作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ハリー・クリストファーズ/ヘンデル&ハイドン・ソサエティの朝、熊など(ハイドン)

0
0
今日は久々の新着アルバム。

HarryChristophers.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ハリー・クリストファーズ(Harry Christophers)指揮のヘンデル&ハイドン・ソサエティ(Handel and Haydn Society)の演奏で、ハイドンの交響曲6番「朝」、ヴァイオリン協奏曲(Hob.VIIa:4)、交響曲82番「熊」の3曲を収めたアルバム。ヴァイオリン協奏曲のソロはアイスリン・ノスキー(Aisslinn Nosky)。収録は2013年2月22日、24日、ボストンシンフォニーホールでのライヴ。レーベルはCOROというところ。

ハリー・クリストファーズのアルバムははじめて聴きます。

ハリー・クリストファーズは1953年、ロンドンの南東約50kmのところにあるグードハースト(Goudhurst)生まれの指揮者。ザ・シックスティーンという合唱と古楽器オケの創設者として知られている人。

Handel and Haydn Society

ヘンデル&ハイドン・ソサエティはなんと1815年設立のアメリカ最古のオーケストラ。2年後には創立200年を迎えます。ボストンを本拠地とする古楽器オケです。文字通りヘンデルやハイドンの時代の音楽を得意としてるのはもちろん、ヘンデルのメサイアのアメリカ初演(1818年)をはじめとして、ハイドンの天地創造(1819年)、ヴェルディのレクイエム(1878年)、バッハのマタイ受難曲(1879年)など有名曲のアメリカ初演をこなしてきた名門オケ。ハリー・クリストファーズは2008年からヘンデル&ハイドン・ソサエティの音楽監督となっています。それに先立ち、2006年9月にはアイゼンシュタットのエステルハージ宮殿でヘンデル&ハイドン・ソサエティとのコンサートを成功させているとのこと。日本ではハイドンの演奏が広く知られているわけではなさそうですが名門に間違いありませんね。

クリストファーズ体制になった新生ヘンデル&ハイドン・ソサエティの実力はいかばかりのものか、当ブログで取りあげない訳には参りません。

Hob.I:6 / Symphony No.6 "Le matin" 「朝」 [D] (1761?)
出だしの朝。通例朝、昼、晩と組み合わせて録音されることが多いので、このアルバムの組み合わせは珍しいですね。冒頭からまとまりの良い古楽器の響き。特にアクセントをしっかりつけて力強さをきっちり表現していきます。音量を絞って聴くと少し凡庸な演奏に聴こえなくはないのですが、ヴォリュームを上げててみると、なかなかの迫力。クレッシェンドに勢いがあり、なかなか痛快。ホルンのはじけっぷりを聴きたいところですが、なぜかホルンがすこし控えめの演奏。奏者一人一人のキレっぷりはほどほどですが、アンサンブルのコントロールで聴かせるという感じでしょうか。
アダージョはしなやかと言うより軽快さがポイントの演奏。古楽器本来の音色の魅力を活かしたものでヴァイオリンソロは次のヴァイオリン協奏曲でソロを務めるコンサートマスターのアイスリン・ノスキーでしょうか。渋めの音色で淡々と弾いていくタイプ。割と好きなタイプのソロです。適度なリアリティと適度な残響でボストンシンフォニーホールの響きを活かした録音。
続くメヌエットでもくすんだ古楽器ならでは音色を活かした素朴な演奏。自然な印象からまるでライヴを聴いているよう。セッション録音らしい磨かれた演奏ではなく、一発録りのような印象。コントラバスの唸りがかなりヴォリューム感で録られていて妙にリアル。
ちょっと雑に聴こえるような素朴なフィナーレ。すこし重さを感じるオケの反応。ここはすっきりキレてほしいところですが、妙に生々しい印象もあり、不思議な感触。ザラッとした感触は往時のブリュッヘンと18世紀オーケストラに近い印象もありますが、ブリュッヘンのようなガッチリとした迫力ではなく、音楽の流れが多少たどたどしいく武骨な感じがします。それはそれで独特な印象。不思議な存在感を感じる演奏です。

Hob.VIIa:4 / Violin Concerto [G] (c.1765/70)
この曲、少し前に取りあげた、マルク・デストリュベの素晴しい演奏がまだ耳に残っていますが、その演奏に非常に響きが近いですね。前曲で感じた素朴な古楽器オケの響きのよさをそのままの響きから入り、ソロのアイスリン・ノスキーの少し線の細いヴァイオリンが華麗に応じます。デストリュベのキレキレの演奏とは少し差があるものの、なかなか良い線行ってます。この曲のオーソドックスな秀演と聴きました。線の細さを逆に活かして、すっきりとしたカデンツァは悪くありません。
アダージョに入るとノスキーのヴァイオリンが活き活きとしてきます。一段ギアが上がった感じで、音楽にも生気が漲ってきました。この曲のしなやかさがよく表現できています。
フィナーレは前曲とは異なり、しっかりキレて来ます。キレる所でキレるのは大事です(笑)

Hob.I:82 / Symphony No.82 "L'Ours" 「熊」 [C] (1786)
そして、期待の熊。残響の印象がちょっと変わります。冒頭から鬼のような迫力。力入ってます! なりふり構わずはじけるような演奏。まるでライヴのよう。アンサンブルの精度はほどほどながら、やはり音楽は迫力だと言わんばかりの力の入り方。この演奏を生で聴いたら、迫力にのまれそう。熊の1楽章は構築感やメロディーの美しさの表現で聴かせる演奏も多いなか、ここまで力感で押してくるとは思いませんでした。
ここでアレグレットをすこし引いてくると思いきや、音量はともかくテンションが下がりきりません。フレーズ事の変化も大きくなく、せっかく1楽章でびしっと迫力を印象づけたのに、入りからちょっと単調な印象を残してしまいます。この辺にもうすこし対比がつくと深みが出そうです。この楽章も中間部の迫力はかなりのもの。終盤意外にもテンポを結構動かしてきます。
楽章毎に印象が少し変わり、メヌエットはなかなか。力感も適度な範囲で、ブリュッヘンのようなおどろおどろしい迫力を感じさせます。音楽がコントロールされています。フィナーレにもいい流れが続いて、音楽が弾み、ハイドンの書いたフィナーレのメロディーの絡み合いとダイナミクスが実にうまく表現されていきます。終盤の畳み掛けるような迫力も見事。1楽章冒頭同様の鬼のような迫力が戻ってきました。最後はものすごい迫力でフィニッシュします。

ボストンの名門、ヘンデル&ハイドン・ソサエティのハイドン名曲集。アンサンブルの精度はほどほどなものの、ハイドンに対するリスペクトがエネルギーとして結集したような演奏でした。朝とヴァイオリン協奏曲は古楽器の素朴なまとまりのよい演奏。熊は弩迫力の演奏でした。ちょっと先入観が強かったのか、熊の2楽章に違和感を感じてしまいましたが、この曲の演奏としてはかなり迫力重視。もしこのアルバムがライヴであったら、即興性も加わり、違った印象になったかもしれませんね。演奏者の視点で聴くと興味深い演奏かもしれません。評価は3曲とも[++++]としておきましょう。

ハリー・クリストファーズ指揮のヘンデル&ハイドン・ソサエティにはもう一枚ハイドンの交響曲85番「王妃」を入れたアルバムがあり、こちらも注文中。もう一枚くらい聴いてみないと、彼らの音楽をつかみきれない感じです。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.