔らかめの響きで、予想通りゆったりとしたフレージング。甘くとろけそうな響きはニューヨークフィルとは思えません。パリソのチェロは最初はバルビローリの伴奏にしっかり乗ってゆったりとしたソロを聴かせます。音量が上がると、ほんの少し歪みっぽくなるのは古いライヴのご愛嬌。1楽章は完全にバルビローリのペースで進みます。やはりバルビローリのコントロールらしく弦楽器の奏でるメロディーのふくよかで鳴りのよいこと。香しい芳香が満ちてきます。徐々にパリソも鳴きを聴かせるようになり、表現が踏み込み始めます。非常に味わい豊かなチェロ。バルビローリ同様、香しい感じが漂います。終盤はパリソのチェロが鳴きまくります。カデンツァのロマンティックなこと! 今となっては貴重にさえ思える劇的な長いカデンツァ。チェロの名人芸をたっぷり聴かせます。
予想通りアダージョはチェロが鳴きまくりですが、ちょっと予想と異なるのは速いパッセージではちょっと足早に攻めてくる所。とくに低音と高音の音色の違いをうまく使って、非常に巧みなフレージング。抑えた部分の表現も秀逸。徐々にパリソペースになってきました。
フィナーレに入ると、パリソの弓が軽くなったように、軽快なボウイングが印象的。これまでの濃厚な表現は確信犯的なものだったわけですね。この軽さはかなりのテクニックがないと表現できないでしょう。フィナーレではパリソとバルビローリの息がピタリと合って、濃い表情なのに爽やかさもある、素晴しい掛け合いになります。気負う事なくしっとりと終わるあたり、バルビローリの面目躍如ですね。最後は暖かい拍手につつまれますが、放送用録音らしく英語のアナウンスで曲名と奏者名の紹介が入るのがニューヨークフィルらしいところです。

やはりバルビローリの香り立つような音楽の魅力が一番の聴き所。アルド・パリソはバルビローリとの相性はわりと合っていますので、非常にロマンティックな仕上がりになっています。あまり条件の良いライヴではないため録音には粗がありますが、そうした録音を通してでも、濃密な音楽が伝わってきます。バルビローリの録音としても貴重なものですが、アルド・パリソと言う人のチェロを知ると言う意味でも貴重なものでしょう。評価は[++++]としておきます。バルビローリファンの人には必携のアルバムです。

一般の方にはやはり、5年後のジャクリーヌ・デュ・プレとのアルバムをオススメすべきでしょう。比較のために久々にジャクリーヌ・デュ・プレ盤を引っ張り出してちょっと聴いてみた所、こちらは磨き抜かれたセッション録音。録音は比べるレベルではなく、演奏も人類の遺産クラス。よろしければ、上のリンクの記事をご参照ください。記事を書いたときの感動が自分でも懐かしいですね。

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