作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

中山節子/井上直幸の歌曲集(ハイドン)

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実に久しぶりの歌曲集。思い立って連休中に歌曲のアルバムをいろいろ聴き返していたところ、所有盤リストに登録し漏らしていたアルバムを発見。そのアルバムが今日取り上げるもの。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

中山節子(Setsuko Nakayama)のソプラノ、井上直幸(Naoyuki Inoue)のピアノによる歌曲集。ハイドンの歌曲が3曲、シューマンの「女の愛と生涯」、同じくシューマンの歌曲5曲を収めたアルバム。収録は1982年9月16日、東京のルーテル市ヶ谷センターでのライヴ。レーベルはLIVE NOTES。

中山節子さんは桐朋音楽大学出身のソプラノ歌手。このアルバムで組んでいる井上直幸さんの奥さんだったそうです。井上直幸さんは以前アルバムを取りあげていますが、2003年に亡くなっていることは以前も触れた通りです。

2010/08/14 : ハイドン–ピアノソナタ : 豊穣、井上直幸のピアノソナタ

今日取り上げるアルバムは、ハイドンの英語によるカンツォネッタ集から3曲が冒頭に置かれていますが、なぜかドイツ語で歌われ、曲名もドイツ訳だったため、かなり前に手に入れていたにもかかわらず、曲を特定できずに登録しあぐねていたものと思われます。
先週末の台風来襲時に思い立って歌曲のアルバムをいろいろ整理していたところ、このアルバムが突然気になり出して、聴き直してみた次第。

井上直幸さんのピアノは詩情溢れるものとは知っていましたが、ソプラノの中山節子さんの歌唱も筋がすっと通ったなかなか堂々としたもの。情感たっぷりに弾かれるピアノにのって、張りのあるソプラノが良く通ります。

今一度中山節子さんのことを調べてみると、1965年にシュツットガルト国立音楽大学に留学し、1967年にはシューマンコンクールに入賞。その後西ドイツ各地で演奏活動を行い、1975年に帰国しました。やはりドイツ歌曲を得意としていたようで、ドイツ歌曲を中心にコンサート活動をしていたようです。ドイツでの評判は上々だったようで、それゆえ、ハイドンの英語曲をドイツ語で歌っているということなのでしょう。

Hob.XXVIa:36 / 6 Original Canzonettas 2 No.6 "Content"(Transport of Pleasure) 「満ち足りた心」 [A] (1795)
調べてみるとルーテル市ヶ谷センターは客席200席の小ホール。録音はかなり奥にピアノとソプラノが定位する、残響をかなり含みますが比較的鮮明なもの。ピアノは一音一音を慈しむようにじっくり入り、優雅でかつ、芯のしっかりした響きが特徴。なんとなく只ならぬ迫力を帯びたもの。しっかりと音階を刻みながらも儚さを感じさせる、奥深い音楽。中山節子さんはヴィブラートをしっかりかけて、日本人らしい、頭に抜けていくソプラノ。ピアノの余裕ある伴奏にのびのびと歌っているのが印象的。英語のカンツォネッタ集のなかでも比較的おとなしく、典雅な曲想の曲をトップにもってくるあたり、なかなかのセンスですね。

Hob.XXVIa:30 / 6 Original Canzonettas 1 No.6 "Fidelity" 「誠実」 [f] (1794)
つづいて疾走するような曲想の曲。ピアノとソプラノの掛け合いがスリリング。ピアノの表情はかなりの変化。ピアノに負けず、ソプラノの存在感もかなりのもの。

Hob.XXVIa:34 / 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 [A sharp] (1795)
そして聴き所はこの曲。姿見の前で、自身の姿を見ながら悲しみに耐えていたという歌詞の曲。フォルテピアノと透明感ある古楽風の爽やかなソプラノの組み合わせで聴くこの曲とはイメージがだいぶ異なり、ダイナミックに叙情的に曲を歌い上げています。かなり間をとって情感を嫌という程乗せていきます。実にしっとりとした曲に聴こえます。

短い曲3曲ですが、インパクトは十分。キラ星のように転がるピアノ美音に合わせて、かなりの存在感を感じさせる中山節子さんのソプラノ。他の歌手の歌唱とは一線を画す、魂の乗った歌唱。そういえば、ハイドンのカンツォネッタ集には「精霊(魂)の歌」という曲がありますが、演奏はまさにその言葉の通りのもの。アルバムの帯にも「魂の歌」とキャッチコピーがつけられていますが、「精霊(魂)の歌」自体が収められている訳ではありません。中山節子さんのソプラノを収めたアルバムは他にあまり目につくものはなく、このアルバムが代表盤なのでしょうか。個人的にはここに収められたライヴは、テクニックや出来というものとは別の、何か心に触れる大切な音楽を聴いたような気になる演奏だという印象です。評価は3曲とも[++++]としておきます。

なぜか、音量を少し落として、ハイドンとシューマンをのんびり楽しみます。東京は台風一過で爽やかな気候。そろそろ芸術の秋ですね。

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