作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

90歳のスクロヴァチェフスキ/読響/サントリーホール

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昨日まで、温泉旅行紀の更新にかまけておりましたゆえ、そろそろハイドンのレビューにとは思っているのですが、昨日は、チケットをとってあったコンサートに出かけました。タイトルどおりスクロヴァチェフスキと読響のコンサートです。

読売日本交響楽団:第530回定期演奏会

この秋にはアバドとルツェルン祝祭管の来日公演のチケットをとって楽しみにしていたのですが、先日書いた通り、アバドの体調不良により中止となってしまいました。それではということで、この秋のコンサートの情報をいろいろ見ていたら、スクロヴァチェフスキがまた来るではありませんか! この機を逃すまいということで急遽チケットをとった次第。

このところスクロヴァチェフスキのコンサートには毎年のように出かけています。

2012/09/30 : コンサートレポート : 東京オペラシティでスクロヴァチェフスキ/読響の英雄に打たれる
2011/12/27 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)
2011/10/19 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演
2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ

もちろん高齢ゆえ、毎回これが最後かもとの思いを持ちながら聴いていますが、驚くなかれ、今回の来日時には90歳という年齢にもかかわらず、なぜか毎年エネルギッシュ度が上がっているようにも感じられるほどに元気です。しかも、毎回、毎回観客を興奮の渦に巻き込む素晴しい迫力。年齢なりの枯れた音楽ではなく、円熟を極めながらも、たたみかけるような素晴しく活気に満ちた演奏で、ブラヴォーの嵐を呼びます。

今回の来日でも、既に終わったショスタコーヴィチの5番を振ったコンサートに行かれた方の評判はすこぶる良好。今回も爆演間違いなしとの確信をもって出かけました。



曲目は、なんとスクロヴァチェフスキ自身が1995年にミネソタ管弦楽団の委嘱によって作曲した「パッサカリア・イマジナリア」と、ブルックナーの交響曲4番「ロマンティック」の2曲。「ロマンティック」は2011年10月の東京オペラシティでの公演で、ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニーとの演奏を聴いていますが、そのときもホールを揺るがすような迫力と、緩急自在なスクロヴァチェフスキのコントロールにノックアウトされたものです。



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土曜日ゆえ開演時間は平日より1時間早く18:00。10月にしてはかなり気温がたかく汗ばむ陽気でしたが、陽が陰るのは確実に早くなっています。サントリーホールの前についたのは開場の17:30の5分前くらい。

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見上げるとインターコンチネンタルホテルなど、アークヒルズのビル群のネオンが夕闇に包まれ始めています。

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いつものからくり時計のようなパイプオルゴールを合図で開場。昨日は開場と同時にホールに入り、2階のドリンクコーナーへ。いつも通り適度に鑑賞神経を鋭敏にするためにワインを発注(笑) ホールのドリンクコーナーでいただくワイン、特に赤は冷え過ぎが多いんですが、流石はサントリー、赤も適温で供されてます。こうゆう気づかい、大事ですね。早めに入って開演を待つ時間、ゆっくりできるのは貴重です。

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今日の席はRAの2列目。サントリーホールは1階正面も座ったんですが、このRA、RBあたりが一番好きな席です。低音楽器は音の回り込みに問題ないので、ヴァイオリンを正面で眺められ、1階席よりもダイレクトに響きを楽しめるのと、1番は指揮者の指示がよく見えること。スクロヴァチェフスキの怒濤の煽りもよく見えます。



さて、定刻どおりオケが入場。1曲目はスクロヴァチェフスキの自作。ステージいっぱいの大編成オケ。ピアノやタムタムのような普段見ない打楽器群が配され、ちょっとワクワクします。スクロヴァ爺登場と同時に、もうホールは割れんばかりの拍手。やはり膝が悪いのか指揮台まではたどたどしく歩いてきますが、指揮台に登って観客の方に挨拶すると、終演後のように拍手がどよめきます。90歳にもなって日本に来て、しかも自作を振るこの千載一遇の機会に対する観客の期待の大きさがわかります。

「パッサカリア・イマジナリア」、神秘的な曲でした。コントラバスによって最初奏でられる、魂の吐露のような暗澹たるメロディーの変奏。大きな波のように時折オケが爆発しながら、所々打楽器群が変化を添え、決して豊穣になることなく淡々と進む曲。自作ゆえ、スクロヴァチェフスキも楽器ごとに的確に指示を出しながらの渾身の指揮でした。最後ピアニッシモで終わり、指揮棒を譜面台に置いた直後に嵐のような拍手。スクロヴァチェフスキも出来に満足したようで、活躍した打楽器陣やコントラバスから読響メンバーを讃えていました。読響メンバーは素晴らしい仕上がり。難しい現代曲ですが、フレーズのひとつひとつの表情づけも誠に丁寧で、尊敬するスクロヴァチェフスキの曲に対する読み込みの深さが感じられました。前半から素晴しい出来に、後半への期待が高まります。

しかし、後半は、期待したレベルを遥かに超える驚愕の演奏でした。

ホールに前半の興奮の余韻が残る中、休憩が終わって、ティンパニを除く打楽器が片付けられ、ステージはすっきり。ホルンは5人(プログラムには4人と記載)、トランペット、トロンボーン各3人という編成。スクロヴァチェフスキの登場で、またホールは嵐のような拍手。

後半の読響は素晴しい仕上がりでした。霧の中からホルンが響き渡る導入部の磨き込まれた響き。1楽章は落ち着いたテンポでブルックナーの大伽藍の構築感を見事に表現。特に強奏部の迫力、轟く金管の号砲、そして全奏者が髪を振り乱さんばかりに楽器を鳴らしきってスクロヴァチェフスキの指示どうり盛り上がっていくところはやはり見事。サントリーホール中の観客にエネルギーがつたわったことでしょう。最後の一音をさっと切れよく収め、静寂が戻ります。もう少し煽ってくるかと思いきや、1楽章は水も漏らさぬ堅固な構築感。
続く2楽章はヴィオラやチェロのメロディーの深い呼吸が際立ちます。ピチカートに乗って奏でられるメロディーラインがフレーズごとにきっちり表情をつけられ、スクロヴァチェフスキの真骨頂である唸るような弦の響きが印象的でした。テンポは徐々に動きを見せ、スクロヴァチェフスキの指示もテンポをすこし動かすようになってきました。
圧巻がつづくスケルツォ。はじまりは普通のテンポでしたが前半半ばを過ぎたあたりから強烈な煽りで、一気にテンポを上げ、突風が吹くがごとき。オケも必死についていきますが、そのまま金管の号砲を交えてホールを吹き飛ばさんがごときクレッシェンド。一転抑えた表情の中間部をはさみ、再び前半部の繰り返しでまたまた途中でギアチェンジ。まさに怒濤の迫力。スケルツォでここまで煽るとは思いませんでした。最後は轟音を一瞬でかき消し、静寂との対比を見事に表現。この迫力、どう転んでも家でCDでは味わえません。
フィナーレは神々しいという言葉がぴったり。1楽章の落ち着いたテンポは聴かれなくなり、すこし足早にな展開で、そこここにテンポの変化を折り込みながら進みます。ティンパニのクッキリとしたアクセントも効果的。何度も迎える緩急の変化、その度に轟く轟音、そして轟音のあとの静寂。一貫したテンポで揺るぎない迫力を聴かせる演奏も多いなか、スクロヴァチェフスキは全く逆に、自身のインスピレーションに従って、オケのアクセルを自在にコントロールして炸裂する大音響とその余韻を情感溢れる深い呼吸のメロディーでつないでいきます。ブルックナーの書いた音楽に潜む神々しさと敬虔さの真髄に触れる解釈。終盤の感動的なクライマックスに向けては、オケを実に巧みにコントロールしての演出。再びブルックナーの大伽藍が出現。最後の一音もさっと切り上げます。長い静寂ののちに、拍手をかき消すようなブラヴォーの嵐。これだけのブラヴォーは聴いた事がありません。

ホール中から降り注ぐまさに割れんばかりの拍手。もちろん最初にホルン奏者に立つように促し、金管をはじめとしてティンパニ、チェロ,ヴィオラなどの奏者をねぎらいます。スクロヴァチェフスキは拍手に誘われ何度もステージに呼び戻されますが、RA席からは舞台袖に引いた奥も見えてしまいます。2度目に戻った時に右ひざをなでて、付き人ににこりと微笑みます。膝が痛いのでしょうが、この拍手では出ない訳にいきません。何度もホール中の観客の拍手ににこやかに応じ、そして、自分ではなくオケを讃えるよう観客を促す姿がとても印象的でした。

人は90歳にもなって、これだけのエネルギーを発することができるのだと、あらためて感じ入った次第。出入りは疑ギクシャクしていたものの、指揮台に登ったあとは、年齢を全く感じさせない機敏かつエネルギッシュな動き。やはりスクロヴァチェフスキは凄かったです。ホールを後にする多くの人の興奮冷めやらぬ表情が印象的でした。また、来日の機会があれば是非聴きにいきたいですね。こころに触れる素晴しいコンサートでした。

今回のコンサートでよかったのは、いつもいただける読響の解説冊子。読響の10月のコンサートの曲目解説などを記した小冊子ですが、中の2つの記事が興味深い情報でした。1つはフレデリック・ハリスと言う人が書いた、「スクロヴァチェフスキ氏90歳のタクトに寄せて」という寄稿文。スクロヴァチェフスキ自身の言葉を含んだ冒頭の一節を紹介しておきましょう。

「指揮と言う行為は神秘的な作業だ」と、スクロヴァチェフスキ氏は語る。楽譜を完璧にに読み込むだけでは足りず、作曲家の精神まで探り当てて、読み解かねばならない、そのためには「とてつもなく堅固な信念を持って、瞬間瞬間を強力に解釈し、疑義のない状態にしなければならない」のだ。


この日の演奏を聴くと、スクロヴァチェフスキ自身の言葉の意味がよくわかります。

そしてもう一つは三男のニコラス・スクロヴァチェフスキが書いた「素顔の父・スクロヴァチェフスキ」。家族でとった普段の写真に写る気さくなスクロヴァチェフスキ。そして夕食はいつも18:00から、必ず一杯の赤ワインをともにするそうです、栄養学について詳しいらしく、自然素材の食事を好み、ポリフェノールの効果を信じて、毎日一杯の赤ワインを飲むそうです。それで90歳までこのエネルギッシュな仕事ができているというのは説得力があります。あやかりたいところですが、一杯で終わる勇気は当分もてそうにありません(笑)



さて、コンサートもはけたので、近くで食事です。先程一杯の赤ワインはいただいたのですが、上の文を読んで、もういちど一杯の赤ワインを飲みたくなりました。いつものように食べログで近くの高評価の店をさがすと、目の前にありました。

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食べログ:プレーツ アーク森ビル店

まさにサントリーホールの入口の目の前。カジュアルなイタリアンです。コンサートの反省会ということで嫁さんと入店。つくりはカジュアルでしたが、味はわるくありません。コンサート後に使えるお店ですね。紹介は簡単に。

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私は赤ワイン。嫁さんはスパークリングのロゼ。メニューからささっと適当に頼みましたが、どれもタイミングよく運ばれてきました。流石イタリアン。

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トリッパ!

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サルシッチャ!

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ピッツァ!

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パンチェッタのリングイネ!

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エスプレッソ!

カジュアルなわりに、意外と本格的な味。最後のパスタはイタリアの田舎で食べた味にちかく、パンチェッタの濃厚な油の旨味と塩味が染み込んだもの。コンサートの反省会にいいお店です。

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2 Comments

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だまてら

No title

ミスターS、素晴らしいですね!
小生は、4日(金)の午後を半休にして、池袋芸術劇場での15時からのマチネに行きました。ショパンの協奏曲第1番(ピアノはグレムザー)と「革命」でした。
ショパンは、ミスターSがRCAにルービンシュタインと録音してから50年以上経って実演で聴けたので感無量でした。

  • 2013/10/15 (Tue) 00:00
  • REPLY

Daisy

Re: No title

だまてらさん、おはようございます。
スクロヴァチェフスキ行かれたんですね。とても90歳とは思えないエネルギッシュな指揮ぶりはいつも驚きですね。来年も来て欲しいものです。

  • 2013/10/15 (Tue) 07:40
  • REPLY