作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

エドワード・ヒギンボトムの天地創造(ハイドン)

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実に久しぶりの天地創造。これまでいろいろレビューしていますが、久しぶりに取りあげたいアルバムに出会いました。

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HMV ONLINEicon / TOWER RECORDS

エドワード・ヒギンボトム(Edward Higginbottom)指揮のオックスフォード・ニュー・カレッジ合唱団(Choir of New Collage Oxford)、オックスフォード・フィロムジカ(Oxford Philomusica)の演奏による、ハイドンのオラトリオ「天地創造」。収録は2008年4月14日から17日にかけて、ロンドン郊外の聖ユダ・オン・ザ・ヒル教会(St Jude-on-the-Hill)でのセッション録音。レーベルはオケの自主制作レーベルでしょうか、op(Oxford Philomusica Records)というもの。

ソロは以下のとおり。
ガブリエル/エヴァ:ムハイリ・ローソン(Mhairi Lawson)
ウリエル:ルフス・ミュラー(Lufus Müller)
ラファエル/アダム:デイヴィッド・ストウト(David Stout)

このアルバム、先日銀座山野楽器店頭で見かけて手に入れたもの。天地創造などオラトリオのアルバムは、見かけるものはほとんど手中にあるため、店頭では滅多に新たなアルバムに出会わないのですが、やはり未知のアルバムはまだあるものですね。演奏者もレーベもはじめてのものですが、CDプレイヤーにかけてみると、私の好きな自然な響きの引き締まった演奏が聴こえてくるではありませんか。意外に素晴しい演奏にすっかり聴きほれてしまいました。特に合唱の精妙なコントロールが素晴しいく、ソロも粒ぞろいなんですね。合唱は少年と男性による合唱団のようです。

エドワード・ヒギンボトムは調べてみると、ホグウッドの天地創造のCDとDVDの演奏で、オックスフォード・ニュー・カレッジ合唱団の合唱指揮を担当していた人。ホグウッド盤ではエンシェント室内合唱団も加わっており、こちらの合唱指揮はサイモン・ハルセイでした。

ヒギンボトムはイギリスでも著名な合唱指揮者。ケンブリッジでオルガンを学んでいた時に指揮を学ぶ機会があり、その後のキャリアが開かれました。1976年からこのアルバムの合唱を担当するオックスフォード・ニュー・カレッジ合唱団の音楽監督を務めており、近年はエンシェント室内管やこのアルバムの演奏を担当するオックスフォード・フィロムジカなどの器楽オケの指揮もするようになったとのこと。このアルバムを聴く限りかなり堅実な手腕の持ち主。オケのオックスフォード・フィロムジカはオックスフォード大学のレジデントオケ。

Hob.XXI:2 / "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
最新の録音らしく、じつに自然な音響。適度な残響の教会にゆったり轟くオーケストラの響き。迫力もかなりあり、分厚いながらも自然さを失わず、劇的な入りの曲を、特に大きな誇張もなく堅実に演奏していきます。歌は英語。ラファエルのストウトは余裕たっぷりの艶やかな歌唱。何より素晴しいのが少年合唱による女性パートを含むコーラス。清透ながらしっとりとした歌いぶりは流石。ウリエルのミュラーもストウトと声のタイプが近く、非常に艶やか。ソロは有名どころではないようですが、レベルは高いですね。適度な迫力に適度な緊張感。しなやかに曲を進めるようすは以前聴いたペーター・シュライアー盤に近い自然な良さをもったもの。ガブリエルのローソンも悪くありません。ソロも合唱もヒギンボトムの好みとコントロールが行き届いているのでしょう、非常に安定感がありますね。純粋に曲を楽しむのにうってつけ、メロディーラインの美しさが沁みてきます。全編癒しを感じる柔らかな感触に満ちてます。第一部の聴き所、ガブリエルのアリアは、ローソンのコケティッシュな魅力で聴かせるもの。時折抜けるような高音の美しい上昇がアクセントになってます。第一部の終結へ向けたクライマックスの表現は流石に一流オケとは迫力で差がつきますが、機敏さを保って緩む所はないのはかなりの実力とみました。

美しいメロディー連発の第二部はこのアルバムの聴き所。ヒギンボトム、しなやかに合唱とオケを歌わせるところは素晴しいコントロール。迫力や構成で聴かせる演奏が多い中、実に良く歌う演奏です。各奏者が非常に活き活きと演奏しているのが印象的。おそらく奏者どうしのつながりも深いものと想像できます。通例CDが2枚目に変わる第二部の前半の終結部、しなやかに盛り上がって、実に清々しい。終わると思ったら次に続きます。このアルバムでは第二部は終わりまでがCD1におさまってます。第二部後半のラファエル、ウリエルそれぞれのアリアは歌が沸き上がってくるような素晴らしい高揚感。単に自然な演奏というレベルではなく、しなやかさの限りを尽くした非常に美しい演奏というのが正しい認識でしょう。第二部はまさに歌が溢れ出てくる素晴しさ。

ようやくCDを変えて第三部。入りのウリエルのレチタティーヴォからとろけます。聴き所の2つのアダムとエヴァのデュエットは期待通り天上のセッションのような清らかさ。少年の声を活かしたコーラスも素朴な美しさも華を添えます。最後まで一気に聴いてしまう素晴しいメロディーの連鎖。終曲の何と神々しい事。ぐっさり刺さる演奏でした。

ここ数日何度か聴き直してのレビューですが、このアルバム、実に深い演奏。歌の美しさの限りを尽くした名演奏といっていいでしょう。正直期待した演奏を遥かに超える素晴しさ。天地創造がこれほどまでに美しいメロディーに満ちた「歌の曲」であると気づかされたというのが正直な所。久々に天地創造に打ちのめされました。評価はもちろん[+++++]を進呈です。このアルバム、歌曲好きな方には絶対のオススメ盤です。だまされたと思って手に入れるべし!

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2 Comments

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michael

No title

こんばんは
「天地創造」は昔、日本語版の演奏を放送で聴いたことがあります。小澤征爾氏指揮でしたが、ハイドンの音楽の見事さに、直にわかる言語が重なってとても感動的でした。訳詞は苦心したものと思いますが文語調で格調を保っていたと思います。

Daisy

Re: No title

michaelさん、こんにちは。
天地創造の日本語版ですか。やはり言葉の意味がわかってこそという点では日本語訳も貴重な物ですね。前にブログでも書いたアーノンクールのサントリーホールの来日公演では、大きな電光掲示板に訳語が流れ、意味はわかるようになっていました。そういった点では字幕のある日本語版の映像などは貴重なものでしょう。ただし、素晴しい映像ではあっても海外版しかリリースされないものも多いので、貴重さにかわりありませんね。
michaelさんのブログ、既にLPブログとなっていますね! いつも楽しく読ませていただいています。遅ればせながら、当ブログも紹介いただきありがとうございます。

  • 2013/10/20 (Sun) 11:46
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